イラン

イランの定番チェロケバブのレシピ

サフランで黄金色に染めたバスマティライスに炭火焼きの羊肉ケバブを添えるイランを代表する国民食。バターと生卵黄が溶け合う贅沢な食べ方とともに楽しむ本格レシピを、歴史とともに紹介します。

イランの定番チェロケバブのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
60 調理時間
2人前 分量
約680kcal カロリー

材料

  • バスマティライス 300g
  • 羊の挽き肉(なければ牛羊合挽き肉) 300g
  • 玉ねぎ 1/2個
  • サフラン 小さじ1/4
  • バター 大さじ3
  • じゃがいも(薄切り・タハディーグ用) 2枚
  • サラダ油 大さじ3
  • ターメリックパウダー ひとつまみ
  • 塩 大さじ1と小さじ1
  • 黒こしょう 小さじ1/2
  • ミニトマト 4個
  • 卵黄 2個
  • 湯 大さじ3(サフラン用)

チェロケバブ(چلو کباب)はペルシャ語で「米とケバブ」を意味するイランを代表する国民的料理で、バスマティライスをサフランとバターで炊き上げた黄金色のチェロ(ご飯)に、羊の挽き肉または牛羊合挽き肉に玉ねぎ・塩・こしょうだけを合わせてこねて平たい串に包んで炭火で焼き上げたコビデケバブ(Koobideh)、あるいは骨付き羊肉を漬け込んで焼いたチェンジケバブ(Chenjeh)を添え、ローストしたトマト・生卵黄・バターのひとかけらを皿の上で溶かし混ぜながら食べる、シンプルな材料から生まれる圧倒的な旨みと香りを持つペルシャ食文化の最高峰です。チェロケバブの最大の個性はサフランという世界で最も高価なスパイスを惜しみなく使って黄金色に染め上げたご飯の香りと色の圧倒的な存在感と、羊肉のみを使うことで生まれる野性的な旨みが炭火の薫香と溶け合うことで生まれるケバブの複雑な香ばしさの二つが一皿の上で出会うことにあり、これはペルシャ帝国の宮廷料理として何世紀にもわたって洗練されてきた歴史が生み出した必然的な組み合わせです。チェロケバブの決め手はコビデケバブの肉だねを十分に練ることで生まれる肉の粘りが串から外れずに炭火で焼ける適切な硬さと、タハディーグ(Tahdig)と呼ばれるご飯の底面をカリカリに焦がす伝統的な炊き方が生み出すサフランご飯の香ばしさの対比であり、この二つが揃って初めて本場テヘランやイスファハーンのケバブ専門店が提供する一皿の格調に近づきます。イランではチェロケバブはレストランの格式あるメニューから路地裏の大衆食堂まであらゆる場所で食べることができ、結婚式・ノウルーズ(イラン暦の新年)・宗教的な祝祭など特別な日のご馳走としても家族と囲む料理として国民に深く愛されており、一皿のチェロケバブにペルシャ文明の豊かさと洗練された食の美学が凝縮されています。

チェロケバブの作り方

◎サフランを準備する
サフラン小さじ1/4を乳鉢で細かく潰し、湯大さじ3に溶かして10分おく。鮮やかな黄金色のサフラン液を作っておく。(サフランはイランのホラーサーン州産のものが最高品質とされる。少量で十分な色と香りが出るため使いすぎに注意。サフランを乳鉢で潰してから湯に溶かすことで色素が最大限に引き出される)

◎チェロ(サフランライス)を炊く
バスマティライス300gを水でよく洗い、塩水(水1L・塩大さじ1)に30分浸けてから沸騰した塩水で7〜8分、芯が少し残る程度に茹でてザルに上げる。鍋の底にサラダ油大さじ3を熱し、薄切りじゃがいも2枚(またはラバシュパン)を鍋底に敷く。茹でたご飯をふんわりとのせ、ご飯の上にサフラン液の半量をかけ、バター大さじ2を散らす。蓋をアルミホイルで包んで弱火で30〜35分蒸らす。(鍋底のじゃがいもがカリカリに焼けたタハディーグ(焦げご飯)を作る伝統的な技法。タハディーグはチェロケバブの最大の楽しみのひとつで、鍋から外して皿に返すとカリカリの底面が上に来る。弱火でじっくりと蒸らすことが均一な焦げ目の条件)

◎コビデケバブの肉だねを作る
羊の挽き肉(なければ牛羊合挽き肉)300gに玉ねぎ1/2個(すりおろして水気をよく絞る)・塩小さじ1・黒こしょう小さじ1/2・ターメリックパウダーひとつまみを加える。粘りが出るまで10〜15分手でしっかりと練る。ラップをかけて冷蔵庫で30分以上休ませる。(玉ねぎの水気をしっかり絞ることが肉だねが串から外れない条件。十分に練ることで肉のタンパク質が絡み合い焼いても崩れない硬さが生まれる。冷蔵庫で休ませることでさらに肉だねが締まる)

◎ケバブを成形して焼く
平たい幅広の金属串(なければ竹串2本を並べて使う)に肉だねを細長く包みつけて成形する。魚焼きグリルまたはフライパンを強火でしっかりと熱し、ケバブを並べて片面3〜4分ずつ全面に焼き色がつくまで焼く。途中でサフラン液少量を表面に塗ると色づきが美しくなる。ミニトマト4個を串に刺して同様に焼く。(炭火の場合は遠火でじっくり焼くと外はカリッと中はジューシーに仕上がる。焼きすぎると肉が固くなるので表面に焼き色がついたら素早く返すこと)

◎盛り付ける

イランの定番チェロケバブの完成品 盛り付け画像

大きな皿にチェロを盛り、タハディーグを別皿に返して添える。ケバブを並べ、焼いたミニトマトをそえる。残ったサフラン液とバターひとかけらを熱々のご飯の上にのせ、生卵黄1個を小皿に添えて完成。ご飯にバターと卵黄とサフランを混ぜ合わせながら食べるのがイランの伝統的なスタイル。

料理の歴史と背景

チェロケバブの歴史はペルシャ帝国の宮廷料理文化に深く根ざしています。サフランはイランのホラーサーン地方で数千年にわたって栽培されてきた世界最高級のスパイスであり、古代ペルシャの宮廷では料理・薬・染料として珍重されてきた歴史があります。羊肉を串に刺して炭火で焼くケバブの技法はシルクロードを通じて中央アジア・中東・地中海世界に広まった遊牧民の食文化に起源を持ちますが、バスマティライスのサフラン炊きとケバブを組み合わせて一皿の料理として洗練したのはサファヴィー朝(1501〜1736年)時代のペルシャ宮廷料理人たちであるとされています。サファヴィー朝の首都イスファハーンはシルクロードの要衝として栄えた国際都市であり、ここで発展したチェロケバブはオスマン帝国・ムガル帝国との外交の場でも振る舞われた格式ある料理として中東・南アジア全域の食文化に影響を与えました。19世紀のカージャール朝時代にはチェロケバブはテヘランの大衆食堂でも提供されるようになり、宮廷料理から国民食へという民主化の過程を経て現在のイランの食文化の中心的な位置を占めるようになりました。

現代のイランにおいてチェロケバブはテヘラン・イスファハーン・シラーズ・タブリーズなど全国のレストラン・チェロケバブ専門店・家庭の食卓で日常的に食べることができ、格式あるレストランから路地裏の大衆食堂まであらゆる価格帯で提供されるイランの外食文化の中心的存在です。ノウルーズ(イラン暦の新年・3月21日頃)の祝祭には家族が集まってチェロケバブを囲む習慣が全国に根付いており、この料理はイラン人のアイデンティティと家族の絆を結びつける象徴的な食事として機能しています。イランの国外ではロンドン・ドバイ・トロント・ロサンゼルスなどイラン系移民コミュニティが集まる都市に多くのチェロケバブ専門店が存在し、故郷の味として移民の心の支えになっています。日本ではイラン料理・中東料理専門店でチェロケバブを提供する店が少しずつ増えており、サフランの黄金色が美しいご飯と炭火焼き羊肉の組み合わせが生み出す格調ある美しさと旨みは、炊き込みご飯と焼き物の文化に親しんだ日本人の味覚にも深く響く料理として関心が高まっています。

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