マレーシアの定番ロジャックのレシピ
揚げ豆腐・もやし・きゅうり・パイナップルをエビペーストと黒醤油・砂糖で和えるマレーシアの混ぜサラダ。本格レシピを詳しく解説します。
材料
- 木綿豆腐(または揚げ豆腐・豆腐泡) 200g
- もやし 150g
- きゅうり 1本
- パイナップル 100g
- ジャンボウ(水りんご・なければリンゴ) 1個
- バンクワン(豆芋・なければ大根または梨) 100g
- エビペースト(ブラチャン) 大さじ1
- 黒醤油(プトヒタム・なければ濃口醤油大さじ3+黒蜜小さじ1) 大さじ3
- タマリンドペースト 大さじ1
- 砂糖 大さじ2
- チリペースト(サンバルオーレック) 大さじ1
- ライム 1個
- 素炒りピーナッツ 60g
- スモークドライプラウン(なければ桜エビ)大さじ2
- サラダ油 適量(揚げ用)
- 青唐辛子 好みで・適量
ロジャック(Rojak)はマレー語で「混ぜ合わせた」を意味する言葉を料理名にしたマレーシアを代表する混ぜサラダで、揚げ豆腐・もやし・きゅうり・パイナップル・ユウバリュウガン(またはジャンボウ)などの野菜と果物を、エビペーストと黒醤油・砂糖・チリを合わせた濃厚な甘辛タレで和えてピーナッツを砕いてかける料理です。ペナンの福建系中国人が生み出したスタイルが最もよく知られており、インドネシアのルジャックやシンガポールのインディアンロジャックと同じ系譜を持ちながらも、ブラチャン(エビペースト)の発酵の旨みと黒醤油の甘みが溶け合ったペナン独自のタレによって別格の複雑な美味しさを実現しています。ロジャックの決め手はタレの甘み・辛み・発酵の旨みのバランスと、仕上げにかける粗く砕いたピーナッツの香ばしさで、この二つが揃って初めて本場の味に近づきます。マレーシアでは「ロジャック」という言葉自体が「ごった混ぜ」「多様性」を表す比喩として日常会話で使われるほど文化に根付いており、多民族社会マレーシアの食の豊かさと雑多な美しさをそのまま体現した料理として象徴的な存在です。ひとつの皿の中に甘み・酸味・辛み・旨み・食感が混在するロジャックは、食べるたびに口の中で異なる美味しさが弾けるような驚きをもたらします。
ロジャックの作り方
◎豆腐を揚げる
木綿豆腐200gを2cm角に切り、キッチンペーパーで丁寧に水気を拭き取る。170℃のサラダ油で表面がきつね色になるまで3〜4分揚げて取り出す。油を切って粗熱が取れたら食べやすい大きさに切る。(豆腐の水気をしっかり取ることが油はねを防ぎカリッと揚げる条件。揚げることでスポンジ状になった豆腐の内部にタレが染み込みやすくなる。市販の揚げ豆腐・豆腐泡を使えばこの工程を省略できる)
◎もやしを茹でる
もやし150gを沸騰した湯に10〜15秒くぐらせてザルに上げ、冷水でしめて水気をよく切る。(もやしはシャキシャキとした食感を残すために加熱は最小限にとどめる。水気が残るとタレが薄まるので丁寧に切ること)
◎野菜と果物を切る
きゅうり1本を乱切りにする。パイナップル100gを一口大に切る。ジャンボウ(マレーシアの水りんご・なければリンゴで代用)1個を薄切りにする。バンクワン(豆芋・なければ大根または梨で代用)100gを短冊切りにする。(ロジャックの食材の組み合わせは店や家庭によって自由度が高く、フルーツを多めにする甘いスタイルと野菜中心の食事的なスタイルの二通りがある。パイナップルの甘みと酸味はタレとの相性が特に良く欠かせない存在)
◎ブラチャンを炙る
エビペースト(ブラチャン)大さじ1をアルミホイルで包み、フライパンまたは直火で両面各1〜2分炙る。(ブラチャンはロジャックタレの発酵の旨みの核心。炙ることで水分が飛んで香りが凝縮し、生のまま使うよりも格段に深みのある旨みが加わる。独特の強烈な香りがあるが加熱することで和らぎ旨みに昇華する)
◎ロジャックタレを作る
炙ったブラチャン・黒醤油(プトヒタム)大さじ3・タマリンドペースト大さじ1・砂糖大さじ2・チリペースト(サンバルオーレック)大さじ1・ライム果汁大さじ1をボウルに合わせてよく混ぜ合わせる。(黒醤油はロジャックタレに深い甘みとコクをもたらすマレーシア料理に欠かせない調味料。日本では濃口醤油に黒蜜を小さじ1加えることで近似した甘みが出る。タマリンドの酸味とブラチャンの旨みと黒醤油の甘みの三つが溶け合うことがロジャックタレの個性を決定づける。味は甘み・辛み・酸みのバランスを見ながら各調味料を増減して調整する)
◎ピーナッツを砕く
素炒りピーナッツ60gをビニール袋に入れてめん棒で粗く砕く。(ピーナッツはロジャックの香ばしさと食感の決め手。細かく砕きすぎず、粗めに砕いてざくざくとした食感を残すことが大切。砕きたての香ばしさがロジャックの仕上がりを引き立てる)
◎ブンコスを準備する
ブンコス(スモークドライプラウン・乾燥エビの燻製)大さじ2をフライパンで乾煎りしてさらに香ばしく仕上げる。(ブンコスはペナンのロジャック最大の個性を決定づける食材で、燻製にした乾燥エビを細かく砕いたものをタレに加えることで他にはない複雑な香ばしさが生まれる。日本では入手しにくいため桜エビの乾煎りで代用できる。省いても作れるが、加えると味の深みが格段に増す)
◎和える
大きなボウルに揚げ豆腐・もやし・きゅうり・パイナップル・ジャンボウ・バンクワンを合わせ、ロジャックタレをたっぷり加えて全体をよく和える。(タレは具材全体にしっかり絡むように底からすくい上げるようにして混ぜる。和えたらすぐに提供することが食材の食感を最大限に活かす条件。時間が経つと水分が出てタレが薄まるので食べる直前に和えること)
◎盛り付け

器に彩りよく盛り付け、砕いたピーナッツをたっぷり散らし、乾煎りしたブンコスをかける。好みで青唐辛子の薄切り・ライムのくし切りを添えて完成。
料理の歴史と背景
ロジャックの起源はマレー半島に根付いていた果物と野菜を甘辛いソースで和えて食べる在来の食文化に求められますが、現在最もよく知られるペナンスタイルのロジャックは19世紀から20世紀初頭にかけてペナン島に定住した福建系中国人移民の食文化との融合によって生まれたとされています。福建系中国人が持ち込んだ黒醤油の甘辛い調味技法と、マレー半島在来のブラチャン・タマリンドの酸味文化、そして熱帯果物の豊かな多様性が一皿の中に凝縮されたロジャックは、ペナンという多民族都市が生んだ食の混血児です。「ロジャック」という言葉が料理名としてマレーシアの日常語に定着した背景には、様々な食材を混ぜ合わせるという料理の特性が多民族社会マレーシアの文化的な多様性のメタファーとして自然に受け入れられたことがあり、現在でも「ロジャック」は混ぜ合わさった多様な状態を指す比喩表現として広く使われています。インドネシアのルジャックとは共通の文化的ルーツを持ちながら、ブラチャンを大量に使うマレーシアスタイルとエビペーストをほとんど使わないインドネシアスタイルの違いに両国の食文化の差異が明確に表れています。
現代のマレーシアにおいてロジャックはペナンを中心に全国で広く食べられており、コピティアムの一角やホーカーセンターの屋台で職人がタレを合わせながら作るロジャックを求める行列が毎日見られます。ペナンには100年以上の歴史を持つロジャックの老舗が複数存在し、代々受け継がれた独自のタレの配合が各店の最大の秘密として守られています。2012年にユネスコがペナンの屋台文化を無形文化遺産候補として評価した際にロジャックはチャークイティオ・カリーミー・アッサムラクサと並んでペナン食文化の代表格として言及されました。日本ではマレーシア料理への関心の高まりとともにロジャックを提供する料理店やイベントが少しずつ増えており、甘辛い濃厚なタレと香ばしいピーナッツ・様々な食感の食材が混在する独特の美味しさは、日本の酢の物や和え物の文化に親しんだ日本人にも直感的に理解しやすい料理として評価が高まっています。一皿の中に甘み・酸み・辛み・旨みが共存するロジャックの雑多な豊かさは、マレーシアという国の食文化の本質を最も直接的な形で体験させてくれます。
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