マレーシアの定番テタレのレシピ
濃く煮出した紅茶に練乳を合わせ、二つのカップの間を高く引き伸ばして泡立てるマレーシアの定番ミルクティー。本格的な作り方を解説します。
材料
- ブロークンオレンジペコー(BOP)またはアッサム茶葉 大さじ2(またはティーバッグ3〜4個)
- 水 400ml
- 練乳 大さじ3〜4
- 砂糖 大さじ1
- 氷 アイステタレにする場合・たっぷり
テタレ(Teh Tarik)は「引っ張った紅茶」を意味するマレーシアを代表するミルクティーで、濃く煮出した紅茶に練乳と砂糖を合わせ、二つの容器の間を高く持ち上げながら何度も注ぎ移す独特の技法で作る泡立ちのある甘いお茶です。「テ」は紅茶、「タレ」は引っ張るを意味し、職人が頭上高く持ち上げた容器からお茶を細く長く引き伸ばすように注ぐ動作はマレーシアの食堂文化を象徴するパフォーマンスとして観光客の目を釘付けにします。インド系マレーシア人のコミュニティが持ち込んだチャイ文化が、マレー半島の甘い練乳文化と融合して生まれたテタレは、マレー系・中国系・インド系という三つの主要コミュニティすべてに愛されるマレーシアの多民族社会を象徴する飲み物です。クアラルンプールやペナンのマンミー(インド系イスラム教徒の食堂)では早朝から深夜まで熱々のテタレが提供されており、ロティチャナイやナシレマとともに食べるスタイルがマレーシア人の日常の朝食として定着しています。引き伸ばす動作には単なるパフォーマンス以上の意味があり、空気を混ぜ込むことでお茶が冷まされ細かい泡が立ちクリーミーな口当たりが生まれるという実用的な効果をもたらします。
テタレの作り方
◎紅茶を濃く煮出す
小鍋に水400mlを入れて強火で沸騰させ、ブロークンオレンジペコー(BOP)またはアッサムの茶葉大さじ2(またはティーバッグ3〜4個)を加える。弱火に落として3〜4分しっかり煮出す。(テタレには濃くタンニンが豊富な茶葉が必要。日本の紅茶パックでも作れるが、BOPまたはアッサムを使うと本場に近いコクと渋みが出る。煮出す時間が短いと後から加える練乳の甘みに負けてお茶の風味が消えてしまうので、少し濃すぎると感じるくらいまでしっかり煮出すことが重要)
◎練乳と砂糖を加える
茶葉またはティーバッグを漉して取り除き、練乳大さじ3〜4・砂糖大さじ1を加えてよく混ぜ合わせる。(練乳の量はテタレの甘さとクリーミーさを決定づける最大の要素。本場マレーシアのテタレは日本人の感覚からするとかなり甘めに仕上げるのが正しいスタイル。最初は大さじ3から始めて好みに合わせて調整する。砂糖は練乳だけでは甘みのコクが足りないと感じる場合に加える)
◎引き伸ばして泡立てる
お茶の入った容器と空の容器を用意する。お茶を空の容器に向かって高く持ち上げながら細く引き伸ばすように注ぎ、次にその容器を持ち上げてまた元の容器に注ぎ返す。この動作を5〜7回繰り返す。(二つの容器の距離を徐々に広げていくことで空気が混ぜ込まれ表面に細かい泡が立つ。最初は低い位置から始めて慣れてきたら距離を広げる。容器は金属製のカップや計量カップが扱いやすい。泡立て器で力強く混ぜる方法でも代用できるが、引き伸ばす動作で生まれる細かい泡の滑らかさには及ばない)
◎温度を確認して仕上げる
引き伸ばす動作によって適度に冷まされたテタレを飲みやすい温度に整える。熱々で飲む場合はすぐに提供し、アイステタレにする場合は氷をたっぷり入れたグラスに注ぐ。(テタレは熱いまま飲むホットスタイルと氷で冷やすアイスタレの二通りがある。ホットの場合は引き伸ばす動作でちょうど飲みやすい温度になるのが理想。アイスタレにする場合は練乳を少し多めにすると氷で薄まった後のバランスが整う)
◎盛り付け

金属製のカップまたは耐熱グラスに注ぎ、表面の細かい泡を美しく整えて完成。ロティチャナイ・ナシレマ・サモサなどと一緒に提供してもよい。
料理の歴史と背景
テタレの起源は19世紀後半から20世紀初頭にかけてイギリス植民地下のマレー半島に渡ってきた南インド系タミル人労働者が持ち込んだお茶文化に求められます。タミル Nadu地方のチャイ文化と、イギリスが持ち込んだ紅茶プランテーションの文化、そしてマレー半島に根付いていた甘い練乳文化が交わることでテタレという独自のミルクティーが誕生しました。引き伸ばす技法の起源については複数の説がありますが、熱々の紅茶を素早く冷ましながら空気を含ませてクリーミーな泡を作り出すために自然発生的に生まれた実用的な知恵とされています。マレーシアのマンミー文化とともに発展したテタレは20世紀を通じてマレー系・中国系・インド系の三民族すべてに浸透し、民族・宗教・階層を超えた国民的な飲み物として定着していきました。テタレを作る職人の技はマレーシアの無形文化遺産として広く認識されており、熟練の職人が両腕を広げて黄金色のお茶を宙に引き伸ばす姿はマレーシアの食文化を象徴するアイコンとして国内外に知られています。
現代のマレーシアにおいてテタレは単なる飲み物を超えた文化的な存在です。2003年にはマレーシアがテタレを国家の文化遺産食品として公式に認定し、翌年にはクアラルンプールで開催された国際テタレ競技会に世界各国から選手が参加するという出来事がテタレの国際的な知名度を一気に高めました。マレーシア政府は海外のマレーシア料理普及事業においてテタレをナシレマ・サテとともに最重要の「マレーシアの顔」として位置づけており、世界各国のマレーシア料理レストランでテタレが提供されるのはその普及政策の成果でもあります。日本でもクアラルンプール直行便の就航とともにマレーシア旅行が身近になり、テタレはマレーシア旅行経験者の間で「もう一度飲みたい」と語られる飲み物の代表格として知られています。近年は日本国内のマレーシア料理店やアジア料理カフェでも提供が増えており、甘くてクリーミーで泡立ちが美しいテタレはタピオカミルクティーに親しんだ世代の日本人にも自然と受け入れられる一杯として評価が高まっています。
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