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エジプトの定番モロヘイヤスープのレシピ

モロヘイヤの葉を刻んで鶏ガラスープで煮溶かしコリアンダーとニンニクの炒め香りを加えるエジプトを代表するスープ。とろとろの食感と大地の旨みを再現する本格レシピを、歴史とともに紹介します。

エジプトの定番モロヘイヤスープのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
45 調理時間
4人前 分量
約180kcal カロリー

材料

  • モロヘイヤ(生または冷凍) 200g
  • 鶏もも肉または鶏手羽元 500g
  • 玉ねぎ 1/2個
  • 月桂樹の葉 2枚
  • シナモンスティック 1本
  • カルダモン 3粒
  • ニンニク 4片
  • ギー(なければバターまたはサラダ油) 大さじ2
  • コリアンダーシード(すり潰す) 小さじ2
  • カイエンペッパー 小さじ1/4
  • 塩 小さじ1と適量
  • 黒こしょう 適量
  • 水 1.5L
  • ピタパンまたはご飯 適量
  • レモン・酢漬け玉ねぎ 各適量

モロヘイヤスープ(ملوخية)はアラビア語で「王の野菜」を意味するモロヘイヤの葉を主役としたエジプトを代表するスープ料理で、新鮮なモロヘイヤの葉を包丁で細かくみじん切りにするか半乾燥状態で揉み砕き、鶏ガラまたは鶏肉を煮出した旨み豊かなスープに加えてとろとろに溶け込ませ、仕上げにニンニク・コリアンダーシード・唐辛子をギー(澄ましバター)またはサラダ油で炒めた「タクリーヤ」と呼ばれる香りのある炒め油を熱々のままスープに注ぎ込むことでモロヘイヤの独特の青臭さがニンニクの香ばしさとコリアンダーの温かみのある香りに包まれた唯一無二の滋味深い味わいに仕上がるナイル川流域に数千年の歴史を持つ人類最古の料理のひとつです。モロヘイヤスープの最大の個性はモロヘイヤの葉に含まれる粘性物質が熱を加えることで溶け出しスープ全体をとろりとした食感に変えるという植物の特性が料理の核心を担うことにあり、オクラやなめこに似た独特の粘りとスープの旨みが一体となった口当たりのなめらかさはモロヘイヤ以外では再現不可能なエジプト料理固有の食体験として世界中の旅行者の記憶に深く刻まれています。モロヘイヤスープの決め手はモロヘイヤの葉を細かく刻むほど粘りとなめらかさが増してスープとの一体感が生まれるという刻みの丁寧さと、タクリーヤのニンニクを焦がしすぎずに黄金色に炒めてからスープに注ぎ込む瞬間に立ち上がる香りがスープ全体に瞬時に広がることで生まれる香りのインパクトであり、この二つが揃って初めて本場カイロやルクソールの家庭でお母さんが毎日のように作るスープの温かさに近づきます。エジプトではモロヘイヤスープは白いご飯・アイシュ(エジプトのパン)・鶏肉または兎肉の煮込みとともに食べるのが定番であり、ラマダンの断食明けの食事・祝祭日の家族の集まり・日常の昼食や夕食まであらゆる場面に登場するエジプト人にとって最もソウルフードに近い料理として何千年にもわたって愛され続けています。

モロヘイヤスープの作り方

◎鶏スープを作る
鶏もも肉または鶏手羽元500gを水1.5Lとともに鍋に入れ、強火で沸騰させてアクを丁寧に取り除く。玉ねぎ1/2個・月桂樹の葉2枚・シナモンスティック1本・カルダモン3粒・塩小さじ1を加えて弱火で30〜35分、鶏肉に完全に火が通るまで煮込む。鶏肉を取り出してスープを漉す。(鶏肉はスープを取り出した後にほぐして別途添えることができる。スープは透明感が出るまでアクを丁寧に取ることで美しい緑色のモロヘイヤスープに仕上がる。カルダモンとシナモンはエジプトのスープに特徴的な温かみのある香りをもたらす)

◎モロヘイヤを準備する
生モロヘイヤ200g(なければ冷凍品を解凍したもの)の茎を取り除いて葉だけにする。まな板の上で包丁を細かく動かしながらできる限り細かいみじん切りにする。(モロヘイヤを細かく刻むほど粘りが増してスープとのなめらかな一体感が生まれる。日本では生モロヘイヤはアジア系食材店や一部のスーパーで入手できる。冷凍品の場合は解凍後にしっかりと水気を絞ってから使うこと。乾燥モロヘイヤを使う場合は水で戻してから同様に使える)

◎スープを仕上げる
漉した鶏スープを再び沸騰させ、細かく刻んだモロヘイヤを加える。弱火で3〜5分、モロヘイヤがスープに溶け込んでとろとろになるまで混ぜながら煮る。塩・黒こしょうで味を調える。(モロヘイヤを加えた後は煮すぎると粘りが失われるため3〜5分を厳守すること。加熱しながらよく混ぜることでモロヘイヤの粘りが均一にスープ全体に広がる。仕上がりはオクラのスープに似たとろりとした食感が理想)

◎タクリーヤを作ってスープに加える
ニンニク4片を細かいみじん切りにする。小鍋にギー(なければバターまたはサラダ油)大さじ2を熱し、ニンニクを中火でじっくりと黄金色になるまで炒める。コリアンダーシード小さじ2(すり潰したもの)・カイエンペッパー小さじ1/4を加えて30秒炒める。この熱々のタクリーヤをモロヘイヤスープに一気に注ぎ込んで素早くかき混ぜる。(タクリーヤはモロヘイヤスープの命であり省略できない仕上げ工程。ニンニクを焦がしすぎると苦みが出るため黄金色でとめること。タクリーヤを注ぎ込む瞬間にジュッという音とともに香りが立ち上がる。この香りの爆発がモロヘイヤスープを完成させる瞬間)

◎盛り付ける

エジプトの定番モロヘイヤスープの完成品 盛り付け画像

深めの器にモロヘイヤスープをたっぷりと盛る。取り出した鶏肉をほぐして添え、アイシュ(エジプトパン・なければピタパン)またはご飯を添えて完成。好みでレモンを搾りかけると爽やかさが増す。酢漬けの玉ねぎを添えるのもエジプトの定番スタイル。

料理の歴史と背景

モロヘイヤはナイル川流域の熱帯・亜熱帯地域に自生するシナノキ科の植物であり、古代エジプトのファラオの時代から食用植物として栽培・利用されてきた記録が残っています。「王の野菜」という名称の由来については諸説ありますが、ファラオの食卓に供される高貴な食材として珍重されていたという説と、アラビア語の「マルキーヤ(王族の)」に由来するという説が並立しています。モロヘイヤをスープにして食べる習慣はエジプトで少なくとも3000年以上の歴史を持つとされており、カイロのエジプト考古学博物館にはモロヘイヤに関する古代の記述が保存されています。イスラム時代に入るとモロヘイヤスープはエジプト全域に普及し、ファーティマ朝カリフの時代(969〜1171年)にはカイロの宮廷でも日常的に食べられていた記録があります。タクリーヤというニンニクとコリアンダーの炒め香りをスープに加える技法はエジプト料理の特徴的な仕上げ方法として確立されており、この技法がモロヘイヤスープを単純な野菜スープから複雑な旨みを持つエジプト固有の料理として完成させた歴史的な革新と考えられています。

現代のエジプトにおいてモロヘイヤスープはカイロ・アレクサンドリア・ルクソール・アスワンなど全国の家庭・レストラン・食堂で日常的に食べることができ、エジプト人にとって最もソウルフードに近い料理のひとつとして老若男女に愛されています。毎年夏のモロヘイヤの収穫シーズンには市場に山積みになった新鮮なモロヘイヤを大量に買い求めて冷凍保存し一年中食べる習慣が家庭に根付いており、モロヘイヤを刻む包丁の音はエジプトの家庭の台所の日常的な音として国民の共通の記憶に刻まれています。エジプトのモロヘイヤスープはレバノン・シリア・チュニジアなど他のアラブ諸国にも広まっており、それぞれの国で異なるスタイルに発展していますが発祥地としてのエジプトの地位は揺るぎないものとして認識されています。日本ではモロヘイヤが健康野菜として普及したことでスーパーで入手しやすくなっており、モロヘイヤスープへの関心も高まっています。とろとろのなめらかな食感とニンニクとコリアンダーの温かみのある香りが溶け合った滋味深い味わいは、なめこ汁や長芋料理など粘り食材のスープ文化に親しんだ日本人の味覚にも自然に馴染む料理として評価が高まっています。

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