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マレーシアの定番アッサムペダスのレシピ

タマリンドの酸みとサンバルの辛みが溶け合ったスープで魚をじっくり煮込むマレーシアを代表する魚料理。ジョホール発祥の酸辛い本格レシピを、歴史とともに紹介します。

マレーシアの定番アッサムペダスのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
35 調理時間
2人前 分量
約320kcal カロリー

材料

  • 白身魚(鯛・サバ・スズキなど) 300g
  • タマリンドペースト 大さじ3
  • 乾燥赤唐辛子 5本
  • レモングラス 2本
  • ガランガル 15g
  • ホムデン(小玉ねぎ) 5個
  • ニンニク 3片
  • ブラチャン(エビペースト) 大さじ1
  • ターメリックパウダー 小さじ1/2
  • 砂糖 大さじ1
  • 塩 小さじ1
  • サラダ油 大さじ3
  • オクラ 4本
  • ミニトマト 6個
  • 長唐辛子 2本
  • 水 300ml
  • パクチー・青唐辛子・ライム 各適量

アッサムペダス(Asam Pedas)はマレー語で「酸っぱくて辛い」を意味するマレーシアを代表する魚の煮込み料理で、タマリンドの濃厚な酸みを核心としたスープにサンバル・レモングラス・ガランガル・ターメリックを合わせて煮立て、白身魚・エイ・サバなどの魚をじっくりと煮込むことで魚の旨みがスープに溶け出しスープの酸みと辛みが魚の身に深く染み込んだ唯一無二の複雑な美味しさに仕上がる、マレーシアのジョホール州とマラッカ州を中心に全国で愛されている国民的魚料理です。アッサムペダスの最大の個性はタマリンドの有機酸が持つ深みのある酸みが単なる酸っぱさではなく旨みと甘みを伴う複雑な酸味として機能することにあり、レモンやライムの酸みとは根本的に異なるタマリンド独自の発酵に近い酸みがサンバルの辛みと溶け合うことで東南アジアの魚料理の中でも際立った個性を放っています。アッサムペダスの決め手はタマリンドペーストの質と量が生み出すスープの酸みの深さと、ブラチャン(エビペースト)の発酵の旨みが隠し味として全体を底から支えることで生まれる味の重層感であり、この二つが揃って初めて本場ジョホールバルやマラッカの食堂で受け継がれてきた家庭料理の味に近づきます。マレーシアではアッサムペダスは家庭料理の王道として母から娘へと代々レシピが受け継がれる料理であり、各家庭・各州によってタマリンドの量・辛さの強さ・使う魚の種類・加える野菜の組み合わせが微妙に異なる無数のバリエーションが存在することがこの料理の豊かさと奥深さを象徴しています。白いご飯とともに食べるのが定番で、スープをご飯に染み込ませながら食べることで生まれる酸み・辛み・旨みの一体感はマレーシアの家庭の食卓の幸福を体現した料理として国民に深く愛されています。

アッサムペダスの作り方

◎タマリンド液を作る
タマリンドペースト大さじ3を湯200mlに溶かしてよく混ぜ、ザルで漉して種と繊維を取り除いたタマリンド液を用意する。(タマリンドペーストはアジア系食材店で入手できる。濃度はスープの酸みの強さを決定づけるので量は好みに合わせて調整すること。タマリンドが多いほど酸みが強くなり本場のジョホールスタイルに近づく)

◎スパイスペーストを作る
乾燥赤唐辛子5本(水で戻す)・レモングラス(白い部分)2本・ガランガル15g・ホムデン(小玉ねぎ)5個・ニンニク3片・ブラチャン(エビペースト)大さじ1をミキサーまたはすり鉢でなめらかなペースト状にする。(ブラチャンはアッサムペダスの旨みの隠し味であり省略できない。炒めることで発酵臭が旨みに変わる。乾燥赤唐辛子の量で辛さを調整すること)

◎ベーススープを作る
鍋にサラダ油大さじ3を熱し、スパイスペーストを中火で7〜8分、香りが立って油が浮いてくるまでしっかりと炒める。ターメリックパウダー小さじ1/2を加えてさらに1分炒める。タマリンド液200ml・水300ml・砂糖大さじ1・塩小さじ1を加えて沸騰させ、5分煮立てる。(スパイスペーストを十分に炒めることがアッサムペダスのスープの深みを決定づける最も重要な工程。油が分離して浮いてくるまでしっかり炒めること。味見をしてタマリンドの酸み・塩気・甘みのバランスを調整する)

◎魚と野菜を加えて煮込む
白身魚(鯛・サバ・スズキなど)300gを一口大の筒切りにしてスープに加える。オクラ4本・ミニトマト6個・長唐辛子2本を加えて蓋をして中火で8〜10分、魚に完全に火が通るまで煮込む。(魚は煮すぎると身が崩れるので火が通ったらすぐに火を止めること。オクラはアッサムペダスにとろみを加える役割も担う。マレーシアではエイ(ikan pari)を使うスタイルも定番で、エイの独特の風味がタマリンドの酸みと特によく合う)

◎盛り付け

マレーシアの定番アッサムペダスの完成品 盛り付け画像

深めの器にアッサムペダスをスープごとたっぷりと盛る。パクチーの葉・薄切りにした青唐辛子を散らし、ライムのくし切りを添えて完成。白いご飯とともにスープをご飯に染み込ませながら食べるのがマレーシアの定番スタイル。

料理の歴史と背景

アッサムペダスの起源はマレー半島南部のジョホール州とマラッカ州の沿岸漁村の食文化に求められます。マレー半島の沿岸部では古来から豊富な海産物が食卓の中心にあり、その日に水揚げされた新鮮な魚を保存性の高いタマリンドと唐辛子とともに煮込むという調理法は熱帯の気候の中で食材を長持ちさせるための生活の知恵から生まれたとされています。タマリンドはインド亜大陸原産の植物ですが数世紀にわたる交易の歴史の中でマレー半島に持ち込まれ、在来のサンバル文化・レモングラスやガランガルなどのハーブ文化と融合することでアッサムペダスというマレー独自の酸辛い魚料理として発展しました。ジョホール州のアッサムペダスは特に有名でありジョホールバルの家庭料理の象徴として語られることが多く、スルタン(王家)の宮廷料理にも登場したとされる記録があることからアッサムペダスが単なる庶民の料理を超えたマレー食文化の重要な位置を占めてきた歴史が伺えます。マラッカ州のアッサムペダスはポルトガル・オランダ・イギリスと複数の植民地支配を経験したマラッカの多文化的な歴史を反映してより複雑なスパイス構成を持つスタイルが多く、同じ料理でありながら州によって個性が明確に異なる点がアッサムペダスの豊かさを示しています。

現代のマレーシアにおいてアッサムペダスはジョホールバル・マラッカ・クアラルンプールなど全国の食堂・ホーカーセンター・家庭で広く食べることができ、特に週末の家族の食卓では大鍋でアッサムペダスを作って白いご飯とともに囲む光景が今も各地で続いています。ジョホール州ではアッサムペダスは州を代表する郷土料理として観光局が積極的にプロモーションしており、ジョホールバルを訪れる旅行者にとっての必食料理として定着しています。マレーシア政府が2023年にアッサムペダスをマレーシアの国家無形文化遺産として登録したことで料理の文化的重要性が改めて公式に認定されており、次世代への伝承と国際的な普及に向けた取り組みが進んでいます。日本ではマレーシア料理専門店でアッサムペダスを提供する店が少しずつ増えており、タマリンドの深みのある酸みとサンバルの辛みが溶け合った複雑なスープの味わいは、酸味の効いた煮魚料理に親しんだ日本人の味覚にも深く響く料理として関心が高まっています。

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