アイルランド

アイルランドの定番コルカノンのレシピ

エメラルドの島・アイルランドの家庭料理を代表する、じゃがいもとキャベツをたっぷりのバターと牛乳でなめらかにマッシュした「コルカノン」。ケルトの伝統であるハロウィンの占いや妖精伝説にも登場する、素朴で心温まる伝統レシピを歴史的背景とともにご紹介します。

アイルランドの定番コルカノンのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
30 調理時間
4人前 分量
約300kcal カロリー

材料

  • じゃがいも(男爵などのホクホクした品種) 500g
  • キャベツ(またはケール) 200g
  • 長ネギ(または玉ねぎ) 1/2本
  • 牛乳(または生クリームと牛乳を半々) 100ml
  • 無塩バター 50g
  • 仕上げ用のバター(有塩がおすすめ) 適量
  • 塩 小さじ1強
  • 黒こしょう 少々
  • 【添え物】
  • 厚切りベーコンやハム(任意) 適量

コルカノンの作り方

◎じゃがいもを粉吹き芋にする
デンプン質が多くホクホクとした食感のじゃがいも(男爵芋など)500gを用意します。皮をむいて適当な大きさに切り、鍋にたっぷりの水と塩を入れて柔らかくなるまで茹でます。竹串がスッと通るようになったら湯を捨て、再び鍋を弱火にかけて鍋を揺すりながら水分を飛ばし、表面が粉を吹いた状態にします。水っぽさを完全に無くすことが、濃厚なマッシュポテトを作る第一歩です。

◎キャベツとネギの下ごしらえ
じゃがいもを茹でている間に、キャベツ(または縮れ葉のケール)200gと長ネギ(または玉ねぎやリーキ)1/2本を粗めのみじん切りにします。別の小鍋で柔らかくなるまで軽く塩茹でするか、少量のバターでしんなりとするまで炒めておきます。茹でた場合は、マッシュポテトが水っぽくならないように、ザルに上げてしっかりと水気を絞っておくことが重要です。

◎温かいミルクとバターの準備
小鍋に牛乳(より濃厚に仕上げたい場合は生クリームを半分混ぜる)100mlと、たっぷりの無塩バター50gを入れて弱火にかけます。バターが完全に溶け、フツフツと温かくなるまで加熱します。冷たい牛乳をじゃがいもに加えると粘り気が出て食感が悪くなるため、必ず温かい液体を加えるのが鉄則です。

◎なめらかにマッシュして混ぜ合わせる
粉吹き芋にしたじゃがいもを、熱いうちにマッシャーを使ってダマがなくなるまで丁寧になめらかに潰します。そこに、温めておいたミルクとバターの液を数回に分けて加えながら、木べらでふんわりと練り合わせます。じゃがいもがクリームのように滑らかになったら、下ごしらえしたキャベツとネギを加えてさっくりと混ぜ合わせ、塩と黒こしょうで味をピタリと調えます。

◎バターの「泉」を作って仕上げる

アイルランドの定番コルカノンの完成品 盛り付け画像

盛り付けたコルカノン

温かいコルカノンを器にこんもりと山高く盛り付けます。そしてスプーンの背を使って、山の頂上(中央部分)に深いくぼみを作ります。そのくぼみに、冷たい仕上げ用のバターをひとかけら乗せます。余熱でとろりと溶け出し、金色の泉のようになったバターを少しずつ崩しながら、ポテトに絡めて食べるのがアイルランドの伝統的な至福の味わい方です。


アイルランド 国旗

アイルランドの国旗

「エメラルドの島」と称されるほど緑豊かで美しい自然が広がるヨーロッパの島国、アイルランド。この国の人々の魂とも言えるソウルフードが、じゃがいもをベースにした伝統料理「コルカノン(Colcannon)」です。ゲール語で「白い頭のキャベツ(cal ceann fionn)」を語源とするこの料理は、茹でてマッシュしたホクホクのじゃがいもに、キャベツ(またはケール)とネギを加え、たっぷりのバターと牛乳でなめらかに練り上げた、非常にシンプルで素朴な副菜です。一見すると日本のポテトサラダのようにも見えますが、マヨネーズは一切使わず、乳製品の豊かなコクとじゃがいも本来の甘み、そして野菜のシャキシャキとした食感のコントラストを楽しむ温かい料理です。アイリッシュ・パブの定番メニューとしてはもちろん、家庭の数だけレシピがあると言われるこの心温まる一皿の作り方と、アイルランドの激動の歴史、そしてケルトの神秘的な文化との深いつながりを紐解いていきましょう。

料理の歴史と背景

アイルランドの食文化と歴史を語る上で、「じゃがいも」の存在を避けて通ることはできません。16世紀末に南米アンデス地方から持ち込まれたじゃがいもは、寒冷でやせたアイルランドの土地でも驚くほどよく育ち、またたく間に貧しい小作農たちの命を繋ぐ唯一の主食となりました。19世紀半ばに起きた悲劇的な「ジャガイモ飢饉(Great Famine)」では、病害によってじゃがいもが枯死したことで多くの国民が命を落とし、また新天地アメリカへと渡ることを余儀なくされました。それほどまでに、アイルランドの人々とじゃがいもは、血肉を分けた運命共同体であったのです。コルカノンは、そんなじゃがいもを毎日少しでも美味しく、そして飽きずに食べるための島民たちの知恵の結晶です。身近で安価なキャベツやネギでカサ増しと栄養を補い、ハレの日には貴重なバターやミルクを加えて御馳走へと昇華させる。コルカノンの一口には、過酷な歴史を生き抜いてきたアイルランドの土の匂いと、家族を思いやる温かな愛情がたっぷりと詰まっています。

ハロウィンの夜の「フォーチュン・テリング」

コルカノンが一年で最も主役になる日、それが10月31日の「ハロウィン(Halloween)」です。ハロウィンの起源は、古代ケルト人の収穫祭であり、新年を迎える前夜祭である「サウィン(Samhain)祭」に遡ります。この夜は、現世と異界(妖精の国)を隔てる境界線が最も薄くなり、死者の魂や妖精たちが村にやってくると信じられていました。アイルランドの家庭では、この神秘的な夜に大きな鍋でたっぷりのコルカノンを作り、家族全員で囲む風習があります。そして、この日のコルカノンにはある「魔法」が仕掛けられます。調理の過程で、綺麗に洗った指輪、硬貨、ボタン、そして指貫(シンブル)などをポテトの中に隠しておくのです。食事の際、自分の取り分けたポテトの中から何が出てくるかによって、来年の運勢を占う「フォーチュン・テリング」が行われます。指輪を引き当てた人は1年以内に結婚し、硬貨は富を、ボタンは独身を、指貫は生涯独身を意味するといった具合です。子供たちは硬貨を探して夢中でポテトを頬張り、大人たちは一喜一憂しながらエール(ビール)を傾ける。コルカノンは、厳しい冬の訪れを前に、家族の絆を深め、食卓に笑顔と歓声をもたらす大切なエンターテインメントでもあったのです。

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