アフリカ

マダガスカルの定番ロマザヴァのレシピ

牛肉をトマト・玉ねぎとともに炒め煮にしてから水菜に似たアナモ(またはほうれん草)・からし菜・パクチーなど複数の青菜を大量に加えてじっくりと煮込む、マダガスカル全土の食卓に毎日欠かせない国民食。インド洋の島国が育てた牛肉と青菜の深い滋味を、歴史とともに紹介します。

マダガスカルの定番ロマザヴァのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表

材料

  • 骨付き牛バラ肉または牛すね肉 600g
  • 玉ねぎ 2個
  • ニンニク 4片
  • 生姜 20g
  • 完熟トマト 3個(またはカットトマト缶300g)
  • 水またはビーフストック 1リットル
  • クミンパウダー 小さじ1/2
  • 塩 小さじ1+仕上げ用適量
  • 黒こしょう 適量
  • サラダ油 大さじ2
  • 【青菜(アナモの代替)】
  • ほうれん草 150g
  • からし菜(またはルッコラ・クレソン) 100g
  • パクチー(コリアンダーリーフ) ひとつかみ
  • 水菜 50g
  • 米 2合
  • 唐辛子ソース(またはタバスコ) 適量(お好みで)

ロマザヴァの作り方

◎牛肉を下処理して炒め煮にする
骨付き牛バラ肉または牛すね肉(骨なし可)600gを一口大に切る。玉ねぎ2個を薄切り、ニンニク4片をみじん切り、生姜20gをすりおろす。完熟トマト3個(またはカットトマト缶300g)を粗みじんにする。大きめの厚底鍋またはダッチオーブンにサラダ油大さじ2を強火で熱し、牛肉を全面にこんがりとした焼き色がつくまで4〜5分ブラウニングして取り出す。同じ鍋で玉ねぎを中火で8〜10分きつね色になるまで炒め、ニンニク・生姜を加えてさらに2分炒める。トマトを加えて木べらで崩しながら中火で8〜10分、トマトの水分がほぼ飛んでペースト状になるまで炒め煮にする。ブラウニングした牛肉を戻し、塩小さじ1・黒こしょう・クミンパウダー小さじ1/2を加えてよく混ぜ合わせる。(ブラウニングはロマザヴァのスープの旨みの土台を作る最重要工程。牛肉をしっかりと焼き付けることでフォンが生まれてスープに深みが出る。トマトをしっかりと炒め煮にして水分を飛ばすことで酸みが旨みに変わる。骨付き肉を使うと骨から旨みが溶け出してスープがより濃厚になる)

◎スープを煮込む
炒め合わせた牛肉とトマトベースの鍋に水またはビーフストック1リットルを加えてひと煮立ちさせる。浮いてくるアクを丁寧にすくい取り、弱火に落として蓋をして40〜50分、牛肉がやわらかくなるまでじっくりと煮込む。(アクを丁寧に取り除くことでスープが澄んで雑味のない仕上がりになる。弱火でじっくりと煮込むことで牛肉がやわらかくなり旨みがスープに溶け出す。圧力鍋を使う場合は加圧後20〜25分で同様の柔らかさに仕上がる。スープが少なくなってきたら水を足して1リットル程度の水位を保つこと)

◎青菜を加えて仕上げる
アナモの代替として以下の青菜を組み合わせて準備する。ほうれん草150g・からし菜(またはルッコラ・クレソン)100g・パクチー(コリアンダーリーフ)ひとつかみ・水菜50g。各青菜をよく洗って3〜4cm幅に切る。牛肉がやわらかくなった鍋に青菜をすべて加え、中火で5〜8分、青菜がやわらかくなるまで煮込む。塩で最終的な味を調える。(青菜は思い切って多めに加えること。加熱するとかさが大幅に減るため、生の状態でボウルいっぱいあっても煮上がるとちょうどよい量になる。アナモは在来種の青菜でマダガスカル固有のものだが、複数の青菜を組み合わせることでアナモに近い複雑な苦みと旨みを再現できる。クレソンやルッコラのような苦みのある葉野菜を加えることが本場の風味に近づける鍵。青菜を加えてからは煮込みすぎないこと。色が鮮やかな状態で火を止めると見た目も美しく仕上がる)

◎白飯を炊く
米2合を洗い、水を少し多めにして通常通り炊く。マダガスカルでは長粒米が一般的だが日本米でも美味しく食べられる。(マダガスカルでは「アンパンガ(ampanga)」と呼ばれる炊いた白飯がロマザヴァの最も重要な付け合わせ。ロマザヴァをスープごとご飯の上にかけて食べる「リ・ソース」スタイルが定番。ご飯はやや多めに炊いて大きな器に盛り、ロマザヴァをたっぷりとかけながら食べること。バスマティライスを使うとより東アフリカ・インド洋の食文化に近づく)

◎盛り付けと食べ方

マダガスカルの定番ロマザヴァの完成品 盛り付け画像

盛り付けたロマザヴァ

大きめの深皿または鍋ごとテーブルに出す。別の器に白飯をたっぷりと盛り、ロマザヴァをスープごとかけて食べるのがマダガスカルの伝統的なスタイル。コリアンダーリーフを散らして仕上げる。ピリ辛の唐辛子ソース(ルアヌ・ヴァヴィナ)を添えると本場マダガスカルの食卓に近くなる。(マダガスカルでは食事は家族全員が大皿を囲んで食べる共食スタイルが一般的。ロマザヴァは大きな鍋で作ってテーブルの中央に置き、各自が椀に取り分けながら白飯とともに食べる。スープは最後まで飲み干すのがマダガスカル流。翌日以降はスープが肉の旨みをより深く吸収してさらに美味しくなるため、多めに作り置きするのがおすすめ)


マダガスカル 国旗

マダガスカルの国旗

ロマザヴァ(Romazava)はマダガスカルを代表する牛肉と青菜の煮込みスープで、骨付きまたは骨なし牛肉を玉ねぎ・トマト・ニンニク・生姜とともにじっくりと炒め煮にしてから水菜に似た在来の青菜「アナモ(anamalaho)」・からし菜・ほうれん草・パクチーなど複数の青菜を大量に加えてスープごと煮込み、青菜の苦みと旨みが牛肉の出汁と溶け合った深みのある煮込みスープに仕上げる、アンタナナリヴをはじめマダガスカル全土の家庭の食卓で毎日のように食べられる最も基本的な国民食です。ロマザヴァはマダガスカル語で「混ぜ合わせた薄いスープ(romy=薄い・zavatra=もの・混合)」を意味するとされており、その名が示すとおり複数の食材が入り混じってひとつの滋養あふれるスープに仕上がるこの料理はマダガスカルの食の哲学を最も端的に体現しています。ロマザヴァ最大の個性は在来の青菜アナモが持つ独特の苦みと粘りにあり、アナモの葉を大量に加えて煮込むとスープに自然なとろみと清涼感ある苦みが生まれて牛肉の旨みとともに奥深い一杯を作り出しますが、アナモが入手できない日本でも同様の個性の青菜を組み合わせることで十分にロマザヴァの精神を再現できます。ロマザヴァの決め手は牛肉をトマトとともにじっくりと炒め煮にして肉から旨みを引き出した上で煮汁をスープのベースにすることと、青菜を充分な量(思い切って多め)加えて煮ることで青菜の旨みとスープが一体化することであり、この二つが揃って初めてアンタナナリヴの家庭や地方の食堂で食べるロマザヴァの力強い滋味に近づきます。マダガスカルではロマザヴァはライス(アンパンガ)と組み合わせて食べる「リ・ソース(riz sauce)」として毎日の食事の中心を担っており、マダガスカル人が一日三食のいずれかで必ずといっていいほど食べる料理として、マダガスカルの食文化の最も根深いところに位置しています。

料理の歴史と背景

ロマザヴァの起源はマダガスカルの先住民族の食文化とインド洋交易を通じてもたらされた外来の食材・料理文化の融合に遡ります。マダガスカルにはおよそ1500〜2000年前にインドネシア・ボルネオ島方面からオーストロネシア語族の人々が移住してきたことが言語学・遺伝学・考古学によって確認されており、この最初の移住者たちが東南アジアの農耕文化・米食文化・料理文化をマダガスカルに持ち込んだとされています。その後アフリカ大陸東部・アラビア半島・インド南部からの移住者や交易商人が加わることでマダガスカルの食文化は多様な層を重ねながら発展し、東南アジア・東アフリカ・アラブ・インドの食材と調理法が融合した独自の料理文化が形成されました。ロマザヴァの主役である牛肉はマダガスカル在来のコブウシ(ゼブ牛)の文化と深く結びついており、ゼブ牛はマダガスカルで古来より富と地位の象徴として大切にされてきた動物で、牛肉を使った料理はもともと特別な祝宴の料理として位置づけられていました。時代とともに牛肉が日常的に入手できるようになるにつれてロマザヴァは祝宴料理から毎日の家庭料理へと民主化され、現在のように全国民が日常的に食べる国民食としての地位を確立したとされています。

現代のマダガスカルにおいてロマザヴァはアンタナナリヴ・トアマシナ・マジュンガ・フィアナランツォアをはじめ全国の家庭・食堂・レストランで日常的に作られており、マダガスカルを訪れる旅行者が最初に口にするマダガスカル料理として国際的に知られています。1960年のマダガスカルのフランスからの独立後に国民的な食文化としての位置づけがあらためて確立され、ロマザヴァはマダガスカルの国民的アイデンティティを体現する料理として食文化行事・学校教育・観光促進の文脈で積極的に発信されるようになりました。マダガスカルのコブウシ(ゼブ牛)文化との深い結びつきから、ロマザヴァはマダガスカルの農村文化・牧畜文化を語る上で欠かせない料理として人類学者・食文化研究者からも高い関心を集めています。日本ではマダガスカル料理はほとんど知られていないものの、アフリカ料理・インド洋の島嶼料理への関心の高まりとともに、牛肉と大量の青菜をスープとともに白飯にかけて食べるというシンプルながら滋養あふれるロマザヴァのスタイルが健康志向の日本人の関心を少しずつ引き始めており、東南アジアとアフリカが交差する独特の食文化の産物として食文化ライターや旅行ブロガーの間で紹介される機会が増えています。

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