マレーシアの定番ロティチャナイとダルカレーのレシピ
薄く伸ばした生地を何度も折り重ねてバターで焼き上げるマレーシアのインド系移民が生んだ定番パン。サクサクとふわふわが共存するロティチャナイをダルカレーとともに楽しむ本格レシピを、歴史とともに紹介します。
材料
- 強力粉 250g
- 無塩バター 40g(生地用20g・焼き用20g)
- 卵 1個
- 水 120ml
- サラダ油 大さじ2
- 塩 小さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 赤レンズ豆 100g
- トマト缶 100g
- ニンニク 2片
- 生姜 10g
- クミンシード 小さじ1
- マスタードシード 小さじ1/2
- ターメリックパウダー 小さじ1/2
- クミンパウダー 小さじ1
- 塩(ダル用) 小さじ1
- 水(ダル用) 400ml
ロティチャナイ(Roti Canai)はマレーシアのインド系移民が生み出した薄焼きパン料理で、強力粉・バター・塩・水を合わせて丁寧に捏ねた生地を一晩休ませてから手で紙のように薄く引き伸ばし、何度も折り重ねてからバターをたっぷりと敷いた鉄板の上で両面をこんがりと焼き上げることで、外側はパリパリとサクサクに焼けた層と内側はもちもちとふわふわの層が複雑に共存する唯一無二の食感を実現した、マレーシア全土のコピティアム・ホーカーセンター・屋台で朝食として最も広く食べられている国民的料理です。ダルカレー(レンズ豆のカレー)・フィッシュカレー・チキンカレーなど様々なカレーに浸けながら食べるのが定番のスタイルであり、ロティチャナイの薄くサクサクとした層がカレーの旨みをたっぷりと吸い込むことで生まれる口の中での一体感はマレーシア料理の中でも最も幸福感の高い食体験のひとつです。ロティチャナイの決め手は生地を何度も折り重ねることで生まれる幾重もの薄い層と、十分に熟成させた生地がバターの熱で一気に膨らむことで生まれるサクサクとふわふわの劇的な食感の対比であり、この二つが揃って初めて本場クアラルンプールやペナンのコピティアムのロティおじさんが作る味に近づきます。マレーシアではロティチャナイは「ロティ」と略して呼ばれることが多く、コピティアム(コーヒーショップ)の定番朝食メニューとしてテタレ(マレーシア式ミルクティー)とセットで食べるスタイルが国民に深く愛されており、マレー系・中国系・インド系すべての民族が朝の食卓で共有する数少ない料理のひとつとして多民族社会マレーシアの食の統合を象徴する存在です。
ロティチャナイの作り方
◎生地を作る
強力粉250g・塩小さじ1・砂糖小さじ1・無塩バター20g(室温に戻す)・卵1個・水120mlをボウルに合わせてよく捏ねる。生地がなめらかになったらサラダ油大さじ1を加えてさらに10分捏ね、表面がつるつるになるまで仕上げる。生地を4等分にして丸め、表面にサラダ油を薄く塗ってラップで包み室温で最低2時間、できれば一晩休ませる。(十分に休ませることでグルテンが緩んで生地が薄く伸びやすくなる。これがロティチャナイの層を作る上での最も重要な工程。冷蔵庫で一晩休ませると翌朝の作業が格段に楽になる)
◎生地を薄く伸ばして折り重ねる
油を薄く塗った台の上に生地をひとつ置き、手のひらで押しながら円形に薄く伸ばす。指先で生地の端をつまんで外側に引っ張りながら紙のように透けるくらいまで薄く伸ばす。表面に無塩バター10gを薄く塗る。生地の端から中心に向けて折り畳み、さらに90度回転させてもう一度折り畳んで正方形にする。(生地を破らずに薄く伸ばすには油を塗った台の上でゆっくりと外側に引き伸ばすこと。多少破れても焼いてしまえば問題ない。折り畳む回数が多いほど層が増えてサクサクの食感が増す)
◎焼き上げる
フライパンまたは鉄板を中火で熱し、バター大さじ1を溶かす。折り畳んだ生地を置き、手のひらで軽く押して平らにする。片面3〜4分、表面がきつね色になったら裏返し、同様に焼く。焼き上がったらすぐに両手でパンの端を叩いてほぐし、層をふわふわに仕上げる。(叩いてほぐす工程がロティチャナイをふわふわに仕上げる重要な最後の一手。バターは惜しまず使うことで香ばしさと層の美しさが増す。焼き色は濃いめにつけるほどサクサクの食感が強くなる)
◎ダルカレーを作る
赤レンズ豆100gを水でよく洗う。鍋にサラダ油大さじ1を熱してニンニク2片(薄切り)・生姜10g(みじん切り)・ホールスパイス(クミンシード小さじ1・マスタードシード小さじ1/2)を炒める。トマト缶100g・ターメリック小さじ1/2・クミンパウダー小さじ1・塩小さじ1を加えて炒め合わせ、赤レンズ豆と水400mlを加えて20〜25分、豆が完全に溶けるまで煮込む。(ダルカレーはロティチャナイの定番の相棒。レンズ豆は浸水不要で煮溶けやすいため手軽に作れる。仕上げにギーを小さじ1加えると香りが格段に豊かになる)
◎盛り付け

焼き上がったロティチャナイを皿に盛り、ダルカレーを小鍋または深皿に入れて添える。好みでフィッシュカレーまたはチキンカレーも添えて、ロティチャナイをちぎりながらカレーに浸けて食べるのがマレーシアの定番スタイル。
料理の歴史と背景
ロティチャナイの起源は19世紀後半にマレー半島へ労働移民として渡ってきた南インド・タミル系移民の食文化に求められます。インド亜大陸に古くから存在するパロタ(Parotta)と呼ばれる層状の薄焼きパンがマレー半島の食材・調味料文化と融合し、現地の食習慣に合わせて変容を遂げることでロティチャナイという独自の料理として確立されました。植民地時代のイギリス統治下でゴム農園や鉄道建設の労働者として大量に移住した南インド系移民が、コーヒーショップや屋台でロティチャナイを販売することで都市部の労働者層の朝食として急速に普及し、やがてマレー系・中国系を含むすべての民族に受け入れられる国民食へと成長しました。「チャナイ」という名称の語源については諸説あり、インドのチェンナイ(旧マドラス)に由来するという説や、マレー語で「伸ばす」を意味する動詞に由来するという説が並立しています。マレーシア独立後の1960〜70年代には全国のコピティアムでロティチャナイが提供されるようになり、テタレとのセットメニューが定着したことで現在の朝食文化の基盤が形成されました。
現代のマレーシアにおいてロティチャナイはクアラルンプール・ペナン・ジョホールバルなど全国のコピティアムとホーカーセンターで朝食として日常的に食べることができ、熟練の職人が生地を空中に投げ上げながら薄く伸ばすパフォーマンスはマレーシアを訪れる旅行者にとっても必見の光景となっています。ロティチャナイは現在もマレーシア政府が物価安定政策として価格統制を行っている数少ない食品のひとつであり、国民の食文化における重要性の高さを示しています。バナナ・卵・チョコレートなどを生地に包んで焼いた甘いロティや、チーズや肉を挟んだ現代的なバリエーションも人気を集めており、伝統的なスタイルを守りながらも時代とともに進化を続けています。日本ではマレーシア料理専門店でロティチャナイを提供する店が増えており、サクサクとふわふわが共存する独特の食感とカレーとの相性の良さは、ナンやクレープに親しんだ日本人の味覚にも直感的に理解しやすい料理として高い評価を得ています。
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