カンボジアの定番ノムパンのレシピ
フランス植民地時代の遺産バゲットにカンボジア独自の具材を詰めるプノンペン発祥のサンドイッチ。ピカタソースが決め手の本格レシピです。
材料
- バゲット 2本(約20cm)
- 豚バラ肉(薄切り) 200g
- 卵 2個
- にんじん 1/2本(ピクルス用)
- 大根 100g(ピクルス用)
- 酢 大さじ3(ピクルス用)
- 砂糖 大さじ2(ピクルス用)+少々(プラホックペースト用)
- 水 大さじ2(ピクルス用)
- 塩 小さじ1(ピクルス用)+少々
- プラホック(発酵魚ペースト) 小さじ1
- マヨネーズ 大さじ3
- ライム 1個
- ナンプラー 大さじ1(漬けだれ用)
- パームシュガー(なければきび砂糖) 大さじ1.5(漬けだれ用)
- にんにく 1片(漬けだれ用)
- 生姜 小さじ1(漬けだれ用)
- オイスターソース 大さじ1
- 白こしょう 少々
- サラダ油 少々
- レタス 2枚
- きゅうり 1/3本
- トマト 1個
- パクチー たっぷり・適量
- 青唐辛子 好みで・適量
- スイートチリソース 好みで・適量
ノムパン(នំបុ័ង)は「パン」を意味するカンボジアのバゲットサンドイッチで、フランス植民地時代にもたらされたバゲット文化がカンボジアの食材・調味料と融合して生まれたプノンペンのストリートフードです。ベトナムのバインミーと同じフランス植民地文化の遺産を共有しながら、ノムパンはプラホックを使ったペースト・カンボジア独自のピクルス・甘辛く焼いた豚肉というクメール独自の具材によって全く異なる個性を放ちます。プノンペンの路上では早朝から屋台のガラスケースに並んだバゲットに様々な具材を詰めるノムパン売りの姿が見られ、バイクで通りすがりにひとつ買って食べるのがプノンペン市民の朝の風景のひとつです。サクサクのバゲット・しっとりした豚肉・爽やかなピクルス・香り豊かなパクチーが一口に収まる重層的な美味しさは、カンボジア料理の多様性と創造性を最もダイレクトに体験できる一品です。具材の組み合わせは店や家庭によって異なり、卵焼き・鶏肉・魚のすり身揚げなど無限のバリエーションが存在します。
ノムパンの作り方
◎ピクルスを作る
にんじん1/2本と大根100gをせん切りにし、塩小さじ1をまぶして10分おく。しんなりしたら水気をよく絞り、酢大さじ3・砂糖大さじ2・水大さじ2・塩少々を合わせたピクルス液に浸けて最低30分おく。(ピクルスはノムパンの爽やかな酸味のアクセントとして欠かせない。前日に仕込んでおくと味がより馴染む。きゅうりをせん切りにして加えるバリエーションもある)
◎豚肉を漬け込む
豚バラ肉薄切り200gにナンプラー大さじ1・ヤシ砂糖(なければきび砂糖)大さじ1.5・すりおろしにんにく1片・すりおろし生姜小さじ1・オイスターソース大さじ1・白こしょう少々を合わせてよく揉み込み、冷蔵庫で最低30分漬け込む。(ヤシ砂糖を使うことでカンボジアらしい深みのある甘みが豚肉に入り込む。漬け込み時間が長いほど味が浸透して焼いたときに香ばしく仕上がる)
◎プラホックペーストを作る
プラホック(発酵魚ペースト)小さじ1・マヨネーズ大さじ3・ライム果汁小さじ1・砂糖少々をよく混ぜ合わせる。(プラホックマヨネーズはノムパンをカンボジア独自のサンドイッチに仕上げる隠れた主役。プラホックの発酵の旨みとマヨネーズのコクが溶け合い、バゲットに塗るだけで奥深い風味が生まれる。プラホックが苦手な場合はナンプラー小さじ1/2で代用できる)
◎豚肉を焼く
グリルまたはフライパンを強火で熱し、漬け込んだ豚バラ肉を並べて両面に焼き色がつくまで各2〜3分焼く。タレに砂糖が入っているため焦げやすいので目を離さないこと。(強火で一気に焼き色をつけることが香ばしさの決め手。グリルパンを使うと焼き目が美しくつきより本場感が増す。焼き上がったら少し休ませてから切ると肉汁が落ち着く)
◎目玉焼きを作る
フライパンにサラダ油少々を熱し、卵2個を割り入れて縁がカリッとした目玉焼きを2枚作る。(カンボジアスタイルの目玉焼きは白身の縁をカリッと焼くのが特徴。目玉焼きをノムパンに加えることで食べ応えが増し、黄身が割れてピクルスや豚肉と絡む美味しさが生まれる。省いてもよいが加えると満足感が格段に上がる)
◎バゲットを準備する
バゲット2本(約20cm長さ)をオーブントースターで2〜3分焼き、外側をカリッと仕上げる。横に切り込みを入れて開く。(バゲットは焼きたての熱々が最高だが、焼き直すことで冷めたバゲットも外側のサクサク感が復活する。切り込みは底まで切り落とさず蝶番状に開くのがコツ)
◎パンに挟む
バゲットの内側両面にプラホックマヨネーズをたっぷり塗る。下側にレタスの葉を敷き、焼いた豚バラ肉・目玉焼きをのせる。水気を切ったピクルスをたっぷりのせ、薄切りきゅうり・トマトのスライス・パクチーをたっぷり加える。仕上げにスライスした青唐辛子を好みでのせてバゲットを閉じる。(具材は詰めすぎるとバゲットが割れてしまうので、食べやすい量を心がける。パクチーは惜しまずたっぷり加えることがノムパンの香りの決め手)
◎盛り付け

半分に斜め切りにして器に盛り、ライムのくし切りを添えて完成。好みでスイートチリソースまたはプラホックペーストを小鉢に添えてディップしながら食べてもよい。
料理の歴史と背景
ノムパンの歴史はフランスによるカンボジア植民地支配(1863〜1953年)に始まります。フランス人入植者とともにもたらされたバゲット製造の技術と文化は、プノンペンをはじめとするカンボジアの都市部に根付き、独立後もカンボジアの食文化の一部として定着しました。当初はフランス式のサンドイッチとして食べられていたバゲットに、カンボジアの市場で手に入る豚肉・野菜・ハーブ・プラホックなどの在来の食材が組み合わさるようになったのは20世紀前半のことで、プノンペンの路上食堂文化の発展とともにノムパンという独自のスタイルが確立されていきました。同じ植民地文化を共有するベトナムのバインミーとは姉妹料理の関係にあり、両国間の人の往来とともに互いに影響を与え合いながら異なるスタイルに発展してきたとされています。
ポル・ポト政権による壊滅的な文化破壊(1975〜1979年)の時代、プノンペンは完全に無人化されすべての食堂・市場・生活文化が消滅しました。バゲット製造の技術もこの時代に深刻な断絶を経験しましたが、1979年以降の復興とともにプノンペンに人々が戻り食堂文化が再生する中で、ノムパンもいち早く路上に復活した食文化のひとつとして語られています。現代のプノンペンではノムパン屋台は早朝から市民の朝食として活況を呈しており、具材のバリエーションは豚肉・鶏肉・魚のすり身・ハムチーズ・卵など多岐にわたります。2010年代以降はニューヨーク・ロサンゼルス・パリなどのカンボジア系コミュニティを中心に海外にも広まり、バインミーに次ぐ東南アジアのバゲットサンドイッチとして国際的な注目を集めています。日本でもカンボジア料理への関心の高まりとともにノムパンを提供する店が少しずつ現れており、プラホックマヨネーズという独自の風味とたっぷりのパクチーが織りなす一口は、カンボジアという国の食文化の豊かさと歴史を最も手軽に体験できる入口として旅行好き・食文化好きの間で評価が高まっています。
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