ラオスの定番ケーンノーマイのレシピ
ヤナンの葉から抽出した深緑のエキスと筍・パーデークを合わせて煮込むラオスの伝統薬草スープ。森の恵みを丸ごと味わう野趣あふれる本格レシピを、歴史とともに紹介します。
材料
- ヤナンの葉(冷凍または缶詰エキス) 20〜30枚
- 筍(水煮) 200g
- 豚バラ肉 150g
- レモングラス 2本
- パーデーク(なければナンプラー) 大さじ2
- もち米粉 大さじ2
- 塩 小さじ1
- 乾燥赤唐辛子 2本
- 水 800ml
- パクチー・青ねぎ 各適量
- もち米(カオ・ニャオ) 適量
ケーンノーマイ(ແກງໜໍ່ໄມ້)はラオス語で「竹の子のスープ」を意味するラオスを代表する薬草スープ料理で、ヤナン(ใบย่านาง)という熱帯植物の葉を手で揉んで水に溶かした深緑色のエキスをスープのベースとし、新鮮な筍・パーデーク(発酵魚醤)・レモングラス・唐辛子・もち米粉を合わせてじっくりと煮込むことで、土の香りと薬草の苦みと発酵の旨みが複雑に溶け合った野趣あふれる味わいに仕上がるラオスの伝統料理です。ヤナンの葉が生み出す深い緑色のスープはラオス料理の中でも最も視覚的に印象的な料理のひとつであり、葉に含まれるポリフェノールや抗酸化成分が古来から薬効を持つ食材として珍重されてきた背景がケーンノーマイを単なる日常食を超えた薬膳料理として位置づけています。ケーンノーマイの決め手はヤナンエキスの独特の青臭さと苦みがパーデークの発酵の旨みと溶け合うことで生まれる野性的で複雑な旨みの深さと、もち米粉がスープにもたらすとろみが全体をひとつにまとめる口当たりのなめらかさであり、この二つが揃って初めて本場ルアンパバーンや北部山岳地帯の家庭料理の味に近づきます。ラオス北部では筍の収穫期に合わせて大鍋でケーンノーマイを作り家族や近隣と分け合う習慣が今も続いており、森と川と土地の恵みを素直に皿の上に表現するラオスの食文化の本質を最も直接的に体験できる料理として国内外で高い評価を得ています。
ケーンノーマイの作り方
◎ヤナンエキスを作る
ヤナンの葉(生・なければ冷凍品または缶詰エキス)20〜30枚を水500mlとともにボウルに入れ、手で強く揉みながら葉の成分を水に溶かし出す。深緑色になったら葉を絞って取り除き、エキスだけを漉してとっておく。(ヤナンはタイ・ラオス食材店で冷凍または乾燥品が入手できる。缶詰エキスを使う場合は水で2倍に薄めて使う。ヤナンエキスはケーンノーマイの色と風味の核心であり省略できない。葉を強く揉むほど濃いエキスが取れる)
◎筍の下処理をする
生筍(なければ水煮筍)200gを薄切りまたは短冊切りにする。生筍を使う場合は米のとぎ汁で20〜30分下茹でしてアクを抜く。水煮筍はそのまま使える。(ラオスでは細い若竹の筍を丸ごと使うのが伝統スタイル。日本では水煮筍が最も入手しやすく手軽に作れる。生筍のほうが香りと食感が格段に優れるので旬の時期に作る場合は生を選ぶこと)
◎スープを作る
鍋にヤナンエキス500mlと水300mlを合わせて中火で沸騰させる。レモングラス2本(叩いて香りを出す)・パーデーク大さじ2(なければナンプラー大さじ2)・塩小さじ1を加える。筍・豚バラ肉150g(一口大に切る)を加えて中火で15分煮込む。もち米粉大さじ2を水大さじ3で溶いてスープに加え、とろみがつくまで混ぜながら5分煮る。(パーデークの塩気が強いので塩は味を見ながら加えること。もち米粉のとろみがスープ全体をまとめる役割を担う。とろみが強すぎる場合は水を足して調整する)
◎仕上げる
乾燥赤唐辛子2本をそのまま加えて弱火で5分煮る。味を確認してパーデークまたは塩で調整する。(唐辛子は種ごと入れると辛みが強くなる。ラオスの家庭では非常に辛く仕上げることが多いが、好みに合わせて量を調整すること。仕上げにきのこ類・いんげん・オクラを加えてもよい)
◎盛り付け

深めの器にケーンノーマイをたっぷり盛る。パクチーの葉・青ねぎの小口切りを散らし、追加の唐辛子フレークをそえて完成。もち米(カオ・ニャオ)とともに食べるのがラオスの定番スタイル。
料理の歴史と背景
ケーンノーマイの起源はラオス北部とタイ東北部にまたがる山岳地帯の少数民族の食文化に求められます。熱帯雨林に自生するヤナンの葉は古くから薬効植物として知られており、解熱・解毒・滋養強壮の効能があるとされてきたことから、薬膳料理としての側面を持つケーンノーマイは病人の回復食や体力を消耗した農作業の後の滋養食として重宝されてきました。筍は東南アジアの山岳地帯で雨季に大量に生える食材であり、保存の効かない筍を新鮮なうちに大量消費するための知恵としてケーンノーマイのような煮込み料理が発展したとされています。パーデークとの組み合わせはラオスの食文化の根幹であり、山の食材であるヤナンと筍に川の食材であるパーデークが加わることでラオスの山と川の食文化が一皿の中に凝縮されています。ラオス北部のルアンパバーンやサワンナケートでは今も筍の収穫期になると各家庭でケーンノーマイを仕込む習慣が残っており、隣家に分け合いながら食べる共食の文化とともに受け継がれています。
現代のラオスにおいてケーンノーマイはビエンチャンやルアンパバーンの市場・食堂で日常的に食べることができ、特に雨季の筍の収穫期には屋台や食堂のメニューに必ず登場する季節の料理として親しまれています。ラオスの食文化に詳しい外国人旅行者の間ではケーンノーマイはラオス料理の中で最も「本物のラオスの味」に近い料理のひとつとして語られることが多く、ヤナンエキスの深緑色と薬草の苦みを含む複雑な風味はオーラムと並んでラオス料理の独自性を最も強く体現する料理として評価されています。日本ではヤナンの葉の入手が難しいため家庭での再現が限られていましたが、タイ・ラオス食材専門店での取り扱いが増えるとともに本格的なケーンノーマイへの関心も高まっており、森の薬草と川の発酵の旨みが溶け合う野趣あふれる味わいは、山菜料理や薬膳に親しんだ日本人の味覚にも深く響く料理として注目されています。
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