エジプトの定番コシャリのレシピ
米・レンズ豆・マカロニを重ねてスパイシーなトマトソース・ガーリックビネガーソース・揚げ玉ねぎを豪快にかけて食べる、カイロ発祥のエジプト国民食。四つの要素が一皿で交わる唯一無二の組み合わせを、歴史とともに紹介します。
材料
- 米 1合
- 茶色または緑レンズ豆 150g
- ショートパスタ(マカロニまたはペンネ) 150g
- 【ダッカ(トマトソース)】
- カットトマト缶 400g
- 玉ねぎ 1個
- ニンニク 4片
- トマトペースト 大さじ2
- クミンパウダー 小さじ1
- コリアンダーパウダー 小さじ1
- カイエンペッパー 小さじ1/4
- 砂糖 小さじ1
- 塩 小さじ1
- サラダ油 大さじ2
- 【デア(ガーリックビネガーソース)】
- ニンニク 6片
- 白ワインビネガー(またはリンゴ酢) 100ml
- 水 50ml
- クミンパウダー 小さじ1/4
- 塩 小さじ1/2
- 【揚げ玉ねぎ】
- 玉ねぎ 2個
- 薄力粉 大さじ3
- 揚げ油・塩 適量
- クミンパウダー 小さじ1/2(米・豆炊き込み用)
- ホットソース(タバスコまたはハリッサ) 適量(お好みで)
コシャリ(Koshari)はエジプトを代表するカイロ発祥のストリートフードで、炊いた米・茹でたレンズ豆・マカロニを大皿に重ね盛りにして、スパイスとトマトを合わせた濃厚なダッカ(トマトソース)・大量のニンニクを酢で溶いたデア(ガーリックビネガーソース)・カラッと揚げたカリカリの玉ねぎを好みの量だけかけて食べる、カイロの街角の専門食堂から高級レストランまでエジプト全土で老若男女に愛される国民食です。コシャリ最大の個性は米・豆・パスタという三種の主食を一皿に重ねるという他のどの国の料理文化にもない独特の組み合わせにあり、それぞれに異なる食感を持つ三層の主食の上にトマトの酸み・酢の刺激・揚げ玉ねぎの甘みと香ばしさが加わることで生まれる複雑な味の重なりはエジプト料理の中でも最も個性的な美味しさとして世界中の食通から注目を集めています。コシャリの決め手はトマトをスパイスとともに長時間煮詰めて酸みを旨みに変えた濃厚なダッカソースと、玉ねぎを焦げる寸前まで揚げることで引き出すカラメルの甘みと香ばしさのコントラストであり、この二つが揃って初めてカイロのコシャリ専門店で食べる本場の味に近づきます。エジプトではコシャリは完全に植物性食材のみで作られるヴィーガン料理でありながら米・豆・パスタの三種の主食が揃うことで一皿で充分な栄養と満腹感が得られるため、経済的で腹持ちのよい庶民の日常食として長年にわたってカイロをはじめとするエジプトの都市生活を支え続けています。
コシャリの作り方
◎ダッカ(トマトソース)を作る
玉ねぎ1個をみじん切りにし、鍋にサラダ油大さじ2を熱して中火で8分炒める。ニンニク4片(みじん切り)を加えてさらに2分炒め、クミンパウダー小さじ1・コリアンダーパウダー小さじ1・カイエンペッパー小さじ1/4・塩小さじ1を加えて1分炒める。カットトマト缶400g・トマトペースト大さじ2・砂糖小さじ1・水100mlを加えてよく混ぜ、弱火で20〜25分、ソースに充分なとろみがつくまでじっくりと煮詰める。(ダッカはコシャリの命となるソース。トマトをしっかり煮詰めて水分を飛ばすことで酸みが旨みに変わる。辛さはカイエンペッパーの量で調整し、辛いのが苦手な場合は省略してもよい。ソースは前日に作り置きしておくと味が落ち着いてより美味しくなる)
◎デア(ガーリックビネガーソース)を作る
ニンニク6片をすりおろすか極細みじん切りにして小鍋に入れる。白ワインビネガー(またはリンゴ酢)100ml・水50ml・塩小さじ1/2・クミンパウダー小さじ1/4を加えて中火にかけ、ひと煮立ちしたら火を止めて冷ます。(デアはコシャリに欠かせない刺激のソース。ニンニクと酢の強烈な組み合わせがダッカの甘みと揚げ玉ねぎの香ばしさを際立たせる。最初は少量かけて味見しながら好みの量を調整すること。ニンニクが苦手な場合は量を半量に減らしてもよい。密閉容器で冷蔵すれば1週間保存できる)
◎揚げ玉ねぎを作る
玉ねぎ2個を薄い輪切りにして水気をよく拭き取る。薄力粉大さじ3を全体にまぶす。フライパンにサラダ油を1cm深さまで注いで中火で熱し、玉ねぎを2〜3回に分けて入れ、きつね色を超えてこんがりとした深いアンバー色になるまで10〜12分かけてじっくりと揚げる。揚げた玉ねぎをペーパータオルに広げて油を切り、塩をひとつまみふる。(揚げ玉ねぎはコシャリの香ばしさの要。焦げる寸前のアンバー色まで揚げ切ることでカラメルの甘みと香ばしさが最大限に引き出される。色が薄いと甘みが出ない。揚げた直後は柔らかく見えるが、油を切って冷めるとカリッとした食感になる。揚げ油は少量でも構わないが、玉ねぎを詰め込みすぎると蒸し焼き状態になって揚がらないので少量ずつ揚げること)
◎米・レンズ豆・マカロニを仕上げる
レンズ豆(茶色または緑)150gを洗い、水400mlと塩小さじ1/2とともに鍋に入れて沸騰させ、弱火で15〜20分、豆がやわらかくなるまで茹でてザルに上げる。米1合を洗い、茹でたレンズ豆・水270ml・塩小さじ1/2・クミンパウダー小さじ1/2を炊飯器に入れて通常通り炊く。ショートパスタ(マカロニまたはペンネ)150gを塩を加えた湯で袋の表示より1〜2分長く、やや柔らかめに茹でてザルに上げ、サラダ油小さじ1を絡める。(米とレンズ豆を一緒に炊くことで豆の旨みが米に移ってコシャリの土台となる風味豊かな米豆層になる。パスタはやや柔らかめに茹でると他の食材となじみやすくなる。パスタに油を絡めておくとくっつきを防げる)
◎盛り付け

コシャリ
大きめの皿またはボウルに米とレンズ豆を炊いたものをたっぷりと盛る。その上にマカロニを重ね、ダッカソースを全体にたっぷりとかける。揚げ玉ねぎをこんもりと盛り、デアを好みの量かけて仕上げる。好みでホットソース(タバスコまたはハリッサ)を加えるのが本場カイロのスタイル。(コシャリは盛り付けの順番と各ソース・トッピングのバランスが味を左右する。ダッカを先に全体にかけてからデアをかけると全体に味が行き渡りやすい。揚げ玉ねぎは食べる直前にのせることでカリカリの食感が保たれる)
料理の歴史と背景
コシャリの起源は19世紀後半から20世紀初頭にかけてのカイロに遡るとされており、その成立にはインドの豆と米の混ぜご飯「キチュリ(Khichri)」がイギリス植民地支配を通じてエジプトに伝わったという説と、エジプトで古くから食べられていた豆と米の料理が19世紀にイタリア人移民がもたらしたパスタ文化と融合したという説が有力とされています。イタリアがエジプトとの貿易で影響力を持っていた19世紀後半にはカイロにイタリア系移民コミュニティが形成されており、イタリア料理のパスタ文化がエジプトの豆・米料理と交わることでコシャリが誕生したという説はその多文化的な成り立ちをよく説明しています。20世紀初頭にはカイロの街角でコシャリを専門に販売する屋台・食堂が登場し、安価で腹持ちがよく完全に植物性食材のみで作れるという特性からカイロの労働者・学生・低所得層を中心に急速に広まりました。
現代のエジプトにおいてコシャリはカイロ・アレクサンドリア・ギザをはじめエジプト全土にコシャリ専門チェーン店が展開しており、中でも1950年創業のカイロ老舗「コシャリ・アブ・タレク(Koshary Abou Tarek)」はミシュランガイドにも紹介されたことで国際的な名声を得ています。1日に数千食が売れるというカイロのコシャリ専門店の活況は、コシャリがエジプト人の日常食の中心に位置し続けていることを象徴しています。2011年のエジプト革命(アラブの春)のさなかにも、タハリール広場に集まったデモ参加者たちにコシャリが配給されたという逸話は、コシャリがエジプト社会のあらゆる階層をつなぐ食文化の象徴であることを示す出来事として広く語られています。日本では中東・アフリカ料理への関心の高まりとともにコシャリを提供するレストランやフードイベントが増えており、米・豆・パスタという異なる主食を一皿に重ねるという発想がこれまでの日本の食文化にない斬新さとして注目を集めています。
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