アジア

東ティモールの定番バタールダーンのレシピ

21世紀最初の独立国、東ティモールの家庭料理「バタールダーン」。とうもろこし、カボチャ、緑豆をじっくりと煮込んだ、肉を使わないのに驚くほど深い旨味と甘みが溢れる、素朴で温かい伝統的なシチューの本格レシピを過酷な歴史的背景とともにご紹介します。

東ティモールの定番バタールダーンのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
40 調理時間
4人前 分量
約200kcal カロリー

材料

  • とうもろこし(生の粒または冷凍コーン・水煮コーン) 200g
  • カボチャ 300g
  • 乾燥の緑豆(ムング豆・なければ大豆やインゲン豆の水煮缶で代用) 100g
  • 玉ねぎ 1/2個
  • ニンニク 2片
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 水 約400ml
  • 塩 小さじ1
  • 黒こしょう 少々
  • 【添え物】
  • 白ご飯 適量

バタールダーンの作り方

◎緑豆(ムング豆)の下茹でをする
乾燥の緑豆100gをさっと水洗いし、小鍋にたっぷりの水とともに入れて火にかけます。沸騰したら弱火にし、指でつまんで簡単につぶれるくらい柔らかくなるまで30〜40分ほど茹で、ザルに上げておきます。手軽に作りたい場合は、市販の大豆の水煮やインゲン豆の水煮で代用することも可能です。

◎香味野菜をオリーブオイルで炒める
玉ねぎ1/2個とニンニク2片を細かいみじん切りにします。厚手の鍋にオリーブオイル大さじ2を熱し、みじん切りにした野菜を入れて弱火にかけます。焦がさないように注意しながら、玉ねぎが透き通り、ニンニクの甘い香りが鍋いっぱいに広がるまでじっくりと炒め、シチューのベースとなる風味を引き出します。

◎大地の恵み(野菜)を加えて炒め合わせる
鍋に、一口大に切ったカボチャ300gと、生のとうもろこしの粒(または冷凍コーン、水煮コーン)200g、そして先ほど茹でておいた緑豆を加えます。オリーブオイルと香味野菜の香りをすべての野菜にまとわせるように、中火で軽く炒め合わせます。

◎水を加えてじっくりと煮込む
野菜がひたひたになる程度の水(約400ml)を加えます。強火にして一度沸騰させ、アクが出たら丁寧に取り除きます。その後、蓋をして弱火に落とし、20分から30分ほどコトコトと煮込みます。途中、鍋底が焦げ付かないように時々木べらで優しくかき混ぜます。

◎カボチャを潰してとろみをつけ、味を調える

東ティモールの定番バタールダーンの完成品 盛り付け画像

盛り付けたバタールダーン

カボチャの角が取れて煮崩れてきたら仕上げの合図です。木べらを使ってカボチャの半分ほどをわざと潰し、スープ全体に黄色いとろみをつけます。最後に塩小さじ1と、黒こしょう少々を加えて味を調えます。野菜の甘みを引き立てるため、塩加減は少ししっかりめにするのが美味しく仕上げるコツです。


東ティモール 国旗

東ティモールの国旗

21世紀最初の独立国として知られる東ティモール民主共和国。東南アジアのティモール島東半分を占めるこの小さな国は、長く険しい歴史を乗り越えてきたたくましさと、手つかずの美しい自然、そして人々の底抜けに明るい笑顔が魅力です。そんな東ティモールの人々の心と体を古くから支え続けてきた、最も代表的で愛されている家庭料理が「バタールダーン(Batar Da’an)」です。現地の言葉(テトゥン語)で「バタール」はとうもろこし、「ダーン」は煮る・茹でるを意味します。その名の通り、とうもろこし、カボチャ、そして緑豆(ムング豆)という三つの主要な農作物を、オリーブオイルと玉ねぎでじっくりと煮込んだだけの極めてシンプルなシチューです。驚くべきことに肉や魚の出汁を一切使いませんが、それぞれの野菜が持つ力強い甘みとホクホクとした食感が鍋の中で溶け合い、信じられないほど深いコクと旨味を生み出します。過酷な時代を生き抜くための知恵から生まれ、今もなお食卓の中心にある、大地の恵みが詰まった温かい伝統レシピをご紹介します。

料理の歴史と背景

東ティモールの歴史は、約400年にわたるポルトガルの植民地支配と、その後のインドネシアによる厳しい占領という、長く苦難に満ちたものでした。2002年に悲願の独立を果たすまで、長引く紛争によって物資が慢性的に不足する中、人々が命を繋ぐために頼ったのが、この過酷な環境でも育つ身近な農作物でした。特にとうもろこしは、雨季と乾季がはっきりしている東ティモールの気候でも比較的栽培しやすく、米と並んで古くから主食として重宝されてきました。バタールダーンは、そんな自給自足の厳しい生活の中で、いかにして家族のお腹を満たし、栄養を摂取するかという母たちの深い愛情と切実な祈りから生まれた料理と言えます。大航海時代にポルトガル人が南米から持ち込んだとされるとうもろこしやカボチャが、島に自生する豆類と出会い、長きにわたる歴史の中で東ティモール独自の国民食へと定着していったのです。現在でも、農村部では自家栽培した野菜を薪の火でコトコトと煮込み、家族全員で鍋を囲む風景が日常的に見られます。

「三姉妹」の農作物が織りなす魔法のバランス

とうもろこし、カボチャ、豆。アメリカ大陸の先住民たちが「三姉妹(スリー・シスターズ)」と呼んで共生栽培してきたこの三つの作物の組み合わせは、栄養学的に見ても完璧なバランスを誇ります。とうもろこしの炭水化物、豆の良質な植物性タンパク質、そしてカボチャの豊富なビタミンとカロテン。これらを一緒に煮込むバタールダーンは、肉や魚といった動物性タンパク質が手に入らない環境において、完全栄養食に近い役割を果たしてきました。調理の最大のポイントは、カボチャがドロドロになるまで、弱火でじっくりと煮込むことです。カボチャの甘みがスープ全体に溶け出して天然の「とろみ」となり、それが緑豆のホクホク感と、とうもろこしのプチプチとした食感を優しく包み込みます。味付けは塩と少々の黒こしょうのみという潔さですが、だからこそ素材の質がダイレクトに味に影響します。日本でこの料理を再現する際、例えば新鮮なとうもろこしや甘みの強いカボチャが豊富に採れる北の大地の恵みをふんだんに活用することで、この素朴な南国の料理は驚くほど豊かで洗練された味わいへと昇華されます。

映像に映える黄金色のシチューと、分かち合いの食卓

鍋の中でフツフツと音を立てて煮込まれるバタールダーン。黄色、オレンジ、淡い緑という鮮やかな色彩が混ざり合う黄金色のシチューは、動画や映像のレンズを通しても、その温もりと豊かな大地の香りが画面越しに真っ直ぐ伝わってくるほど魅力的です。東ティモールでは、これをそのままスープとして食べるだけでなく、炊きたての白ご飯(ライス)にたっぷりとかけて、少しずつ混ぜ合わせながら食べるのが最もポピュラーな楽しみ方です。時には、これにパパイヤの葉を炒めたものや、唐辛子で作った辛味調味料(アイマナス)が添えられることもあり、それが彼らにとっての最高のご馳走となります。決して派手で豪華な料理ではありませんが、一口食べれば、野菜本来の素朴で力強い甘みが心と体を優しく解きほぐしてくれます。忙しい現代の日本の食卓にこそ、素材の味を極限まで引き出し、時間をかけてコトコトと煮込むこのようなスローフードが必要なのかもしれません。地球の裏側にある小さな島国の人々が大切に守り抜いてきた「平和の味」を、ぜひご自宅のキッチンで再現してみてください。

関連タグ

このレシピは役に立ちましたか?サイトの継続運営への応援をお待ちしています。

Ko-fiで応援する

レビュー

このレシピを評価する

コメントは管理者の審査を経て掲載されます