イスラエルの定番クナーファのレシピ
カダイフ(極細の糸状パスタ)とナブルシチーズをバターで重ねて焼き上げ、オレンジブロッサムのシロップをたっぷりと染み込ませる中東を代表するチーズ菓子。サクサクととろける本格レシピを、歴史とともに紹介します。
材料
- カダイフ(冷凍・解凍済み) 200g
- 無塩バター 80g
- モッツァレラチーズ 300g
- ナブルシチーズ(なければフェタチーズ) 100g
- 砂糖 200g
- 水 150ml
- レモン果汁 小さじ1
- オレンジブロッサムウォーター 小さじ1
- ローズウォーター 小さじ1
- ピスタチオ(砕いたもの) 大さじ3
- バラの花びら・金箔 各適量(飾り用)
クナーファ(كنافة)はアラビア語圏全域で愛される中東を代表するチーズ菓子で、小麦粉を極細の糸状に押し出して乾燥させたカダイフ(Kataifi)生地をバターで和えて土台と蓋に分け、その間にモッツァレラまたはナブルシチーズのとろとろとした塩気のある層を挟んでオーブンで黄金色になるまで焼き上げ、焼き上がった直後にオレンジブロッサムウォーターとローズウォーターを加えたシュガーシロップをたっぷりと注ぎかけることで、外側はバターとシロップでカリカリと香ばしく内側はとろりと溶けたチーズの塩みとシロップの甘みが劇的に溶け合う唯一無二の食感と味わいに仕上がる聖地エルサレムと西岸地区ナブルスを発祥とする菓子です。クナーファの最大の個性はチーズの塩みと砂糖シロップの甘みという一見相反する二つの味が焼き上げという工程を経て一体化することで生まれる甘じょっぱい背徳的な美味しさにあり、これは中東の菓子文化の中でも特に際立った独創性として世界中のシェフや食通から高い評価を受けています。クナーファの決め手はカダイフ生地にバターを丁寧に和え込むことで生まれる均一な焼き色と香ばしさと、焼き上がった直後の熱いうちにシロップを一気に注ぎかけることでシロップが奥まで浸透して生まれるしっとりとカリカリが共存する絶妙な食感であり、この二つが揃って初めて本場ナブルスやエルサレムの菓子店の職人が作る味に近づきます。イスラエルとパレスチナ自治区では結婚式・ラマダン明けのイード・宗教的な祝日の際に家族や隣人と分け合うクナーファは単なる菓子を超えた祝祭と共同体の象徴的な存在として文化に深く根付いており、その発祥と帰属をめぐってはイスラエル・パレスチナ・ヨルダン・レバノンなど複数の国・地域が正統を主張するほどクナーファは中東の食文化のアイデンティティと深く結びついています。
クナーファの作り方
◎シロップを作る
砂糖200g・水150ml・レモン果汁小さじ1を鍋に合わせて中火で沸騰させ、沸騰したら弱火にして5分煮詰める。火を止めてオレンジブロッサムウォーター小さじ1・ローズウォーター小さじ1を加えて混ぜる。冷ましておく。(シロップは焼き上がりに熱いクナーファへ注ぐため冷たい状態で用意しておくこと。熱いものに熱いシロップをかけると表面がべたつく。レモン果汁はシロップの結晶化を防ぐ役割を担う)
◎カダイフ生地を準備する
カダイフ(冷凍品を解凍したもの)200gをボウルに入れ、手で軽くほぐす。溶かした無塩バター80gを全体に均一に和え込む。バターが全体に行き渡ったら生地を二等分する。(カダイフはアジア系・中東系食材店や輸入食材専門店で冷凍品が入手できる。ない場合はそうめんを半分の長さに折ったもので代用できる。バターを丁寧に和え込むことが均一な焼き色と香ばしさの条件)
◎チーズ層を準備する
モッツァレラチーズ300gを細かくちぎる。ナブルシチーズ(なければフェタチーズ)100gを水に30分浸けて塩抜きし、水気を切って細かくほぐす。二種類のチーズを合わせてよく混ぜる。(ナブルシチーズは塩気が強いため必ず塩抜きすること。フェタチーズで代用する場合も同様に塩抜きが必要。モッツァレラは加熱するととろとろに溶けるため多めに使うことでクナーファらしいチーズ層が生まれる)
◎焼き上げる
バターを薄く塗った直径22〜24cmの丸いオーブン用型(またはフライパン)に、バターを和えたカダイフ生地の半量を均一に敷き詰めて手でしっかりと押し固める。チーズを全体に均一に広げる。残りのカダイフ生地を上に広げて均一に押し固める。190℃に予熱したオーブンで25〜30分、表面が黄金色になるまで焼く。(フライパンの場合は弱火で蓋をして片面15分焼き、裏返してさらに10分焼く。表面が均一に黄金色になるまでしっかりと焼き込むことがカリカリとした食感の条件)
◎シロップを染み込ませて盛り付ける

焼き上がったクナーファを型のまま皿に返して盛り付け、冷たいシロップを全体に惜しみなく注ぎかける。砕いたピスタチオをたっぷりと散らし、好みでバラの花びら・金箔を飾って完成。熱いうちにスプーンで切り分けて食べるのが中東の定番スタイル。
料理の歴史と背景
クナーファの起源は10世紀頃のアラブ・イスラム世界の菓子文化に求められ、当時の料理書にカダイフ生地とチーズを組み合わせた菓子の記述が見られることが最古の記録とされています。パレスチナ自治区西岸地区のナブルスはクナーファの発祥地として最も広く認知されており「ナブルシクナーファ」という名でアラブ世界全域に知られる最高峰のクナーファを生み出した都市として中東全域から菓子職人と食通が訪れる巡礼地となっています。オスマン帝国時代にはクナーファはスルタンの宮廷菓子として珍重されるとともに帝国の広大な領土全域に普及し、現在の中東・北アフリカ・バルカン半島など旧オスマン領の広い地域でクナーファのバリエーションが根付いている背景にはオスマン帝国の食文化の伝播があります。イスラエル建国後はユダヤ系住民の間にもクナーファが広まり、特にアラブ系ユダヤ人(ミズラヒム)の食文化を通じてイスラエルの菓子文化に定着したことでクナーファはイスラエルとパレスチナ双方の食文化に属する料理として複雑な文化的位置を占めるようになりました。
現代においてクナーファはイスラエル・パレスチナ自治区・ヨルダン・レバノン・シリアなど中東全域の菓子店・市場・ホテルのデザートで日常的に食べることができ、特にナブルスの旧市街に集中するクナーファ専門店は大きな銅製の丸型で豪快に焼き上げた直径1メートル近いクナーファを注文を受けてから切り分けて提供するスタイルで世界中の旅行者を魅了しています。2009年にヨルダンのシェフたちが重さ1350kgの世界最大のクナーファを作ってギネス記録に認定されたことで国際的な知名度が急上昇し、クナーファは中東料理を代表するスイーツとして世界各国のアラブ料理店・中東料理店のデザートメニューに広く登場するようになりました。日本では中東料理専門店やハラール対応の菓子店でクナーファを提供する店が少しずつ増えており、チーズの塩みとシロップの甘みが溶け合う甘じょっぱい独創的な味わいとカリカリとしっとりが共存するカダイフ生地の食感は、チーズケーキや和菓子の文化に親しんだ日本人の味覚にも新鮮な驚きをもたらす菓子として関心が高まっています。
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