マレーシアの定番ナシカンダーのレシピ
チキンカレーとダールを白飯に豪快に注ぐ「バンジル(洪水)」スタイルが最大の魅力。ペナン発祥のインド系ムスリム料理を、市販カレーペーストを活かした家庭向けレシピと歴史とともに紹介します。
材料
- 白いご飯 2人前
- 鶏もも肉 300g(カレー用)
- 鶏手羽元 4本(フライ用)
- えび(中サイズ) 8尾
- 赤レンズ豆 80g
- 玉ねぎ 1個
- トマト 1個
- ニンニク 5片
- 生姜 15g
- レモングラス 2本
- シナモンスティック 1本
- スターアニス 2個
- カルダモン 3粒
- カレーパウダー 大さじ3
- ターメリックパウダー 小さじ2
- チリパウダー 小さじ1
- クミンシード 小さじ1
- ヤシ乳 200ml
- サンバルペースト 大さじ2
- ホムデン(小玉ねぎ) 2個
- 砂糖 小さじ1
- 塩 適量
- サラダ油 適量
- 赤玉ねぎ・きゅうり・ゆで卵 各適量
ナシカンダー(Nasi Kandar)はマレーシアのペナン島に暮らす南インド系タミル・ムスリム移民が生み出した、白いご飯の上に複数のカレーおかず・揚げ物・煮込み料理を自由に組み合わせて盛り合わせ、最後に異なる複数のカレーソースを全体にたっぷりと注ぎかけて食べるペナン発祥のマレーシアを代表するご飯料理です。「カンダー」とは天秤棒を意味するタミル語に由来しており、かつてナシカンダーの売り子が天秤棒の両端にご飯とカレーの鍋をぶら下げて街を歩き回りながら売り歩いた歴史がそのまま料理名として定着したものです。ナシカンダーの最大の個性は複数の異なるカレーソースをご飯全体に注ぎかける「バンジール(banjir・洪水)」と呼ばれる食べ方にあり、チキンカレー・魚カレー・エビカレー・ダルカレーなど数種類のソースが混ざり合うことで単独のカレーでは生まれない複雑で深みのある味わいが皿の上で生まれます。ナシカンダーの決め手は長時間煮込まれて旨みが凝縮したカレーソースの深みと、複数のソースが混ざり合うことで生まれる予測不能な味の組み合わせの豊かさであり、この二つが揃って初めて本場ペナンのナシカンダー専門店が提供する24時間営業の食堂の味に近づきます。ペナンでは深夜から早朝にかけても営業を続けるナシカンダー専門店が多く、仕事帰りの市民・タクシー運転手・観光客が夜中に列をなして鍋の前に立つ店主におかずを指さしながら注文する光景はペナンの夜の食文化を象徴する風景として世界中の旅行者の記憶に深く刻まれています。
ナシカンダーの作り方
◎チキンカレーを作る
レモングラス2本(叩く)・シナモンスティック1本・スターアニス2個・カルダモン3粒を鍋にサラダ油大さじ3を熱して炒める。玉ねぎ1個(みじん切り)を加えて黄金色になるまで10分炒め、ニンニク3片・生姜15g(すりおろし)を加えてさらに2分炒める。カレーパウダー大さじ3・ターメリックパウダー小さじ1・チリパウダー小さじ1を加えて油が浮くまで炒め、鶏もも肉300g(一口大)・トマト1個(ざく切り)・ヤシ乳200ml・水200ml・塩小さじ1を加えて蓋をして弱火で25〜30分煮込む。(カレーパウダーを油で十分に炒めることでスパイスの香りが最大限に引き出される。ヤシ乳を加えた後は沸騰させると分離するため必ず弱火にすること)
◎フライドチキンを作る
鶏手羽元4本にターメリックパウダー小さじ1/2・塩小さじ1・カレーパウダー小さじ1を揉み込んで15分置く。170℃の油でこんがりきつね色になるまで8〜10分揚げる。(フライドチキンはナシカンダーの定番トッピング。揚げたての香ばしさがカレーソースに浸かって柔らかくなる食感の変化もナシカンダーの醍醐味のひとつ)
◎エビのサンバル炒めを作る
えび(中サイズ・殻付き)8尾の殻をむく。フライパンにサラダ油大さじ2を熱し、サンバルペースト大さじ2・ホムデン2個(薄切り)を炒める。えびを加えて火が通るまで2〜3分炒め、砂糖小さじ1・塩少々で味を調える。(サンバルの甘辛い香りとえびの旨みが合わさることでナシカンダーの皿に深みが加わる。サンバルペーストは市販品で十分美味しく作れる)
◎ダルを作る
赤レンズ豆80gを水300mlとともに鍋に入れ、ターメリックパウダー小さじ1/2・塩小さじ1/2を加えて豆が溶けるまで20分煮る。別鍋にサラダ油大さじ1を熱してクミンシード小さじ1・ニンニク2片(薄切り)・乾燥赤唐辛子1本を炒めて香りを出し、煮溶かした豆に加えて混ぜる。(ダルはナシカンダーのソースの中で最もまろやかな味わいを担い、辛いカレーとのバランスを整える役割を果たす)
◎盛り付ける

深めの皿に白いご飯をこんもりと盛る。フライドチキン・エビのサンバル炒めを横に並べ、チキンカレーのソースとダルをご飯全体に惜しみなく注ぎかける。好みで生の赤玉ねぎ・きゅうりの薄切り・ゆで卵を添えて完成。複数のカレーソースが混ざり合ったご飯をスプーンですくいながら食べるのがナシカンダーの定番スタイル。
料理の歴史と背景
ナシカンダーの歴史は19世紀後半にペナン島へ渡ってきた南インド系タミル・ムスリム移民の食文化に始まります。天秤棒(カンダー)にご飯とカレーの鍋をぶら下げて街を歩き回りながら売り歩いた行商スタイルが料理名の由来であり、当時のペナンの港湾労働者・ゴム農園の労働者・商人たちの胃袋を支えた庶民の食事として発展しました。20世紀に入るとペナン市内に固定店舗のナシカンダー食堂が増えはじめ、24時間営業を続ける店が出現したことでタクシー運転手・夜勤労働者・深夜帰宅の市民の定番食として定着しました。複数のカレーソースをご飯にかけ回す「バンジール」スタイルはペナンのナシカンダー食堂が生み出した独自の食文化であり、インド本土のビリヤニやタリーとは明確に異なるペナンだけの食体験として国内外の食通から高い評価を受けています。ペナンの老舗ナシカンダー店の中には100年以上の歴史を持つ店も存在し、初代から受け継がれたカレーの配合が各店の最大の秘密として守られています。
現代のマレーシアにおいてナシカンダーはペナンを中心に全国で食べることができ、特にペナンのジョージタウン旧市街に集中する老舗ナシカンダー店は地元民・観光客双方から絶大な支持を集めています。2012年にユネスコがペナンのジョージタウンを世界遺産に登録した際にナシカンダーはチャークイティオ・アッサムラクサとともにペナン食文化の象徴として国際的に再評価され、世界各国のフードメディアから「人生に一度は食べるべきご飯料理」として紹介されるようになりました。クアラルンプールでもペナン出身のオーナーが経営するナシカンダー専門チェーンが急成長しており、首都圏の食文化においても確固たる地位を築いています。日本ではマレーシア料理専門店でナシカンダーを提供する店が少しずつ増えており、複数のカレーソースが混ざり合う味の奥深さと自由にトッピングを組み合わせて食べるスタイルの楽しさは、カレーライス文化に親しんだ日本人の味覚にも直感的に理解しやすい料理として関心が高まっています。
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