ジョージア

ジョージアの定番シュクメルリのレシピ

鶏肉をバターで焼き付けてから大量のニンニクとヤシ乳のソースでじっくりと煮込む、ジョージア北西部ラチャ地方発祥の郷土料理。濃厚なニンニクの旨みとヤシ乳のコクが渾然一体となる官能的なソースを、歴史とともに紹介します。

ジョージアの定番シュクメルリのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
50 調理時間
4人前 分量
約520kcal カロリー

材料

  • 鶏もも肉(骨付きまたは骨なし) 600g
  • ニンニク 1玉(10〜12片)
  • バター 大さじ4(焼き用大さじ2・ソース用大さじ2)
  • ヤシ乳(なければ全乳) 300ml
  • 生クリーム 100ml
  • 白ワイン(またはチキンストック) 50ml
  • ブルーフェヌグリーク(ウツホスネリ) 小さじ1/2(なければ省略可)
  • パプリカパウダー 小さじ1/2
  • 塩 小さじ1と1/2
  • 黒こしょう 小さじ1/2
  • コリアンダーリーフ ひとつかみ
  • ショティまたはフラットブレッド・バゲット 適量(添え物)

シュクメルリ(Shkmeruli)はジョージア北西部の山岳地帯ラチャ地方を発祥とする鶏肉の乳煮込み料理で、鶏肉をバターでこんがりと焼き付けてから大量のニンニク・ヤシ乳(または牛乳)・バターを合わせたソースの中でオーブンまたは直火でじっくりと煮込むことでニンニクの辛みが穏やかな甘みと深い旨みに変化しヤシ乳のクリーミーなコクとひとつに溶け合った白くとろりとした濃厚なソースが鶏肉全体を包み込む、ジョージア全土のレストランと家庭の食卓で愛される国民的な郷土料理です。シュクメルリ最大の個性はニンニクを惜しみなく大量に使いながらも長時間の加熱によって辛みが抜けて甘みと旨みだけが残るという変化にあり、臆することなくニンニク1〜2玉分を丸ごと使うこの大胆さはジョージア料理のニンニク文化の核心を体現しています。シュクメルリの決め手は鶏肉を高温のバターで表面をしっかりと焼き付けてマイラード反応を起こすことで生まれる焦げた旨みと、ニンニクをバターで充分に炒めてから乳を加えてゆっくりと煮詰めることでニンニクの旨みが乳脂肪に完全に溶け込んだ濃厚なソースの深みであり、この二つが揃って初めてトビリシのジョージア料理レストランや西ジョージアの家庭で食べるシュクメルリの味に近づきます。ジョージアではシュクメルリは「ケツィ(ketsi)」と呼ばれる素焼きの陶器の鍋で調理してそのままテーブルに出すスタイルが伝統的で、熱々のケツィから立ち上るニンニクの香りとともに食卓に運ばれるシュクメルリはジョージアのクヴェブリワイン(壺熟成の自然派ワイン)との組み合わせで楽しむのが最良とされており、コーカサスの山の民が育んだ素朴にして深遠な料理文化の象徴として国内外の食通から強い支持を受けています。日本では2020年に「松屋」がシュクメルリ鍋定食として期間限定で提供したことで一躍話題となり、ジョージア料理の認知度向上の契機となった料理としても知られています。

シュクメルリの作り方

◎鶏肉を焼き付ける
鶏もも肉(骨付きまたは骨なし)600gを半分に切り、塩小さじ1・黒こしょう小さじ1/2・パプリカパウダー小さじ1/2を全体によく揉み込んで10分置く。鋳鉄鍋または厚底のフライパンにバター大さじ2を中火で溶かし、バターが泡立ち始めたら鶏肉を皮面を下にして並べ、動かさずに5〜6分、皮がこんがりとしたきつね色になるまで焼き付ける。裏返してさらに3〜4分焼いて取り出す。(バターは焦げやすいため、泡が収まって色がついてきたらすぐに鶏肉を入れること。鶏肉を入れたら押し付けて皮と鍋底を密着させると均一な焼き色がつく。骨付き肉を使うと骨から旨みが溶け出してソースがより濃厚になる。焼き付けた後の鍋底に残った焦げ(フォン)はソースの旨みの源になるため、絶対に洗わずにそのまま使うこと)

◎ニンニクソースを作る
ニンニク1玉(10〜12片)の皮をすべて剥いて包丁の腹で潰し、さらに粗みじんにする。鶏肉を焼いた同じ鍋にバター大さじ2を足して弱火にかけ、ニンニクを加えて焦がさないように注意しながら3〜4分、透明感が出てほんのりと色がつくまでゆっくりと炒める。白ワイン(またはチキンストック)50mlを加えて鍋底の焦げをこそげながら煮立て、アルコールを飛ばす。(ニンニクは絶対に焦がさないこと。焦げると苦みが出てソース全体を台無しにする。弱火でじっくりと甘みを引き出すのが正しいアプローチ。ニンニクの量は一般的なレシピより多く感じるかもしれないが、この量があって初めてシュクメルリのソースの深みが生まれる。臆せず1玉丸ごと使うこと)

◎ヤシ乳(または牛乳)で煮込む
炒めたニンニクの鍋にヤシ乳(なければ全乳)300ml・生クリーム100mlを加えてよく混ぜ、焼き付けた鶏肉を皮面を上にして戻し入れる。塩小さじ1/2・ブルーフェヌグリーク(ウツホスネリ)小さじ1/2(なければ省略可)を加え、弱火で蓋をせずに20〜25分、ソースが適度なとろみになるまで煮込む。仕上げにコリアンダーリーフをたっぷりと散らす。(ヤシ乳を使うとジョージアの伝統スタイルに近くなるが、全乳と生クリームの組み合わせでも充分美味しく仕上がる。ブルーフェヌグリーク(ウツホスネリ)はジョージア料理に欠かせないスパイスで、独特のカレーに似た香りを持つ。ジョージア食材店・一部の輸入食材店またはネット通販で入手できる。ソースは煮詰めすぎると分離するため、弱火を保ち沸騰させないよう注意すること)

◎盛り付け

ジョージアの定番シュクメルリの完成品 盛り付け画像

盛り付けたシュクメルリ
ケツィ(素焼きの陶器鍋)またはスキレットのまま食卓に出し、コリアンダーリーフを散らして仕上げる。ジョージアのパン「ショティ(ショティス・プリ)」またはフラットブレッド・バゲットを添えて、パンでソースをすくいながら食べるのが最も美味しい食べ方。ジョージアの白ワインまたは辛口白ワインとの組み合わせが最高。(仕上げのコリアンダーは量を惜しまないこと。ジョージア料理では生のコリアンダーを多量に使うのが基本スタイル。パンはソースを余すところなくすくうために欠かせない存在。器が熱いままテーブルに出すことで最後までソースが温かく保たれる)

料理の歴史と背景

シュクメルリの起源はジョージア北西部の山岳地帯ラチャ地方の小村「シュクメリ(Shkmeri)」に遡るとされており、料理名はそのままこの村の名前に由来しています。ラチャ地方は標高の高いコーカサス山脈の懐に位置する農牧業地帯で、鶏・牛・豚の畜産と山岳地帯で豊富に採れるニンニクの栽培が古くから盛んでした。現地では鶏肉を素焼きの陶器鍋「ケツィ」でバターと大量のニンニクとともに調理する技法が少なくとも数百年にわたって受け継がれてきたとされており、ヤシ乳または牛乳を加えて煮込むスタイルはラチャ地方の酪農文化と鶏肉料理の融合から生まれたものと考えられています。シュクメルリが首都トビリシをはじめジョージア全国に広まったのは20世紀のソビエト連邦時代で、ジョージア料理がソ連の食堂文化を通じて広く普及するなかでシュクメルリもジョージア料理を代表する一品として認知されるようになりました。ニンニクを大量に使う料理文化はジョージア全域に共通しており、シュクメルリはその最も純粋な表現形態として愛されています。

現代のジョージアにおいてシュクメルリはトビリシの老舗ジョージア料理レストランから地方の家庭食堂まで全国のメニューに並ぶ定番料理として定着しており、ジョージアを訪れる外国人旅行者がまず注文する料理のひとつとして国際的な認知度を高めています。2010年代以降のジョージアワインブームとともにジョージア料理全体への関心が世界的に高まり、シュクメルリはヒンカリ(蒸し餃子)・ハチャプリ(チーズパン)と並ぶジョージア料理の国際的な看板料理として欧米の食メディアでも広く紹介されるようになりました。日本では2020年1月に牛丼チェーン「松屋」が「シュクメルリ鍋定食」として期間限定販売し、販売開始からわずか数日で多くの店舗が売り切れる異例の反響を呼んだことで、一般の日本人にもシュクメルリの名が広く知られるようになりました。この松屋のヒットを契機にジョージア料理への関心が急上昇し、現在では東京・大阪などの都市部にジョージア料理専門店が複数開店するなど、ジョージア料理は日本で最も注目を集めている東欧・コーカサス料理のひとつとなっています。

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