トルコの定番ドルマのレシピ
スパイス香るピラフをブドウの葉で丁寧に包んで煮込むトルコを代表する詰め物料理。レモンとオリーブオイルの地中海の風味とともに楽しむ本格レシピを、歴史とともに紹介します。
材料
- 塩漬けブドウの葉(瓶詰め) 30〜35枚
- 米(短粒種) 150g
- 玉ねぎ 1個
- 松の実 大さじ2
- ドライカラント(なければレーズン) 大さじ2
- シナモンパウダー 小さじ1/2
- オールスパイス 小さじ1/2
- 砂糖 小さじ1
- 黒こしょう 小さじ1/4
- パセリ ひとつかみ
- ディル ひとつかみ
- ミント ひとつかみ
- オリーブオイル 大さじ6
- レモン 2個
- 水 300ml
- 塩 小さじ1と適量
- ヨーグルト・ニンニク(ジャジュク用) 各適量
ドルマ(Dolma)はトルコ語で「詰められたもの」を意味するトルコを代表する詰め物料理で、塩漬けにして柔らかくしたブドウの葉の上に米・パイン松の実・ドライカラント・タマネギ・パセリ・ディル・ミント・シナモン・オールスパイスを合わせたフィリングを細長く包み込み、並べた包みにオリーブオイルとレモン果汁と水を注いで弱火でじっくりと煮込むことで、ブドウの葉の渋みと植物的な酸みが米のフィリングに染み込みながら松の実とドライカラントの甘みと食感の対比が口の中で展開する唯一無二の繊細な美味しさに仕上がるオスマン帝国の宮廷料理を起源とするトルコ料理の最高峰のひとつです。ドルマの最大の個性はブドウの葉という自然の素材が料理の器として機能しながら同時に味の構成要素としてフィリングに深みをもたらすという二重の役割を担うことにあり、葉の渋みとレモンの酸みが溶け合うことで生まれる清涼感のある後味はオリーブオイルの豊かなコクと相まってエーゲ海沿岸の食文化の洗練を体現しています。ドルマの決め手はフィリングに松の実とドライカラントという甘みと旨みを持つ乾物を惜しみなく加えることで生まれる複雑な風味の重層感と、包んだドルマを鍋の中でぎっしりと並べて重石をして煮込むことで形が崩れずにブドウの葉がしっとりと柔らかく仕上がることであり、この二つが揃って初めて本場イスタンブール・イズミル・ブルサのメゼ(前菜)専門店や家庭の食卓で代々受け継がれてきた味に近づきます。トルコではドルマは結婚式・ラマダン・祝祭日の特別なテーブルに必ず登場する料理であり、家族や隣人が集まってブドウの葉に丁寧に包む作業を共に行う共食の文化とともに何世代にもわたって受け継がれており、一本のドルマにオスマン帝国の宮廷料理の洗練とアナトリアの家庭料理の温かさが凝縮されています。
ドルマの作り方
◎ブドウの葉を準備する
塩漬けブドウの葉(市販の瓶詰め品)30〜35枚を水から取り出し、沸騰した湯に1〜2分浸けて塩抜きしてザルに上げる。(塩漬けブドウの葉は中東系・トルコ系食材店または輸入食材専門店で瓶詰め品が入手できる。十分に塩抜きしないと仕上がりが塩辛くなる。葉は破れないよう丁寧に扱うこと。破れた葉は鍋の底に敷いて使う)
◎フィリングを作る
玉ねぎ1個を細かいみじん切りにし、フライパンにオリーブオイル大さじ3を熱して中火で10分、透き通るまで炒める。米(短粒種)150gを洗わずにそのまま加えて3分炒め合わせる。松の実大さじ2・ドライカラント(なければレーズン)大さじ2・シナモンパウダー小さじ1/2・オールスパイス小さじ1/2・砂糖小さじ1・塩小さじ1・黒こしょう小さじ1/4を加えて混ぜる。水100mlを加えて蓋をして弱火で8〜10分、水気がほぼなくなるまで炊く。火を止めてパセリ・ディル・ミントをそれぞれひとつかみずつ細かく刻んで加え、レモン果汁大さじ1を加えてよく混ぜる。完全に冷ます。(米は洗わないことで表面のデンプンがフィリングをまとめる役割を担う。フィリングは完全に冷ましてから包むこと。温かいまま包むと葉が破れやすくなる)
◎包む
ブドウの葉を1枚まな板に広げ、葉の艶のある面を下にして茎側を手前に置く。フィリングを小さじ2程度葉の下部中央にのせ、手前から一回折り上げて左右の端を内側に折り込み、くるくると細長く巻いて包む。(包む大きさは親指ほどの細長い円柱形が理想。きつく包みすぎると米が膨張したときに葉が破れる。ゆるく包みすぎると形が崩れる。適度な締め具合で均一な太さに仕上げることが熟練の証)
◎煮込む
厚手の鍋の底に破れたブドウの葉または薄切りにしたトマトを敷く。包んだドルマを巻き終わりを下にしてぎっしりと並べ、二段に重ねる。オリーブオイル大さじ3・レモン果汁大さじ2・水200mlを注ぐ。耐熱皿をドルマの上に乗せて重石にし、蓋をして弱火で45〜50分、葉が完全に柔らかくなるまで煮込む。(重石をすることで煮込み中にドルマが動いて形が崩れるのを防ぐ。水が足りなくなったら途中で足すこと。煮込み時間が長いほど葉が柔らかくなりフィリングにブドウの葉の風味が染み込む)
◎盛り付ける

鍋から丁寧に取り出して皿に並べる。レモンのくし切りをたっぷりと添え、良質なオリーブオイルをひと回しかけて完成。冷製でも温製でも美味しく食べられる。ヨーグルト・ニンニクを合わせたジャジュク(トルコ風ヨーグルトソース)を添えるのが定番スタイル。
料理の歴史と背景
ドルマの起源はオスマン帝国の宮廷料理文化に求められます。「詰め物料理」という調理法自体はビザンツ帝国時代のコンスタンティノープルにも存在したとされていますが、野菜や葉に米やスパイスを詰めて調理するスタイルをオスマン帝国の宮廷料理として高度に洗練させたのはトプカプ宮殿の料理人たちであるとされており、16〜18世紀にかけてオスマン帝国の最盛期に現在のドルマの形が確立されたと考えられています。オスマン帝国の広大な版図はバルカン半島・アナトリア・中東・北アフリカに及んでいたため、ドルマという調理法はギリシャのドルマダキア・アラブ世界のワラクエイナブ・アルメニアのトルマなど様々な名称と食文化の変奏として帝国全域に普及し、現在でも旧オスマン領の広い地域でドルマのバリエーションが日常食として根付いています。ブドウの葉を使う文化はアナトリア半島のブドウ栽培文化と深く結びついており、夏に収穫したブドウの葉を塩漬けにして冬まで保存して使うという知恵はアナトリアの農村の季節の食文化として長く受け継がれてきました。肉を入れない菜食スタイルのドルマは「ゼイティンヤール(オリーブオイル仕立て)」と呼ばれてラマダンの断食期間中の食事としても広く食べられており、宗教と食文化が深く結びついた料理として機能しています。
現代のトルコにおいてドルマはイスタンブール・アンカラ・イズミル・ブルサなど全国のロカンタ(食堂)・メゼバー・家庭の食卓で日常的に食べることができ、特にエーゲ海沿岸のイズミルとエーゲ地方ではオリーブオイル仕立ての冷製ドルマが地域の食文化を象徴する料理として高い評価を受けています。トルコ料理がユネスコの無形文化遺産への登録申請を進める中でドルマはケバブ・バクラバ・メゼ文化とともにトルコ食文化の最も重要な構成要素のひとつとして位置づけられており、次世代への伝承と国際的な普及に向けた取り組みが続いています。日本ではトルコ料理専門店・中東料理店でドルマを提供する店が少しずつ増えており、ブドウの葉の渋みとレモンの酸みとオリーブオイルのコクが溶け合う繊細な味わいと、細長く均一に巻かれた美しい見た目は、巻き物・ロール寿司・春巻きなど包み料理文化に親しんだ日本人の味覚にも直感的に理解しやすい料理として関心が高まっています。
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