クウェートの定番マチブースのレシピ
ルーミ(乾燥ライム)とバハラットスパイスが香る、クウェートを代表する炊き込みご飯。鶏肉または羊肉をスパイスで煮込み、その煮汁でご飯を炊き上げるマチブースの本格レシピを歴史とともに紹介します。
材料
- 鶏もも肉(骨付き) 4枚
- バスマティライス 2カップ
- 玉ねぎ 2個
- トマト 2個
- ニンニク 4片
- 生姜 20g
- 乾燥ライム(ルーミ) 2個
- クミンパウダー 小さじ1
- コリアンダーパウダー 小さじ1
- シナモン 小さじ1/2
- カルダモン 小さじ1/2
- 黒胡椒 小さじ1/2
- ナツメグ 少々
- クローブ 2粒
- ターメリック 小さじ1/2
- バターまたはギー 大さじ4
- 塩 適量
- 熱湯 3カップ
- レーズン・松の実(仕上げ用) 各大さじ2
- パクチー(仕上げ用) 適量
マチブース(Machboos / مجبوس)はクウェートを代表する炊き込みご飯で、湾岸アラブ諸国全体に広がる「カブサ」の系譜に属しながらも、乾燥ライム(ルーミ)とバハラットスパイスの独特の組み合わせでクウェート独自の個性を持つ料理だ。鶏肉または羊肉をスパイスたっぷりのスープで煮込み、その煮汁をそのままご飯に吸わせて炊き上げる。肉の旨みとスパイスの香りが一粒一粒に染み込んだご飯は、シンプルな見た目からは想像できないほど複雑で奥行きのある味わいを持つ。金曜日の家族の集まりや祝い事の席に必ず登場するクウェートのソウルフードを、自宅で再現してほしい。
マチブースの作り方
◎スパイスと肉の下準備をする
バスマティライス2カップを洗って30分水に浸けておく。鶏もも肉4枚(骨付き)に塩小さじ1・ターメリック小さじ1/2をすり込んで10分おく。バハラットスパイスミックス(クミン小さじ1・コリアンダー小さじ1・シナモン小さじ1/2・カルダモン小さじ1/2・黒胡椒小さじ1/2・ナツメグ少々・クローブ2粒をあらかじめ混ぜておく)と乾燥ライム(ルーミ)2個を用意する。(ルーミはペルシャ湾岸料理を象徴するスパイスで、爽やかな酸みとスモーキーな風味を同時に持つ。入手できない場合はライムの皮1個分+ライム果汁大さじ1で代用できるが、ルーミ独特のくぐもった酸みは再現しきれない。アジア系食材店またはオンラインで入手可能)
◎玉ねぎとスパイスを炒めて肉を焼く
厚手の鍋にバターまたはギー大さじ3を熱し、薄切りにした玉ねぎ2個を中火で15〜20分、濃い飴色になるまでじっくり炒める。ニンニク4片(みじん切り)・生姜20g(すりおろし)を加えてさらに2分炒め、トマト2個(みじん切り)・バハラットスパイスミックス全量・乾燥ライム2個(フォークで数か所穴を開けておく)を加えて5分炒め煮にする。鶏肉を加えて全面に焼き色がつくまで5〜6分炒める。(玉ねぎを十分に飴色にすることがマチブースの甘みと深みの源泉。焦がさずに時間をかけることが最重要工程)
◎肉をスープで煮込む
熱湯3カップを加えて沸騰させ、蓋をして弱火で25〜30分、鶏肉が柔らかくなるまで煮込む。塩で味を調える。煮上がったら鶏肉だけを取り出して別皿に置いておく。鍋に残ったスパイス入りの煮汁が2カップ程度になっているか確認し、足りなければ熱湯を足す。(この煮汁がご飯に吸われることでマチブースの独特の風味が生まれる。乾燥ライムはここで取り出す)
◎ご飯を炊き上げる
水を切ったバスマティライスを煮汁の鍋に加えて混ぜ、中火で沸騰させる。沸騰したら弱火にして蓋をし、15〜18分炊く。ご飯の表面に穴が開いて水分が飛んだら火を止め、そのまま10分蒸らす。(蒸らし中に蓋を開けないこと。パラパラのバスマティに仕上げるためには最後の蒸らしが欠かせない)
◎仕上げて盛り付ける

盛り付けたマチブース
フライパンにバター大さじ1を熱し、取り出していた鶏肉を皮目を下にして中火で3〜4分焼き、表面をカリッと仕上げる。大皿にご飯を盛り、上に鶏肉をのせる。素揚げしたレーズンと松の実を散らし、パクチーを添えれば完成だ。付け合わせにダッカウス(トマトとニンニクの辛みソース)を添えるのがクウェートの正式スタイル。
料理の歴史と背景
マチブースの起源はアラビア半島の遊牧民・ベドウィンの食文化にあるとされ、羊肉とご飯を一緒に調理するという発想は古くからペルシャ湾岸一帯に共有されてきた。「マチブース」という名称はアラビア語で「押しつけた・詰め込んだ」を意味する言葉に由来し、肉とご飯を同じ鍋に重ねて炊き込む調理法を表現している。乾燥ライム(ルーミ)はペルシャ湾の漁師や商人がオマーンからクウェートに持ち込んだ食材とされ、インド洋交易の歴史がそのままスパイスの構成に反映されている。クウェート・バーレーン・カタールなど湾岸各国に同系統の料理が存在し、サウジアラビアの「カブサ」やバーレーンの「マチュブース」と名称・構成ともに近いが、スパイスの配合と乾燥ライムの使い方にそれぞれの国の個性が現れる。
石油発見以前のクウェートは真珠採取と交易を生業とする海洋都市国家であり、インド・ペルシャ・東アフリカとの交易ルートがそのまま食文化に刻まれている。バスマティライスはインドから、乾燥ライムはオマーンから、スパイスはザンジバルから——マチブースの一皿はクウェートが交差点であった時代の記憶を食べることでもある。現在もクウェートでは金曜礼拝後の家族の昼食にマチブースが食卓に上ることが多く、モスクの礼拝が終わる正午前後に各家庭のキッチンでスパイスの香りが広がる光景は、現代のクウェートでも変わらない週末の風景として続いている。
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