アフリカ

シエラレオネの定番ジョロフライスのレシピ

トマト・赤ピーマン・玉ねぎを炒め煮にしたベースに米を吸わせながら炊き上げる西アフリカを代表する赤い炊き込みご飯。鍋底に意図的に作る「ソコティ(焦げ)」とスモーキーな香りがシエラレオネ流の真骨頂。祝いの席に欠かせない本格レシピを歴史とともに紹介します。

シエラレオネの定番ジョロフライスのレシピ
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郷土レシピ.com代表

ジョロフライス(Jollof Rice)は西アフリカ全域で愛される炊き込みご飯で、シエラレオネではトマト・赤ピーマン・スコッチボネットチリ・玉ねぎをじっくりと炒め煮にして作るトマトベースに米を加えてチキンストックで炊き上げ、仕上げにカレーパウダー・タイム・ベイリーフのスパイスを効かせることでトマトの旨みとスパイスの香りが米の一粒一粒に深く染みわたる鮮やかな赤いご飯に仕上がる、結婚式・洗礼式・葬儀・誕生日パーティーをはじめあらゆる祝いの席と日常の家庭料理の両方で欠かせない西アフリカの国民食です。シエラレオネのジョロフライス最大の個性は調理の最終段階で蓋をしたまま強火にかけて鍋底に意図的に焦げ(ソコティ)を作ることで生まれるスモーキーな香りにあり、この焦げた香りがご飯全体に広がることで生まれる独特の深みはナイジェリア版・ガーナ版・セネガル版のジョロフライスとシエラレオネ版を区別する最も重要な特徴として地元の人々に誇りをもって語られています。ジョロフライスの決め手はトマトベースを油が分離するまで徹底的に炒め煮にしてトマトの酸みを完全に旨みに変える工程と、米がストックを吸いながら炊き上がる過程で鍋底に生まれるソコティの焦げの香りをご飯全体に閉じ込めることであり、この二つの工程を妥協なく行うことで初めてフリータウンの家庭や屋台で食べるジョロフライスの深みが生まれます。西アフリカでは「どの国のジョロフライスが最高か」という議論が国を超えた熱狂的な論争(ジョロフウォーズ)として親しまれており、シエラレオネ・ナイジェリア・ガーナ・セネガルそれぞれの国民が自国のレシピこそが最高と主張するなかで、スモーキーな焦げの香りを持つシエラレオネ版は独自の地位を確立しています。

ジョロフライスの作り方

◎トマトベースを作る
完熟トマト4個(またはカットトマト缶400g)・赤ピーマン2個・スコッチボネットチリ(なければ赤唐辛子)1〜2本・玉ねぎ半個をミキサーまたはブレンダーでなめらかにピューレ状にする。大きめの厚底鍋にサラダ油大さじ4を強めの中火で熱し、みじん切りにした玉ねぎ1個を10〜12分、こんがりときつね色になるまで炒める。ピューレを加えて木べらで混ぜながら、油がピューレから分離して鍋の縁に滲み出てくるまで20〜25分、強めの中火でしっかりと炒め煮にする。(「油が分離するまで炒め煮にする」工程がジョロフライスの旨みの土台を作る最重要工程。トマトの水分を完全に飛ばして酸みを旨みに変えることで深みのあるベースが生まれる。この工程を短縮すると酸みが残って仕上がりが浅くなるため絶対に手を抜かないこと。スコッチボネットが入手できない場合は赤唐辛子2本で代用できる)

◎スパイスを加えて香りを出す
炒め煮にしたトマトベースにカレーパウダー大さじ1・パプリカパウダー大さじ1・クミンパウダー小さじ1/2・タイム小さじ1・ベイリーフ3枚・チキンブイヨン2個(またはチキンストック顆粒小さじ2)・塩小さじ1を加えてよく混ぜ合わせ、さらに2〜3分炒めてスパイスの香りを引き出す。(シエラレオネのジョロフライスはカレーパウダーを加えるのが特徴で、これがナイジェリア版やガーナ版との大きな違いのひとつ。スパイスは油の中で加熱することで香り成分が最大限に溶け出すため、ストックを加える前に必ず炒め合わせること。チキンブイヨン缶はスーパーで入手できるが、自家製チキンストック300mlで代用するとより本格的な味わいになる)

◎米を加えて炊き上げる
米2合(洗わずそのまま使う)をトマトベースに加えてよく混ぜ合わせ、米全体にベースを絡める。熱いチキンストック(またはお湯)360mlを加えてひと混ぜし、蓋をして中火で5分、沸騰させる。沸騰したら弱火に落として20分炊く。20分後に蓋を開けて米の表面の水分が吸われているか確認し、まだ水気が多ければ蓋を少し開けたまま5分追加で炊く。(米は洗わないことでデンプンが残り、ご飯がトマトベースをしっかりと吸ってパラリとした仕上がりになる。ストックは必ず熱い状態で加えること。冷たいストックを加えると鍋の温度が下がって炊きムラが生じる。ストックの量は米の状態や鍋の種類によって変わるため、20分後に確認して足りなければ少量追加する)

◎ソコティ(焦げ)を作って仕上げる
米に火が通ったら蓋をしたまま強火にして3〜5分加熱し、鍋底に意図的に焦げ(ソコティ)を作る。焦げの香ばしいスモーキーな匂いが漂い始めたらすぐに火を止め、蓋をしたまま10分蒸らす。蒸らし終わったら蓋を開け、木べらで底から大きく混ぜて焦げをご飯全体に絡ませる。(「ソコティ」はシエラレオネおよび西アフリカのジョロフライスにおいて最高の部分とされる鍋底の焦げのこと。このスモーキーな焦げの香りをご飯全体に行き渡らせることがシエラレオネ流ジョロフライスの真骨頂。焦げすぎると苦みが出るため、香りが出始めたらすぐに火を止めること。厚底の鍋を使うと焦げが均一につきやすい)

◎盛り付け

シエラレオネの定番ジョロフライスの完成品 盛り付け画像

ジョロフライス
皿に大きくよそい、フライドプランテン(揚げバナナ)・コールスロー・グリルチキンまたは揚げ魚を添えるのがシエラレオネの定番スタイル。コリアンダーリーフまたはパセリを散らして仕上げる。

料理の歴史と背景

ジョロフライスの起源は14〜16世紀に西アフリカのセネガル・ガンビア沿岸一帯に栄えたジョロフ王国(Jolof Empire)に遡るとされており、当時の宮廷料理として米・トマト・スパイスを合わせた炊き込みご飯が発展したのが始まりとされています。ジョロフ王国の影響圏が現在のセネガル・ガンビア・シエラレオネ・ギニアにまたがっていたことが、ジョロフライスが西アフリカ全域に広まった歴史的な背景にあります。16世紀以降にポルトガル・オランダ・イギリスとの交易を通じてトマトが西アフリカに持ち込まれたことで現在のトマトベースのスタイルが確立したとされており、もともとはトマトを使わない米とスパイスの炊き込みご飯だったものがトマトを加えることで現代のジョロフライスの原型になったと考えられています。シエラレオネには18〜19世紀に解放奴隷の入植地として設立されたフリータウンを通じて西アフリカ各地から多様な食文化が集まり、隣国ギニアやリベリアとも交わりながらシエラレオネ独自のスパイス使いとスモーキーなソコティの文化が育まれたとされています。

現代の西アフリカにおいてジョロフライスはナイジェリア・ガーナ・シエラレオネ・セネガルなどの国々でそれぞれ独自の進化を遂げており、どの国のジョロフライスが最高かをめぐるソーシャルメディア上の熱狂的な論争「ジョロフウォーズ(Jollof Wars)」は西アフリカのポップカルチャーを代表する文化現象として国際的な注目を集めています。2014年にはBBCがジョロフウォーズを特集し、2015年にはアメリカのシェフ、マリオ・バターリがナイジェリア系のジョロフライスに言及したことで欧米の食メディアにも広く報じられ、ジョロフライスは西アフリカ料理の国際的な象徴として認知されるようになりました。シエラレオネでは2002年の内戦終結後の復興とともに国内外のシエラレオネ人コミュニティのあいだでジョロフライスが「故郷の味」として再び大切にされるようになり、ディアスポラ(海外移住者)が自国の食文化をソーシャルメディアで発信する動きがシエラレオネ版ジョロフライスの独自性を世界に伝える役割を果たしています。日本では西アフリカ料理・アフリカ料理への関心の高まりとともにジョロフライスを提供するレストランが増えており、スモーキーな香りと鮮やかな赤色が目を引くご飯料理として日本人にも親しみやすいアフリカ料理の入口として注目を集めています。

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