オランダ

オランダの定番ハーリングのレシピ

内臓を取り除いて塩漬けにした生のニシンを玉ねぎのみじん切りとピクルスとともに食べる、アムステルダムをはじめオランダ全土の屋台と港で愛される伝統的な生食文化。シンプルにして深い北海の旨みを、歴史とともに紹介します。

オランダの定番ハーリングのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
60 調理時間
4人前 分量
約210kcal カロリー

材料

  • 生ニシン(または冷凍ニシン・市販の塩漬けニシンフィレ) 4尾(またはフィレ8枚)
  • 塩 大さじ3(塩水用)
  • 砂糖 小さじ1(塩水用)
  • 水 500ml(塩水用)
  • 玉ねぎ 半個
  • コルニション(小型ピクルス・またはガーキンス) 8〜10本
  • 白ワインビネガー(またはリンゴ酢) 大さじ2
  • 砂糖 小さじ1(ドレッシング用)
  • 塩 ひとつまみ(ドレッシング用)
  • 【ブロートイェ・ハーリング(サンドイッチ)用】
  • 白いソフトロールパン 4個
  • マヨネーズ 適量(お好みで)

ハーリング(Haring)はオランダを代表する北海産ニシンの塩漬け生食料理で、内臓(膵臓のみ残す)を取り除いて塩水で数日間熟成させたニシンをそのまま細かくみじん切りにした玉ねぎとコルニション(小型ピクルス)とともに食べる、アムステルダム・ロッテルダム・デン・ハーグをはじめオランダ全土の港・市場・屋台(ハーリングカール)で老若男女に日常的に愛される国民的な生食文化です。ハーリングの食べ方は大きく二つあり、ひとつはニシンを尻尾でつかんで頭上から口の中へと垂らして丸ごとかじりつく「アムステルダムスタイル」、もうひとつはニシンを一口大に切り分けてつまようじで刺しながら食べる「ロッテルダムスタイル」で、どちらのスタイルでも刻み玉ねぎとピクルスを合わせることで塩漬けニシンの濃厚な旨みに清涼な酸みとシャープな辛みが加わり、シンプルながら奥深い一体感が生まれます。ハーリングの決め手は「マティエス(Maatjes)」と呼ばれる5〜6月に水揚げされた若いニシンの脂がのった時期のものを使うことで引き出せる濃厚なうまみと柔らかな食感にあり、熟成の過程でニシン自身が持つ膵臓の酵素がたんぱく質を分解してうまみを最大限に引き出す「自己消化」という独特のプロセスがハーリングの風味の核心を生んでいます。オランダでは5月末から6月初旬に最初のハーリングが水揚げされる「ニュー・ハーリング(Nieuwe Haring)」の解禁日は国民的なお祭りとして毎年盛大に祝われており、この時期に屋台で食べる解禁直後のフレッシュなハーリングはオランダ人にとって春から夏への移ろいを告げる特別な味として一年で最も心待ちにされる食体験のひとつとなっています。

ハーリングの作り方(家庭での仕込みと食べ方)

◎ニシンを選ぶ・入手する
家庭でハーリングを再現するには鮮度の高い生のニシンまたは冷凍ニシンを使う。鮮魚店・大型スーパーの鮮魚コーナー・魚市場で生のニシンが入手できる。冷凍ニシンは解凍してから使う。寄生虫リスクを排除するために、生食する場合は必ず-20度以下で24時間以上冷凍処理されたものを使うか、購入後に家庭用冷凍庫で48時間以上冷凍してから解凍して使うこと。(日本では「ニシン」として鮮魚店・スーパーで入手できる。北海道産ニシンは脂ののりがよく、オランダのマティエスに近い風味が楽しめる。市販の塩漬けニシン缶・マリネニシン缶を使えば仕込みの工程を省くことができ、オランダ・北欧料理専門店・輸入食材店・ネット通販で入手できる。生食用として処理済みのニシンフィレを使うのが最も安全で手軽な方法)

◎ニシンを下処理する
生のニシン4尾の頭を落とし、腹を開いて内臓を取り除く(膵臓は残しても取り除いてもよい)。中骨を取り除いてフィレ状にする。塩水(水500ml・塩大さじ3・砂糖小さじ1)を混ぜてニシンのフィレを完全に浸し、密閉容器に入れて冷蔵庫で24〜48時間塩漬けにする。塩漬け後に流水でさっと塩を洗い流し、キッチンペーパーで水気を丁寧に拭き取る。(本場のハーリングはニシンを内臓ごと専用の塩水(ペーケル)に数日間漬け込んで熟成させる「マティエス製法」で作られるが、家庭での再現では衛生上のリスクがあるため、フィレ状にしてから24〜48時間の短期塩漬けにとどめる。塩漬け時間が長いほど旨みが増すが、塩辛くなりすぎる場合は塩を水で薄めた軽い塩水を使うとよい。市販の塩漬けフィレを使う場合はこの工程全体を省略できる)

◎付け合わせを準備する
玉ねぎ半個を極細のみじん切りにして水に5分さらし、辛みを抜いてから水気をよく切る。コルニション(小型のピクルス)8〜10本を薄い輪切りにする。白ワインビネガーまたはリンゴ酢大さじ2・砂糖小さじ1・塩ひとつまみを混ぜ合わせて簡単なドレッシングを作る。(玉ねぎは水にさらして辛みを取ることでニシンの旨みを引き立てる役割を果たす。コルニションはオランダ料理専門店・輸入食材店で入手できるが、市販の甘酢きゅうりのピクルスまたはガーキンスで代用できる。オランダでは玉ねぎとピクルスがハーリングの必須の付け合わせとされており、この二つを省略するとハーリングの食体験が大きく変わってしまう)

◎アムステルダムスタイルで食べる
塩漬けにしたニシンのフィレを皿に並べ、みじん切りの玉ねぎを全体にたっぷりとまぶす。ニシンを尻尾の端でつかみ、頭上に持ち上げて口の中へと垂らすようにして頭側からかじりつく。コルニションを合間にかじりながら食べる。(アムステルダムスタイルは観光客にも人気のある食べ方で、ニシン全体の旨みをひと口で感じられる豪快なスタイル。慣れないうちはフィレを一口大に切り分けてから玉ねぎをのせて食べるロッテルダムスタイルのほうが食べやすい。ニシンは冷蔵庫でよく冷やした状態で食べると脂の甘みと旨みが引き立つ。パンに挟んで食べる場合はホワイトブレッドまたはグレーンブレッドを使うのがオランダの定番)

◎ブロートイェ・ハーリング(ハーリングサンドイッチ)を作る

オランダの定番ハーリングの完成品 盛り付け画像

盛り付けたハーリング
白いソフトロールパン(またはバゲットの短く切ったもの)を横に切り込みを入れる。塩漬けニシンのフィレ1〜2枚をパンの切り込みに挟み、みじん切り玉ねぎとコルニションの輪切りをたっぷりのせる。(「ブロートイェ・ハーリング(Broodje Haring)」はオランダの屋台で最も一般的なハーリングの食べ方。シンプルながら、パンのやわらかさとニシンの旨み・玉ねぎの辛みのバランスが絶妙で、ランチや軽食として完成されたひと品。マヨネーズを薄く塗ってから挟むのも一般的なバリエーション。パンは必ず柔らかいものを選ぶこと。硬いパンでは食べにくくなる)

料理の歴史と背景

ハーリングとオランダの歴史は切り離せないほど深く結びついており、オランダの国家的繁栄の礎を築いたのはニシン漁業であったとも言われています。14世紀にウィレム・ベウケルスゾーンという漁師が考案したとされるニシンを船上で内臓処理してすぐに塩漬けにする技法(カキング)は、それまで傷みやすかったニシンを長期保存可能な商品として変え、オランダが北海のニシン漁業を支配してハンザ同盟との交易で莫大な富を得る基盤となりました。この塩漬けニシンの交易は15〜17世紀のオランダ黄金時代の繁栄を支えた柱のひとつであり、「ニシンの骨の上にアムステルダムは建てられた(Amsterdam is built on herring bones)」というオランダの諺はその歴史的な重みを端的に表しています。当初は保存食・輸出商品として発展した塩漬けニシンが、やがてオランダ国内の港湾労働者・漁師・市民の日常食として根付き、現在のような生食スタイルが確立したのは19世紀以降のことと考えられています。

現代のオランダにおいてハーリングは5月末から6月初旬のニュー・ハーリング解禁日を国民的なイベントとして祝う文化とともに、アムステルダム・スヒーフェニンゲン(デン・ハーグの港)・フォーレンダムなどの港町を中心に屋台(ハーリングカール)や鮮魚店で通年販売されています。スヒーフェニンゲン港では毎年6月初旬に「ヴラッハフェースト(Vlaggetjesdag)」と呼ばれるニュー・ハーリング解禁祭が行われ、最初に水揚げされたニシンをオランダ王室に献上する伝統が現在も続いています。ハーリングはオランダの食文化のシンボルとして観光客にも広く知られており、アムステルダムの屋台でニシンを頭上から口に垂らして食べる光景はオランダ旅行の定番体験のひとつとして世界中の旅行ガイドに紹介されています。日本ではオランダ料理の認知度はまだ高くないものの、生魚の旨みを楽しむ食文化に親しんだ日本人には塩漬けニシンの濃厚な旨みが直感的に理解しやすい料理として、オランダ料理イベントや輸入食材を扱う料理教室で紹介される機会が増えています。

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