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マレーシアの定番バクテーのレシピ

豚スペアリブを漢方薬草と胡椒でじっくり煮込むマレーシアの福建系中国人が生んだ薬膳スープ。揚げ豆腐とともに楽しむ本格レシピを紹介します。

マレーシアの定番バクテーのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
130 調理時間
2人前 分量
約520kcal カロリー

材料

  • 豚スペアリブ 600g
  • バクテー用ハーブパック 1袋(市販品)
  • にんにく 1玉(皮ごと)
  • 白胡椒(粒) 大さじ2(追加分)
  • 生醤油(ライトソイソース・なければ薄口醤油) 大さじ2
  • 黒醤油(プトヒタム・なければ濃口醤油小さじ2) 小さじ1
  • 砂糖 小さじ1
  • 塩 小さじ1
  • 水 1.5リットル
  • 豆腐泡(揚げ豆腐) 6〜8個
  • ナンプラー(または塩) 仕上げ用・適量
  • 青ねぎ 2本
  • 白胡椒(粉) 仕上げ用・少々
  • 生姜 2枚(下茹で用)
  • ねぎの青い部分 1本(下茹で用)
  • 油条(中国式揚げパン・なければフランスパン) 2本
  • 刻み唐辛子 小皿1杯
  • にんにく醤油(にんにくのみじん切り+醤油) 小皿1杯
  • 黒醤油 ディップ用・小皿1杯
  • プーアル茶またはウーロン茶 適量

バクテー(肉骨茶・Bak Kut Teh)は「肉骨のお茶」を意味するマレーシアを代表する福建系中国人のスープ料理で、豚スペアリブを大量の白胡椒と漢方薬草・にんにくとともに長時間煮込んだ滋養あふれる一杯です。「バク」は豚肉、「クテー」は骨、「テー」はお茶を意味しますが、実際には茶葉を使うのではなく濃いプーアル茶またはウーロン茶を一緒に飲みながら食べるスタイルが「お茶」の名前の由来です。マレーシアのセランゴール州クラン(Klang)発祥の白濁した白胡椒ベースのクランスタイルと、醤油と八角を効かせた濃い色のクアラルンプールスタイルの二つが並び立ち、どちらが本家かについては今も両陣営の間で熱い議論が交わされています。19世紀後半から20世紀初頭にかけてマレー半島の港湾労働者として渡ってきた福建省出身の中国人移民が体力回復のために豚骨と薬草を煮込んで食べたのがバクテーの始まりとされており、滋養強壮のための食事が今やマレーシアを代表するソウルフードに育ちました。揚げ豆腐・油条(中国式揚げパン)をスープに浸しながら食べるスタイルと、黒醤油・刻み唐辛子・にんにく醤油という三つのタレで味を変えながら食べるスタイルが合わさって、バクテーの朝食は一杯のスープをめぐる豊かな時間になります。

バクテーの作り方

◎スペアリブをあく抜きする
豚スペアリブ600gを大きめの鍋に入れ、かぶるくらいの水と生姜2枚・ねぎの青い部分1本を加えて強火で沸騰させる。5〜6分煮たらザルに上げ、流水でよく洗ってアクと汚れを落とす。鍋も洗っておく。(この下茹での工程を丁寧に行うことでスープの透明感と雑味のないクリアな旨みが生まれる。バクテーのスープは澄んだ白濁が理想で、下茹ではその最初の重要な一手。骨付きのスペアリブを使うと骨髄から深い旨みが出る)

◎バクテーハーブパックを準備する
市販のバクテー用ハーブパック1袋(クコの実・党参・当帰・桂皮・八角・陳皮などを含む)を用意する。市販品がない場合はクローブ4粒・八角2個・桂皮1かけ・クコの実大さじ1・白胡椒(粒)大さじ2をお茶パックに詰めて自家製ハーブパックを作る。(バクテー用のハーブパックはアジア食材店や中国系食材店で入手できる。漢方薬草の配合がバクテーの薬膳としての効能と独特の香りを決定づける。市販品を使うことで本格的な味を手軽に再現できる)

◎スープを煮込む
きれいにした鍋にあく抜きしたスペアリブ・水1.5リットル・つぶしたにんにく1玉(皮ごと)・バクテーハーブパック・白胡椒(粒)大さじ2(追加)・砂糖小さじ1・塩小さじ1を入れて強火でひと煮立ちさせる。アクを丁寧にすくったら弱火に落とし、蓋をして1時間30分〜2時間じっくり煮込む。(にんにくは1玉丸ごと皮ごと使うことがバクテーの大きな特徴。長時間煮込むことでにんにくの刺激が消えてまろやかな甘みだけが残る。白胡椒はクランスタイルの最大の特徴であり、大量に使うことでスープに独特の辛みと清涼感が生まれる)

◎醤油で色と旨みを加える
生醤油(ライトソイソース・なければ薄口醤油)大さじ2・黒醤油(プトヒタム・なければ濃口醤油小さじ2)小さじ1を加えてよく混ぜ合わせ、さらに30分煮込む。(生醤油は塩気と旨みを加え、黒醤油はほんのりとした深みと色を加える。クランスタイルは醤油を控えめにしてスープを白濁させるのが特徴。クアラルンプールスタイルに近づけたい場合は黒醤油を大さじ1に増やしてスープを濃い色に仕上げる)

◎豆腐泡を加える
豆腐泡(揚げ豆腐)6〜8個を熱湯でさっとゆでて油を落とし、スープに加えて15〜20分煮込む。(豆腐泡はスポンジ状の内部にバクテーのスープが染み込んでスープのもう一つの主役になる。スペアリブより先にスープに加えると煮崩れるため、スペアリブが柔らかくなってから加える)

◎仕上げる
ハーブパックを取り出す。スープをナンプラー(または塩)で最終的な塩加減を整える。(スープは煮込むにつれて水分が蒸発して塩辛くなるため、最後に必ず味見して調整する。スペアリブは骨からほろりと外れる程度まで柔らかく煮えているのが理想の状態)

◎付け合わせを準備する
油条(中国式揚げパン)2本を食べやすい長さに切る。青ねぎ2本を小口切りにする。刻み唐辛子・にんにく醤油(にんにくのみじん切りを醤油に漬けたもの)・黒醤油をそれぞれ小皿に用意する。(油条はバクテーに欠かせない付け合わせで、スープに浸してふやかしながら食べるのがマレーシア流。入手できない場合はフランスパンをトーストしたものや揚げパンで代用できる。黒醤油はスペアリブを浸して食べるディップとして使う)

◎盛り付け

マレーシアの定番バクテーの完成品 盛り付け画像
土鍋または深めの器にスペアリブと豆腐泡を美しく盛り、熱々のスープをたっぷり注ぐ。青ねぎと白胡椒をひとふりして完成。油条・刻み唐辛子・にんにく醤油・黒醤油を添えて、濃いプーアル茶またはウーロン茶と一緒に食べる。

料理の歴史と背景

バクテーの起源は19世紀後半から20世紀初頭にかけてマレー半島のクラン港やシンガポールの港湾で肉体労働に従事していた福建省出身の中国人移民に求められます。重労働で消耗した体を回復させるために豚骨と漢方薬草・胡椒を一緒に煮込んで食べたのがバクテーの始まりとされており、中国伝統医学における薬食同源の思想がこの料理の根幹にあります。クランが「バクテー発祥の地」を自称する根拠は1900年代初頭の記録にあり、クランの福建系コミュニティが白胡椒を大量に使うスタイルを確立してバクテー文化を育てたという歴史的な経緯はマレーシアの食文化研究者の間でも広く認められています。シンガポールのバクテーとの違いはスパイスの配合にあり、マレーシアのクランスタイルが白胡椒を主体にするのに対してシンガポールスタイルはより多くの漢方薬草を使い複雑な薬膳の香りが前面に出るという特徴があります。マレーシアとシンガポール双方がバクテーの本家を主張する文化的な議論は今も続いており、2009年にマレーシア政府がバクテーをマレーシアの食文化遺産として公式に認定したことはシンガポールとの間で外交問題になりかけたという逸話も残っています。

現代のマレーシアにおいてバクテーはクランが聖地として特別な地位を占めており、週末になると各地からバクテー目当ての食通がクランに集まり老舗の行列に並ぶ光景が見られます。クランの名店は昼過ぎには売り切れることも珍しくなく、早朝から大鍋でスペアリブを煮込む老舗店の漢方の香りがクランの街に漂う光景はこの街の朝の原風景として定着しています。クアラルンプールやペナンにも多くのバクテー専門店が存在し、それぞれの店が独自のハーブ配合と煮込み時間を守ることで差別化を図っています。近年は日本でもマレーシア料理への関心の高まりとともにバクテーを提供する専門店や料理教室が都市部に登場しており、市販のバクテーハーブパックを使えば家庭でも本格的な味を再現できることが知られるようになっています。漢方薬草の独特の香りと白胡椒の清涼な辛みが溶け合うスープは、薬膳料理への関心が高い日本人の間でも体に優しい滋養スープとして評価が高まっており、寒い季節の体を温める料理としても注目されています。

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