カンボジアの定番トレイチャアムプルーのレシピ
タマリンドの甘酸っぱいソースで白身魚を炒め絡めるカンボジアの定番魚料理。シンプルな材料で本格的な味を再現できるレシピを解説します。
材料
- 白身魚(鱈・鯛・スズキなど) 300g
- タマリンドペースト 大さじ2
- ぬるま湯 100ml(タマリンド溶き用)
- シャロット 3個
- にんにく 2片
- レモングラス 1本
- 乾燥赤唐辛子 2本
- パームシュガー(なければきび砂糖) 大さじ2
- プラホック(発酵魚ペースト) 小さじ1(またはナンプラー大さじ1)
- オイスターソース 大さじ1
- トマト 1個
- 青ねぎ 3本
- 生姜 1かけ(飾り用・せん切り)
- 赤唐辛子 飾り用・適量
- 塩 少々(下処理用)
- 白こしょう 少々
- サラダ油 適量(揚げ用)+大さじ1(炒め用)
- パクチー 適量
- ジャスミンライス 適量
トレイチャアムプルー(ត្រីឆាអំពិល)は「タマリンドで炒めた魚」を意味するカンボジアの定番魚料理です。「トレイ」は魚、「チャー」は炒める、「アムプルー」はタマリンドを指します。揚げた白身魚にタマリンド・パームシュガー・プラホックを合わせた甘酸っぱく濃厚なソースを絡める調理法は、酸味・甘み・旨みの三つが高いバランスで重なり合うカンボジア料理の味の哲学を体現しています。メコン川とトンレサップ湖という二つの巨大な淡水水系に恵まれたカンボジアでは魚は最も身近なタンパク源であり、トレイチャアムプルーは川魚・海水魚を問わず作られる汎用性の高い家庭料理として全土に根付いています。タマリンドの酸味はカインチュアやゲーンソムなど東南アジア各国の酸味料理に共通する食材ですが、プラホックとパームシュガーというカンボジア独自の調味料と組み合わさることで、他の国の料理とは明確に異なるクメールの個性が生まれます。炊きたてのジャスミンライスにたっぷりのソースをかけながら食べる、プノンペンの家庭の食卓に欠かせない一皿です。
トレイチャアムプルーの作り方
◎魚を下処理する
白身魚(鱈・鯛・スズキなど)300gを食べやすいぶつ切りにし、塩少々・白こしょう少々をまぶして10分おく。出てきた水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取る。(塩をあてることで魚の臭みを引き出して取り除く。水分を残したままだと揚げたときに油が跳ね、ソースが薄まる原因にもなる。骨付きのぶつ切りを使うと揚げたときに旨みが凝縮されてソースとの絡みがよくなる)
◎魚を揚げる
フライパンにサラダ油を底から2cm程度入れて180℃に熱し、下処理した魚を並べて両面がこんがりきつね色になるまで各2〜3分揚げ焼きにして取り出す。(揚げることで魚の表面が固まり、後からソースを絡めても崩れにくくなる。二度揚げするとさらに表面がカリッと仕上がり、ソースとのコントラストが際立つ)
◎タマリンド水を作る
タマリンドペースト大さじ2をぬるま湯100mlに溶かし、漉してタマリンド水を作る。(タマリンドはトレイチャアムプルーの酸味の核心。市販のタマリンドペーストが最も手軽だが、ブロック状のタマリンドをぬるま湯でほぐして漉したものはより香り豊かに仕上がる。酸味の強さはタマリンドの量で調節する)
◎クルーンペーストを炒める
ウォックにサラダ油大さじ1を中火で熱し、みじん切りにしたシャロット3個・すりおろしにんにく2片を加えて1〜2分炒める。レモングラス1本(みじん切り)・乾燥赤唐辛子2本(水で戻して刻む)を加えてさらに1〜2分炒め合わせる。(シャロットとにんにくを丁寧に炒めることでソースのベースの甘みと香りが作られる。レモングラスは加熱することで辛みが和らぎ爽やかな香りだけが残る)
◎ソースを作る
タマリンド水をウォックに加えてよく混ぜる。パームシュガー(なければきび砂糖)大さじ2・プラホック(発酵魚ペースト)小さじ1(またはナンプラー大さじ1)・オイスターソース大さじ1を加えて中火で2〜3分煮詰め、ソースにとろみをつける。(パームシュガーはタマリンドの酸味を受け止める深みのある甘みを加える。プラホックはほんの少量でソースに格段の旨みの層を与える。煮詰めてとろみが出たら魚を加えるタイミング)
◎魚をソースで絡める
揚げた魚をウォックに戻し、ソースを全体に絡めながら中火で1〜2分炒め合わせる。(魚は崩れやすいので優しく扱いながらソースを絡める。魚の表面全体がソースで均一にコーティングされた状態が理想。炒めすぎると魚が崩れるので手早く仕上げること)
◎仕上げる
薄切りにしたトマト1個・斜め切りにした青ねぎ3本を加えてさっとひと混ぜし、火を止める。(トマトは加熱しすぎず形を残すことで食感のアクセントになる。青ねぎはシャキッとした食感と色を残すために最後に加えること)
◎盛り付け

器に盛り、せん切りにした生姜・赤唐辛子の薄切り・パクチーを彩りよく散らして完成。炊きたてのジャスミンライスを添えてソースをたっぷりかけながら食べる。
料理の歴史と背景
トレイチャアムプルーはカンボジアの豊かな淡水漁業文化に深く根ざした料理です。トンレサップ湖はアジア最大級の淡水湖で、雨季には面積が乾季の数倍に拡大する独特の生態系を持ち、世界有数の淡水魚の産地として古くからカンボジアの食文化を支えてきました。アンコール王朝時代の壁画にも漁の場面が刻まれているほど魚はクメール文化に深く根付いており、トレイチャアムプルーのように魚を様々な調理法で食べる文化は何世紀にもわたって受け継がれてきました。タマリンドとヤパームシュガーを組み合わせた甘酸っぱいソースはインドとの交易を通じてもたらされたタマリンド文化がクメール在来のパームシュガー文化と融合した産物であり、カンボジアが東西の食文化の交差点に位置していたことを改めて示しています。
現代のカンボジアにおいてトレイチャアムプルーは家庭料理の定番として全土で作られており、プノンペンの市場では毎朝揚げたての魚と新鮮なタマリンドが並ぶ光景が見られます。都市部ではスーパーでタマリンドペーストが入手できるようになり手軽に作れるようになりましたが、農村部では今もタマリンドの実を直接煮出してソースを作る伝統的な方法が続いています。ポル・ポト政権の時代に多くのカンボジアの食文化が失われた後も、豊富な川魚とタマリンドという手に入りやすい食材で作れるトレイチャアムプルーは庶民の食卓に生き続けた料理のひとつです。近年は若いカンボジア人シェフたちがクメール料理の国際的な発信に取り組む中で、プラホックとタマリンドというカンボジア独自の調味料の組み合わせを持つトレイチャアムプルーは、カンボジア料理のアイデンティティを語る上で欠かせない料理として改めて注目されています。
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