カンボジアの定番バイモアンのレシピ
鶏のゆで汁で炊いたジャスミンライスにしっとりゆで鶏を盛り合わせるカンボジアの定番チキンライス。生姜ソースとともに楽しむ本格レシピです。
材料
- 鶏もも肉 2枚(約400g)
- ジャスミンライス 2合
- レモングラス 1本(ゆで用)+1本(クルーン用)
- 生姜 1かけ(ゆで用)+1かけ(炊飯用)
- にんにく 2片(ゆで用)+1片(炊飯用)+2片(クルーン用)
- ガランガル 10g(クルーン用)
- ターメリック 5g(またはターメリックパウダー小さじ1/2)
- シャロット 2個(クルーン用)+2個(フライドシャロット用)
- プラホック(発酵魚ペースト) 小さじ1
- パームシュガー(なければきび砂糖) 大さじ1.5
- ナンプラー 大さじ1(タレ用)+少々(スープ用)
- 塩 小さじ1(ゆで用)+少々(各種)
- 白こしょう 少々
- サラダ油 大さじ1(タレ用)+適量(揚げ用)
- 青ねぎ 2本
- パクチー 適量
- きゅうり 1/2本
- トマト 1個
バイモアン(បាយមាន់)は「鶏のご飯」を意味するカンボジアを代表するチキンライスで、鶏をゆでたスープでジャスミンライスを炊き上げ、しっとりとゆで鶏を盛り合わせてクメール独自のタレをかけて食べる料理です。タイのカオマンガイ・ベトナムのコムガー・シンガポールのチキンライスと同じ「鶏で炊いたご飯に鶏肉を添える」という東南アジア共通の系譜を持ちながら、バイモアンはプラホック・クルーンペースト・パームシュガーを組み合わせたカンボジア独自のタレによってまったく異なる個性を放ちます。プノンペンの市場や食堂では朝から大鍋でゆでられた鶏が吊り下げられ、注文に応じてさばきながら提供される光景が毎日繰り広げられます。シンプルな構成の中にクメール食文化の豊かさが凝縮されており、ご飯の炊き加減・鶏肉のゆで加減・タレのバランスという三つの要素が揃って初めて完成する、奥深い一皿です。
バイモアンの作り方
◎鶏肉をゆでる
鍋にたっぷりの水を沸かし、鶏もも肉2枚(約400g)・潰したにんにく2片・薄切り生姜3枚・レモングラス1本(叩いてつぶす)・塩小さじ1を加える。沸騰したら弱火にして蓋をし、18〜20分静かにゆでる。火を止めてそのまま10分余熱で火を通す。ゆで汁はスープとご飯炊き用に取っておく。(ぐらぐら沸騰させると鶏肉が固くなる。レモングラスを加えることでカンボジアらしい清涼感のあるゆで汁になり、後から炊くご飯の風味が豊かになる)
◎ご飯を炊く
ジャスミンライス2合を研いで水気を切り、炊飯器に入れる。水の代わりにゆで汁を同量加え、薄切り生姜2枚・潰したにんにく1片・塩少々を加えて通常通りに炊く。(ゆで汁で炊くことで米に鶏の旨みとレモングラスの香りが移り、バイモアン独特の風味豊かなご飯になる。生姜とにんにくは炊き上がったら取り出す)
◎クルーンペーストを作る
レモングラス1本(薄切り)・ガランガル10g(薄切り)・ターメリック5g(またはターメリックパウダー小さじ1/2)・シャロット2個・にんにく2片をすり鉢でなめらかなペースト状になるまでしっかりすりつぶす。(バイモアンのクルーンはタレのベースになるため、なめらかに仕上げるほどタレの舌触りがよくなる。ターメリックを加えることでタレに美しい黄みが生まれ、鶏肉に絡めたときの見た目が際立つ)
◎タレを作る
小鍋にサラダ油大さじ1を中火で熱し、クルーンペーストを1〜2分炒める。プラホック(発酵魚ペースト)小さじ1・パームシュガー(なければきび砂糖)大さじ1.5・ナンプラー大さじ1・ゆで汁大さじ3を加えてよく混ぜ合わせる。弱火で2〜3分煮詰めてとろみをつける。(プラホックとパームシュガーの組み合わせがバイモアンのタレをカオマンガイやコムガーと全く異なるカンボジア独自の味に仕上げる。プラホックが苦手な場合はナンプラーを増やして代用できるが、発酵の旨みは格段に落ちる)
◎スープを仕上げる
残ったゆで汁を塩・ナンプラー各少々で味を調え、小口切りにした青ねぎと白こしょうをひとふり加えて仕上げスープにする。(シンプルに仕上げることが旨みを活かすコツ。鶏・レモングラス・生姜の香りが凝縮したゆで汁はそれ自体が完成されたスープ。余分な調味は加えすぎないこと)
◎鶏肉を切り分ける
粗熱が取れた鶏もも肉を食べやすい大きさに切り分ける。皮目を上にして盛り付けると見た目が美しい。(鶏肉は冷蔵庫で冷やしてから切ると断面が崩れず美しく仕上がる。カンボジアスタイルでは骨付きのままぶつ切りにすることも多く、そのほうがスープに旨みが残りやすい)
◎フライドシャロットを作る
シャロット2個を薄切りにし、170℃のサラダ油でこんがりきつね色になるまで揚げる。油を切ってキッチンペーパーに広げ、冷めると自然にカリッとなる。(フライドシャロットはバイモアンの香ばしさを決定づける仕上げのトッピング。市販品でも代用できるが揚げたての香ばしさは格別)
◎盛り付け

器に炊き上がったご飯をたっぷり盛り、切り分けた鶏もも肉を美しく並べる。フライドシャロットをたっぷり散らし、薄切りきゅうり・トマトのくし切り・パクチーを添える。タレを小鉢に入れ、スープを別の椀に注いで一緒に出して完成。
料理の歴史と背景
バイモアンはカンボジアの食文化の中でも最も長い歴史を持つ料理のひとつとされており、鶏を丸ごとゆでてそのスープでご飯を炊くという調理法はアンコール王朝時代から受け継がれてきたとされています。東南アジア各国に広がるチキンライス文化の共通の源流は中国・海南島の海南チキンライスとする説が有力ですが、カンボジアではクルーンペーストとプラホックという独自の調味料体系がこの料理に取り込まれ、中国起源の調理法をクメール色に染め直した独自のスタイルとして定着しました。フランス植民地時代(1863〜1953年)にはプノンペンの食堂文化が発展し、バイモアンは朝食・昼食を問わず市民が気軽に食べる庶民の料理として都市の食文化に根付いていきました。
ポル・ポト政権による壊滅的な文化破壊(1975〜1979年)の時代、カンボジアの伝統的な食文化の多くが失われましたが、バイモアンは食材の入手しやすさと調理のシンプルさから農村部でも作り続けられた料理のひとつです。復興の過程でプノンペンの食堂文化が再び活気を取り戻すとともに、バイモアンは再びカンボジアの朝食の定番として市民の食卓に戻りました。現代のプノンペンでは早朝から鶏を大鍋でゆでるバイモアン専門の食堂が各街区に存在し、吊り下げられた鶏を目の前でさばいてもらう光景はプノンペンの朝の原風景として今も続いています。近年は若いカンボジア人シェフたちがクメール料理の国際的な発信に取り組む中で、バイモアンはカオマンガイ・チキンライスとの比較を通じて「クメール食文化の独自性」を語る料理として注目されており、日本でもカンボジア料理への関心の高まりとともにその存在が知られるようになっています。
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