カンボジアの定番サムローマチューのレシピ
タマリンドとレモングラスが香る爽やかな酸味スープに魚・えび・野菜を煮込むカンボジアの家庭料理。本格的な作り方を詳しく紹介します。
材料
- 白身魚(鱈・鯛・スズキなど) 200g
- タマリンドペースト 大さじ2
- ぬるま湯 150ml(タマリンド溶き用)
- レモングラス 2本(クルーン用)
- ガランガル 15g(クルーン用)
- ターメリック 5g(またはターメリックパウダー小さじ1/2)
- シャロット 3個(クルーン用)
- にんにく 2片(クルーン用)
- 乾燥赤唐辛子 2本
- プラホック(発酵魚ペースト) 小さじ1.5
- ナンプラー 大さじ1.5+仕上げ用・適量
- 砂糖 大さじ1
- 塩 少々
- 白こしょう 少々
- トマト 2個
- いんげん 8本
- もやし ひとつかみ
- さといも茎(またはセロリ) 80g
- コブミカンの葉 3〜4枚+飾り用・適量
- サラダ油 大さじ1
- 水 1リットル
- 青ねぎ 2本
- パクチー 適量
- ライム 1/2個(仕上げ調整用)
- ジャスミンライス 適量
サムローマチュー(សម្លម្ជូរ)は「酸っぱいスープ」を意味するカンボジアを代表する家庭料理で、タマリンドの爽やかな酸味を骨格にレモングラス・プラホック・野菜を組み合わせた滋味深いスープです。「サムロー」はカンボジア語でスープ全般を指す総称であり、「マチュー」は酸っぱさを意味します。隣国ベトナムのカインチュア・タイのゲーンソム・フィリピンのシニガンなど東南アジア各国に同系統の酸味スープが存在しますが、サムローマチューはプラホックの発酵の旨みとクルーンペーストのハーブの香りという二つのカンボジア独自の要素によって明確に異なる個性を放ちます。具材は季節や地域によって自由度が高く、川魚・えび・豚肉・鶏肉のいずれでも作られますが、トンレサップ湖に近い地域では淡水魚を使うスタイルが最も伝統的です。暑い日でも食欲を刺激するタマリンドの酸味と、野菜の豊かな旨みが一杯のスープに溶け込んだサムローマチューは、カンボジアの家庭の食卓において炊きたてのジャスミンライスとともに毎日食べられる料理です。
サムローマチューの作り方
◎クルーンペーストを作る
レモングラス2本(薄切り)・ガランガル15g(薄切り)・ターメリック5g(またはターメリックパウダー小さじ1/2)・シャロット3個・にんにく2片・乾燥赤唐辛子2本をすり鉢に入れ、なめらかなペースト状になるまでしっかりすりつぶす。(サムローマチューのクルーンはスープの香りの骨格を作る。ターメリックを加えることでスープにほのかな黄みが生まれ、タマリンドのオレンジ色と溶け合って美しい色合いになる)
◎ペーストを炒める
鍋にサラダ油大さじ1を中火で熱し、クルーンペーストを加えて2〜3分炒める。香りが立ってペーストの水分が飛び、油と分離してきたら次の工程へ進む。(ペーストをしっかり炒めることで生臭さが消えスパイスの香りが最大限に引き出される。焦げないよう木べらで絶えず混ぜながら炒めること)
◎タマリンド水を作る
タマリンドペースト大さじ2をぬるま湯150mlに溶かし、漉してタマリンド水を作る。(タマリンドはサムローマチューの酸味の核心。市販のタマリンドペーストが最も手軽だが、ブロック状のタマリンドをぬるま湯でほぐして漉したものはより香り豊かに仕上がる。酸味の強さはタマリンドの量で調節する)
◎スープを作る
炒めたペーストの鍋に水1リットルを加えてよく混ぜ、強火でひと煮立ちさせる。タマリンド水を加えてよく混ぜ、プラホック(発酵魚ペースト)小さじ1.5・ナンプラー大さじ1.5・砂糖大さじ1・塩少々を加えてアクを丁寧にすくいながら弱火で10分煮込む。(プラホックがサムローマチューをカインチュアやゲーンソムと根本的に異なるスープに仕上げる要。加熱することで発酵臭が和らぎ深い旨みとして溶け込む。プラホックが苦手な場合はナンプラーを増量して代用できるが、旨みの深さは変わる)
◎魚を加える
白身魚(鱈・鯛・スズキなど)200gをぶつ切りにし、塩・白こしょう各少々をまぶして5分おく。スープに加えて中火で5〜6分、魚に完全に火が通るまで静かに煮る。(魚は煮すぎると崩れやすくなるので、火が通ったらすぐに次の工程へ進む。えびを使う場合は色が変わったら即座に引き上げる)
◎野菜を加える
斜め切りにしたトマト2個を加えて2分煮る。いんげん8本(4cm長さに切る)・もやしひとつかみを加えてさっとひと煮立ちさせる。斜め切りにしたさといも茎(またはセロリ)80gを加えてひと混ぜし、火を止める。(野菜は食感を残すために入れるタイミングをずらす。さといも茎は独特のシャキシャキとした食感がサムローマチューに欠かせないアクセントになる。入手できない場合はセロリで代用できる)
◎仕上げる
ナンプラーで最終的な塩加減を整え、酸味が足りなければタマリンドペーストまたはライム果汁を少量加えて調整する。コブミカンの葉3〜4枚を葉脈を取り除いてちぎって加え、ひと混ぜする。(サムローマチューは酸味・甘み・旨みの三つのバランスが命。酸っぱすぎず甘すぎず、それでいてタマリンドの爽やかな酸味がしっかり感じられる状態が理想。最後の味見を丁寧に行うこと)
◎盛り付け

深めの器にスープをたっぷり注ぎ、魚と野菜を美しく盛り付ける。コブミカンの葉のせん切り・小口切りにした青ねぎ・パクチーをたっぷりのせて完成。炊きたてのジャスミンライスを添えて一緒に食べる。
料理の歴史と背景
サムローマチューはカンボジアの食文化の最も古い層に根ざした料理であり、タマリンドを酸味料として使う調理の習慣はアンコール王朝時代にまで遡るとされています。タマリンドはインド原産の豆科の植物で、インドとの交易を通じてカンボジアに持ち込まれた後、トンレサップ湖やメコン川の豊富な淡水魚と組み合わさることで独自の酸味スープ文化が育まれました。東南アジア各国に同系統の酸味スープが広く存在することは、この地域全体に広がった共通の食の知恵を示しており、熱帯の暑い気候の中で食欲を維持するためにタマリンドの爽やかな酸味が果たした役割の大きさを物語っています。カンボジアのサムローマチューがその他の国の酸味スープと根本的に異なるのはプラホックの存在で、発酵魚ペーストが加わることでスープに他では再現できない旨みの深みが生まれます。
現代のカンボジアにおいてサムローマチューはサムローコーコー(野菜スープ)と並ぶ最も日常的な家庭料理のひとつで、プノンペンから農村部まで全土の食卓に毎日のように登場します。具材の組み合わせは地域・季節・家庭によって自由度が高く、トンレサップ湖沿岸では淡水魚のなまずや雷魚を使うスタイルが伝統的ですが、沿岸部ではえびやイカを使うスタイルも広く見られます。ポル・ポト政権による壊滅的な文化破壊(1975〜1979年)の時代にも、野菜と魚という手に入りやすい食材で作れるサムローマチューは農村部で作り続けられ、カンボジアの食の記憶を守り続けた料理のひとつです。近年は若いカンボジア人シェフたちがクメール料理の国際的な発信に取り組む中で、サムローマチューはプラホックとタマリンドというカンボジア独自の調味料の組み合わせを体現する料理として改めて注目されています。タマリンドの酸味が食欲を刺激し、プラホックの旨みが体に染み渡るこの一杯は、カンボジアという国の食文化の豊かさを最もシンプルな形で伝えてくれます。
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