ベトナムの定番ブンリュウのレシピ
淡水蟹の旨みと完熟トマトの酸味が溶け合う鮮やかな赤いスープに米麺を合わせるハノイの定番。本格的な蟹トマトスープ麺のレシピです。
材料
- ブン(丸い米麺・なければそうめん) 160g
- 豚骨(またはスペアリブ) 400g
- 蟹肉(缶詰可) 100g
- 豚ひき肉 50g
- 卵 2個
- トマト 3個
- シャロット 2個
- 玉ねぎ 1/2個
- タマリンドペースト 大さじ1
- マムトム(発酵エビペースト) 小さじ1
- ナンプラー 大さじ2
- 砂糖 大さじ1
- 塩 小さじ1+少々
- 白こしょう 少々
- サラダ油 大さじ1
- 青ねぎ 2本
- フライドシャロット 大さじ2
- ぬるま湯 50ml(タマリンド溶き用)
- 水 1.5リットル(スープ用)
- もやし・バナナの花(またはキャベツ)・空芯菜・ミント・ライム・青唐辛子 付け合わせ用・各適量
ブンリュウ(Bún Riêu)は、淡水蟹の旨みを凝縮したスープにトマトの酸味を重ねた、ベトナムを代表するトマトベースの麺料理です。鮮やかなオレンジ色に輝くスープの中に、蟹肉と卵を合わせてふんわりと仕上げた蟹肉団子(チャーリュウ)が浮かぶ見た目のインパクトは、フォーやブンボーフエとは全く異なるベトナム麺料理の奥深さを体現しています。マムトム(発酵エビペースト)とタマリンドが加わることでスープに重層的な旨みと酸味が生まれ、一口飲むと複雑な味わいが次々と押し寄せます。ハノイ発祥とされながらも現在はベトナム全土で愛されており、南部ではカットした揚げ豆腐や豚の血のゼリーを加えるなど地域ごとに独自の進化を遂げています。テーブルに並ぶバナナの花・もやし・空芯菜・ミントなどの薬味を好みで加えながら食べるスタイルはベトナム麺料理共通の楽しみ方です。
ブンリュウの作り方
◎スープの骨をあく抜きする
豚骨400g(または豚スペアリブ)を大きめの鍋に入れ、かぶるくらいの水を加えて強火で沸騰させる。5分ほど煮たらザルに上げ、流水でよく洗ってアクと汚れを落とす。鍋も洗っておく。(ブンリュウのスープは豚骨の旨みを土台にして蟹の風味を重ねる二層構造。下茹でを丁寧に行うことでスープの澄んだ旨みが際立つ)
◎豚骨スープを煮出す
きれいにした鍋に水1.5リットルを入れ、あく抜きした豚骨・つぶした玉ねぎ1/2個・砂糖大さじ1・塩小さじ1を加えて強火で沸騰させる。アクを丁寧にすくいながら弱火に落とし、蓋をして1時間煮込む。(玉ねぎは半分に切って直火で焼き目をつけてから加えると甘みと香りがスープに深みを与える。ブンリュウはこの豚骨ベースにさらに蟹の旨みを重ねるため、ベーススープの段階では塩加減を控えめにしておく)
◎蟹肉団子(チャーリュウ)を作る
ほぐした蟹肉(缶詰可)100g・溶き卵2個・豚ひき肉50g・みじん切りにしたシャロット2個・ナンプラー小さじ1・白こしょう少々をボウルでよく混ぜ合わせる。(蟹肉はなるべく細かくほぐして卵と均一に混ぜ合わせることで、スープに加えたときにふんわりとした食感に仕上がる。豚ひき肉を加えることで団子に適度な弾力とコクが生まれる。缶詰の蟹肉でも十分美味しく作れる)
◎トマトを炒めてスープに加える
フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、くし切りにしたトマト3個を加えて木べらで潰しながら2〜3分炒める。トマトが崩れてソース状になったら煮立った豚骨スープに加えてよく混ぜる。(トマトを先に炒めることで酸味が和らいでスープに自然に溶け込みやすくなる。生のままスープに加えても作れるが、炒めることで甘みとコクが増す。スープが鮮やかなオレンジ色に染まれば準備完了)
◎蟹肉団子をスープに加える
中火でスープをゆっくり沸騰させ、蟹肉団子のタネをスプーンで一口大にすくってスープに落とし入れる。団子が浮き上がって固まるまで2〜3分、かき混ぜずに静かに待つ。(かき混ぜると団子が崩れてしまうので、加えた後は触らないこと。スープの表面がゆっくりと沸騰している状態を保つことが団子をふんわり仕上げる鍵。全てのタネを加え終えたら弱火に落とす)
◎スープを仕上げる
ナンプラー大さじ2・タマリンドペースト大さじ1(ぬるま湯50mlで溶かして漉したもの)・マムトム(発酵エビペースト)小さじ1を加えてよく混ぜ、味を整える。(タマリンドがブンリュウに爽やかな酸味を加える。マムトムは独特の発酵臭があるが、スープに溶かすと旨みとして昇華する。苦手な場合は量を減らすか省略しても成立するが、加えることで味の深みが格段に増す)
◎麺を茹でる
ブン(丸い米麺)を袋の表示通りに茹でて冷水でしめ、水気をよく切る。(ブンはフォーより細い丸麺でブンリュウに最もよく合う。入手できない場合はそうめんや素麺で代用できる。茹でた後に冷水でしめることで麺がくっつきにくくなる)
◎盛り付け

深めの器にブンを盛り、蟹肉団子をたっぷりのせる。熱々のスープをたっぷり注ぎ、小口切りにした青ねぎ・フライドシャロットを散らす。もやし・バナナの花の薄切り(またはキャベツのせん切り)・空芯菜・ミント・ライム・青唐辛子を添えて完成。
料理の歴史と背景
ブンリュウの発祥はハノイおよびベトナム北部とされており、紅河デルタ地帯の豊かな淡水環境で採れる小さな淡水蟹(クア・ドン)を使ったことが料理の起源です。クア・ドンは田んぼや小川に生息する小さな蟹で、昔のベトナムの農村では身近な食材として親しまれてきました。この淡水蟹をすりつぶして漉した液体をスープに加えると加熱によってタンパク質が固まり、ふんわりとした蟹肉の塊がスープに浮かぶという調理の発見がブンリュウという料理の核心を生み出しました。トマトをスープに組み合わせるスタイルは20世紀以降に定着したものとされており、フランス植民地時代にトマトが広く普及した後にブンリュウのスープに取り込まれたと考えられています。
現代のブンリュウはベトナム全土で食べられるようになりましたが、北部・中部・南部でそれぞれ異なる個性を持ちます。北部ハノイのものは比較的シンプルで蟹の風味を前面に出したスタイルですが、南部ホーチミンに伝わったブンリュウは揚げ豆腐・豚の血のゼリー・えびなどを加えた豪華な構成に発展しており、同じ名前でも別の料理のような様相を呈しています。海外ではフォーやブンボーフエに比べてまだ知名度は高くありませんが、そのトマトベースの親しみやすい見た目とフレッシュハーブを合わせる食べ方の楽しさから、ベトナム料理好きの間では「もっと知られるべき一杯」として語られることの多い料理です。蟹の旨みとトマトの酸味という一見意外な組み合わせが生み出す調和の妙は、ベトナム料理が持つ多様性と創造性の豊かさを改めて教えてくれます。
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