アジア

マレーシアの定番ホッケンミーのレシピ

豚の脂で炒めた太い黄色い麺を黒醤油でどす黒く染め上げ、豚肉・えびとともに仕上げるクアラルンプール発祥の麺料理。本格レシピです。

マレーシアの定番ホッケンミーのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
30 調理時間
2人前 分量
約580kcal カロリー

材料

  • 太い黄色い生麺(ホッケンミー用・またはちゃんぽん麺) 300g
  • 豚バラ肉(薄切り) 150g
  • えび(殻付き) 8尾
  • 豚背脂 100g(ラード・ラードかす用)
  • ラード(市販品でも可) 大さじ2(炒め用)
  • にんにく 4片
  • 黒醤油(プトヒタム・なければ濃口醤油大さじ2+黒蜜小さじ2) 大さじ2.5
  • 生醤油(ライトソイソース・なければ薄口醤油) 大さじ1(炒め用)+小さじ1(下味用)
  • 白こしょう 大さじ1/2(仕上げ用)+少々(下味用)
  • 片栗粉 小さじ1(下味用)
  • 水 300ml(えびスープ用)
  • もやし ひとつかみ
  • ニラ 4〜5本
  • サラダ油 大さじ1(えびスープ用)
  • 青唐辛子 適量
  • ライム 1個
  • ナンプラー(チリソース用)・大さじ2

ホッケンミー(Hokkien Mee)はマレーシアの福建系中国人が生み出した炒め麺料理で、太い黄色い卵麺を豚ラードと黒醤油で強火で一気に炒め上げ、豚肉・えび・もやし・ニラを合わせるクアラルンプールを代表するストリートフードです。「ホッケン」は中国の福建省、「ミー」は麺を意味します。同じ「ホッケンミー」という名前でもペナンスタイルはえびと豚骨の白濁スープで煮込む汁麺であるのに対し、クアラルンプールスタイルは黒醤油で炒める乾式の焦がし麺で、同じ名前を持ちながら全く異なる二つの料理が存在するという東南アジアの食文化の面白さを体現しています。クアラルンプールのホッケンミーの最大の特徴は惜しみなく使うラードと黒醤油の焦がし香で、鉄鍋が高温になった瞬間に黒醤油を加えたときに立ち上がる香ばしい煙と香りがこの料理の魂です。揚げたラードの固形物(ラードかす)をトッピングとして散らすことで豚の脂の旨みが二重に重なり、他では再現できない濃厚な香ばしさが生まれます。屋台の職人が大きな鉄鍋を炎で煽りながら仕上げるホッケンミーは、マレーシアのホーカーセンターで最も行列ができる料理のひとつです。

ホッケンミーの作り方

◎ラードとラードかすを作る
豚背脂100gを1cm角に切り、フライパンに入れて弱火から中火でゆっくり熱する。脂が溶け出して固形物がきつね色になったら取り出してラードかすとして取り置く。溶け出した透明な脂がラード。(ラードとラードかすはホッケンミーの香りの核心。市販のラードを使えばラード作りの工程は省略できるが、ラードかすは自分で作る必要がある。ラードかすはカリカリとした食感と豚の凝縮した旨みを持ち、ホッケンミーのトッピングとして欠かせない存在。揚げすぎると苦くなるのでこんがりきつね色になった瞬間に取り出すこと)

◎えびの殻でスープを取る
えび8尾の殻と背わたを除き、殻を取り置く。フライパンにサラダ油大さじ1を熱して殻を中火で2〜3分炒め、香ばしい香りが立ったら水300mlを加えてひと煮立ちさせる。漉してえびスープとして取り置く。(えびの殻スープがホッケンミーの隠れた旨みの土台。麺を炒めるときに加えることで海老の香りがしっかりと麺に移る。省いて水で代用することもできるが、加えると仕上がりの深みが格段に増す)

◎豚肉を下準備する
豚バラ肉薄切り150gを食べやすい大きさに切り、生醤油(ライトソイソース)小さじ1・白こしょう少々・片栗粉小さじ1を揉み込んで10分おく。(片栗粉をまぶすことで豚肉の表面がコーティングされ、強火で炒めたときに肉汁が閉じ込められてしっとりとした食感が保たれる。白こしょうはホッケンミー全体の辛みの骨格になるので多めに使ってよい)

◎麺を準備する
太い黄色い生麺(ホッケンミー用・またはちゃんぽん麺・生ラーメン麺)300gを袋から出し、ほぐしておく。(ホッケンミー用の太い黄色い麺はアジア食材店で入手できる。ちゃんぽん麺は太さと食感がよく似ており最も近い代用品。麺は炒める直前に準備して一気に仕上げることが重要)

◎にんにくを炒める
ウォックまたは鉄製フライパンにラード大さじ2を強火で熱し、みじん切りにしたにんにく4片を加えて30秒〜1分、黄金色になるまで炒める。(にんにくはホッケンミーの香りの第一層。ラードで炒めることでサラダ油では出せない豊かな香りが生まれる。焦げやすいので目を離さず手早く炒める)

◎豚肉とえびを炒める
下味をつけた豚バラ肉を加えて強火で1〜2分炒め、色が変わったらえびを加えてさらに1分炒める。えびの色が変わったら一度取り出す。(豚肉とえびは最初に取り出しておくことで過熱を防ぎ、最後に戻したときに適切な火通りを保つ。強火を維持して一気に炒めることが焦がし香の条件)

◎麺を加えて黒醤油で炒める
ウォックをさらに強火で熱し、ほぐした麺を加えて広げる。黒醤油(プトヒタム)大さじ2.5・生醤油大さじ1を麺の上から回しかけ、麺をウォックの底に押しつけながら30〜40秒焦がし、次にかき混ぜるという動作を繰り返して全体を炒め合わせる。(黒醤油が高温の鉄鍋に触れた瞬間に立ち上がる焦がし香がホッケンミーの魂。この「鑊気(ウォックヘイ)」と呼ばれる炎と鉄鍋が作り出す香ばしさは家庭の火力では出しにくいが、鉄鍋をできるだけ高温に熱することで近づけることができる。麺を押しつけて焦がすことで麺の表面に香ばしい焼き色がつく)

◎えびスープを加えて蒸し煮にする
えびスープ150〜200mlを加えて蓋をし、中火で2〜3分蒸し煮にする。(スープを加えることで麺がスープの旨みを吸い込みながらしっとりと仕上がる。水分が多すぎると麺がべちゃべちゃになるので少量ずつ様子を見ながら加えること。蓋をすることで蒸気が回り麺の芯まで火が通る)

◎具材を戻して仕上げる
取り出しておいた豚肉とえびを戻し、もやしひとつかみ・ニラ4〜5本(5cm長さに切る)を加えて強火で一気に炒め合わせる。白こしょう大さじ1/2をたっぷりふりかけてひと混ぜし、火を止める。(もやしとニラは食感と色を残すために最後に加えて短時間で仕上げる。白こしょうはホッケンミーにとって辛みのアクセントではなく風味の核心であり、日本人の感覚よりも多めに使うことが本場の味に近づくコツ)

◎盛り付け

マレーシアの定番ホッケンミーの完成品 盛り付け画像
器に盛り、ラードかすをたっぷり散らし、青唐辛子の薄切りをのせて完成。ライムのくし切りと輪切り青唐辛子をナンプラーに漬けた「チリソース」を添えて一緒に食べる。

料理の歴史と背景

ホッケンミーの起源は19世紀から20世紀初頭にかけてマレー半島に渡ってきた福建省出身の中国人移民が持ち込んだ炒め麺文化に求められます。福建省は中国でも特に麺料理が豊かな地域として知られており、移民たちは故郷の麺料理の技法をマレー半島の食材・調味料と組み合わせながら独自のスタイルに発展させていきました。クアラルンプールスタイルのホッケンミーが黒醤油で炒める乾式スタイルに定着した背景には、黒醤油が当時の福建系コミュニティで広く使われていたことと、ラードという中国料理の伝統的な油脂が使われ続けたことがあります。一方でペナンスタイルが汁麺に発展したのはペナン島という港湾都市の豊富な海産物文化との融合の結果とされており、同じ福建系の起源を持ちながら二つの都市の食文化の違いが二種類のホッケンミーを生み出したという歴史は、食文化の地域的多様性を示す好例として語られています。クアラルンプールのAMCorp Mallやプドゥ市場周辺にある老舗のホッケンミー屋台は数十年以上の歴史を持ち、代々の職人が同じ鉄鍋と同じ炎で同じ味を守り続けています。

現代のマレーシアにおいてホッケンミーはクアラルンプールを代表するホーカーフードとして国内外から高い評価を受けています。夜市(パサールマラム)やホーカーセンターでは深夜まで行列が絶えないホッケンミーの屋台が各地に存在し、熟練の職人が大きな鉄鍋を炎で煽りながら仕上げる豪快な調理風景は見るだけで食欲をかき立てます。マレーシア政府の食文化普及政策においてホッケンミーはペナンのアッサムラクサやチャークイティオと並んでマレーシア料理を世界に発信する代表的なメニューのひとつとして位置づけられており、クアラルンプールを訪れる旅行者が必ず食べるべき料理のリストに常に上位で登場します。近年は日本でもマレーシア料理専門店やアジア料理屋台イベントでホッケンミーの提供が増えており、黒醤油の焦がし香とラードの豊かな旨みが溶け合う一皿は焼きそば文化に親しんだ日本人の口にも直感的に合うとして高い評価を受けています。ラードを惜しまず使いウォックの高温で一気に仕上めるというシンプルながら妥協のない調理哲学が、ホッケンミーを屋台料理の傑作たらしめています。

関連タグ

このレシピは役に立ちましたか?サイトの継続運営への応援をお待ちしています。