ソマリアの定番バリースのレシピ
クミン・カルダモン・シナモンなど豊かなスパイスと肉の煮汁でご飯を炊き上げるソマリアの国民食バリース。インド洋交易が育んだアラブとアフリカの食文化が融合した、結婚式・祝い事に欠かせない炊き込みご飯の本格レシピを歴史とともに紹介します。
材料
- 骨付き羊肉(なければ鶏もも肉骨付き) 800g
- バスマティライス 400g
- 玉ねぎ 4個(煮込み用1個・炒め用2個・揚げ玉ねぎ用1個)
- ニンニク 7片(煮込み用4片・炒め用3片)
- 生姜 35g(煮込み用20g・炒め用15g)
- トマト 2個
- 【煮込みスパイス(ホール)】
- シナモンスティック 2本
- カルダモン 6粒
- クローブ 4粒
- 黒胡椒粒 10粒
- クミンシード 小さじ1
- ローリエ 2枚
- 【炒めスパイス(パウダー)】
- クミンパウダー 小さじ2
- コリアンダーパウダー 小さじ2
- ターメリック 小さじ1
- シナモンパウダー 小さじ1/2
- カルダモンパウダー 小さじ1/2
- パプリカパウダー 大さじ1
- カイエンペッパー 小さじ1/4
- 塩 適量
- サラダ油 大さじ6
- バターまたはギー 大さじ2
- 【トッピング】
- 松の実 大さじ3
- 干しぶどう 大さじ2
- パクチーまたはパセリ 適量
- レモン 1個
バリース(Bariis)はソマリア語でご飯を意味する言葉がそのまま料理名となった、ソマリアを代表する炊き込みご飯だ。クミン・カルダモン・シナモン・クローブ・コリアンダーなどのスパイスを効かせた羊肉または鶏肉の煮汁でバスマティライスを炊き上げ、揚げ玉ねぎと炒めた松の実・干しぶどうを散らして仕上げる。「バリース・イスククアリス(Bariis Iskukaris)」の名でも知られるこの料理は、ソマリアの結婚式・イード(ラマダン明けの祭り)・金曜礼拝後の家族の食事・来客のもてなしなど、人生のあらゆる節目に必ず登場する。スパイスの複雑な香りが一粒一粒に染み込んだ黄金色のご飯は、インド洋を渡った交易の歴史がソマリアの食卓に刻んだ最も豊かな遺産だ。
バリースの作り方
◎肉を煮込んでスパイスブロスを作る
骨付き羊肉(なければ鶏もも肉骨付き)800gを大きめの鍋に入れ、水をたっぷりかぶるまで注ぐ。強火で沸騰させてアクを丁寧にすくい取る。玉ねぎ1個(半割り)・ニンニク4片・生姜20g(薄切り)・シナモンスティック2本・カルダモン6粒・クローブ4粒・黒胡椒粒10粒・クミンシード小さじ1・ローリエ2枚・塩大さじ1を加え、蓋をして弱火で1時間〜1時間30分、肉が骨からほぐれるほど柔らかくなるまで煮込む。肉を取り出して別皿に置き、煮汁をざるで漉して600ml取り置く。(アクを丁寧に取り除くことで香り高い澄んだスパイスブロスが完成する。この煮汁がバリースの風味の核心で、水でなくこのブロスでご飯を炊くことで全く異なる深みが生まれる)
◎ベースの炒め物を作る
厚手の鍋にサラダ油大さじ3を熱し、薄切りにした玉ねぎ2個を中火で20〜25分、濃い飴色になるまでじっくり炒める。すりおろしたニンニク3片・生姜15gを加えてさらに2分炒める。トマト2個(みじん切り)を加えて5〜7分炒め煮にし、水分を飛ばす。クミンパウダー小さじ2・コリアンダーパウダー小さじ2・ターメリック小さじ1・シナモンパウダー小さじ1/2・カルダモンパウダー小さじ1/2・パプリカパウダー大さじ1・カイエンペッパー小さじ1/4を加えて弱火で1〜2分スパイスの香りを引き出す。(玉ねぎを十分な飴色になるまで炒めることが甘みの基礎。トマトの水分をしっかり飛ばすことで仕上がりのご飯がべちゃっとしない。スパイスを後から加えて弱火で炒めることで香りが最大限に引き出される)
◎バスマティライスを炊く
バスマティライス400gを洗って30分水に浸けてから水気を切る。炒めた玉ねぎベースの鍋にライスを加えて2〜3分中火で炒め、ライスに油が回ったら取り置いたスパイスブロス600mlを加えて強火で沸騰させる。沸騰したら蓋をして最弱火にし、18〜20分炊く。火を止めてそのまま10分蒸らす。(ライスを先に油で炒めることでパラパラの食感に仕上がる。スパイスブロスの量はライスの1.5倍が目安。蒸らし中は絶対に蓋を開けないこと。完成したご飯は全体が黄金色に染まりスパイスの香りが立ち上る)
◎揚げ玉ねぎと松の実を準備する
フライパンにサラダ油大さじ3を熱し、薄切りにした玉ねぎ1個を中火で15〜20分、カリカリになるまで揚げ炒めにして取り出す。同じ油に松の実大さじ3を加えて1〜2分黄金色になるまで炒め取り出す。干しぶどう大さじ2を同じ油で30秒さっと炒める。(揚げ玉ねぎはバリースのトッピングの中で最も重要な要素で、香ばしさと甘みがご飯の風味をさらに引き立てる。松の実は焦げやすいため絶えず鍋を揺すりながら炒めること)
◎仕上げて盛り付ける

盛り付けたバリース
煮込んだ肉を食べやすい大きさにほぐし、フライパンで表面をバターまたはギーで焼き直してカリッとした焼き色をつける。大きな平皿にバリースを山盛りに盛り、肉を上にのせる。揚げ玉ねぎ・松の実・干しぶどうを全体に散らす。パクチーまたはパセリのみじん切りを添え、レモンのくし切りを添えて完成だ。ソマリアでは大皿を家族全員で囲んで右手で食べるのが伝統スタイルで、チャパティまたはラフォ(ソマリアの薄焼きパン)を添えることも多い。
料理の歴史と背景
バリースの歴史を理解するにはソマリアとインド洋交易の関係を知る必要がある。紀元前後から現在のソマリア・ジブチ・エリトリアに相当する「プント国」はアラビア半島・インド・ペルシャとの季節風貿易の重要な拠点であり、乳香・没薬・象牙・金がこの地から輸出される代わりに綿織物・陶磁器・スパイスがもたらされた。バスマティライスとカルダモン・クミン・シナモンなどのスパイスはインド・アラビア半島からこの交易ルートを通じてソマリアに伝わり、地元の羊肉文化と融合することでバリースのスタイルが生まれたとされている。特に9〜13世紀にソマリア沿岸都市が黄金期を迎えたモガディシュ・ベルベラ・ゼイラは交易の一大拠点として繁栄し、アラブ・ペルシャ・インドの商人が長期滞在する中でそれぞれの食文化がソマリア料理に組み込まれていった。
現代のソマリアにおいてバリースは単なる料理を超えた社会的・宗教的な意味を持つ。イスラム教国であるソマリアではラマダン明けのイードに大量の羊が屠殺され、バリースとともに振る舞われる。この祭りの食事は家族だけでなく近隣住民・貧しい人々とも分かち合うことが義務とされており、バリースは「共同体として食べる料理」という文化的規範の体現でもある。1991年の内戦勃発以降ソマリアが長年にわたって政情不安に苦しむ中でも、バリースはディアスポラ(海外移民)コミュニティを通じてケニア・エチオピア・イギリス・スウェーデン・北米のソマリア系移民の食卓で作り続けられてきた。移住先でバリースを作ることは故郷との結びつきを保つ最も直接的な行為であり、ソマリア料理レストランが増えた2010年代以降は、バリースは世界各地でソマリア文化を代表する料理として認知されるようになっている。
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