トリニダード・トバゴの定番ダブルスのレシピ
カリブ海南端の島国トリニダード・トバゴを代表する、熱狂的なストリートフード「ダブルス」。ターメリックが香る黄金色の揚げパン(バラ)で、スパイスの効いたひよこ豆のカレー(チャナ)を挟み込む、インド系移民の歴史と労働者階級の力強いビートが刻まれた本格レシピをご紹介します。
材料
- 【バラ(揚げパン生地)】
- 中力粉(または強力粉150gと薄力粉150gのブレンド) 300g
- ドライイースト 小さじ1
- ブラウンシュガー(または砂糖) 小さじ1
- 塩 小さじ1/2
- ターメリックパウダー 小さじ1
- クミンパウダー 小さじ1/2
- ぬるま湯 約180〜200ml
- 揚げ用サラダ油 たっぷり
- 【チャナ(ひよこ豆カレー)】
- ひよこ豆(水煮) 400g(1缶)
- 玉ねぎ 1/2個
- ニンニク 2片
- カレーパウダー(ジャマイカンカレーまたは一般的なカレー粉) 大さじ1.5
- クミンパウダー 小さじ1
- サラダ油 大さじ1
- 塩 小さじ1
- 水 200〜300ml
- 【キュウリのチャツネ】
- キュウリ 1本
- ニンニク(すりおろし) 1片分
- ハバネロ(または青唐辛子・お好みの辛さで) 1/2〜1個
- ライム果汁 大さじ1
- 塩 少々
ダブルスの作り方
◎黄金色の揚げパン「バラ」の生地を仕込む
ダブルスの土台となる「バラ」を作ります。ボウルに中力粉(または強力粉と薄力粉のブレンド)、ドライイースト、塩、ブラウンシュガーを入れ、鮮やかな黄色と土の香りを生み出すターメリックパウダー、クミンパウダーを加えます。そこにぬるま湯を少しずつ注ぎ、表面が滑らかになるまでしっかりとこね上げます。生地の表面に薄く油を塗り、ラップをして暖かい場所で約1時間〜1時間半、生地が2倍に膨らむまで一次発酵させます。
◎スパイス香るひよこ豆のカレー「チャナ」を煮込む
バラを発酵させている間に、中身の「チャナ」を作ります。鍋に油を熱し、細かいみじん切りにした玉ねぎとすりおろしたニンニクを香りが立つまでじっくりと炒めます。そこに、カリブ海特有のカレーパウダー(ジャマイカンカレーパウダーなど、オールスパイスが入ったものが最適)を加え、油と馴染ませて香りを爆発させます。水煮のひよこ豆を加え、ひたひたの水を注いで弱火で煮込みます。ひよこ豆が指で簡単につぶれるほど柔らかくなり、ソースにとろみがつくまで煮詰めたら、塩で味を調えます。
◎爽やかな刺激「キュウリのチャツネ」を調合する
ダブルスの味の輪郭を決定づけるのが、トッピングのチャツネです。今回は最もポピュラーで爽やかなキュウリのチャツネを用意します。キュウリをすりおろし(または極細かいみじん切りにし)、しっかりと水気を絞ります。そこに、すりおろしたニンニク、ライム果汁、塩、そして強烈な辛味を持つハバネロ(または青唐辛子)の細かいみじん切りを混ぜ合わせます。この爽やかな酸味と暴力的な辛味が、揚げパンとカレーの重たさを劇的に中和してくれます。
◎バラを薄く伸ばし、高温の油で一気に揚げる
発酵が終わったバラの生地をピンポン玉より少し小さいサイズに分割し、丸めます。手にたっぷりと油を塗り、台の上で生地を直径10センチほどの薄い円形に手で引き伸ばします。180度以上の高温に熱したたっぷりの油に生地を静かに滑り込ませます。生地は油に入った瞬間にプクッと膨らみます。片面約10〜15秒ずつ、色がつかない程度にサッと短時間で揚げ、ふんわりとした食感を保ったまま油から引き上げます。
◎熱々のバラでチャナを挟み込む

盛り付けたダブルス
揚げたての柔らかいバラを1枚手に取り、お皿に敷きます。その中央に、熱々でトロトロのチャナ(ひよこ豆カレー)を大さじ2杯ほどたっぷりと乗せます。上からキュウリのチャツネをお好みの量(辛さに注意して)トッピングし、もう1枚のバラで上からフタをするように挟み込みます。この「2枚のパンで挟む」スタイルこそが、この料理が「ダブルス」と呼ばれる所以です。

トリニダード・トバゴの国旗
南米大陸のすぐ北、カリブ海の最南端に位置する島国、トリニダード・トバゴ。世界三大カーニバルの熱気とスティールパンの軽快な音色が響き渡るこの国で、早朝のストリートから深夜の屋台まで、人々の胃袋を常に満たし続けている絶対的なソウルフードが「ダブルス(Doubles)」です。ダブルスとは、ターメリックで黄色く色付けされた「バラ(Bara)」と呼ばれるフワフワの薄い揚げパン2枚で、「チャナ(Channa)」と呼ばれるスパイシーなひよこ豆のカレーをたっぷりと挟み込んだ、極めてシンプルかつエネルギーに満ちたストリートフードです。そこに、キュウリやタマリンドで作られた甘酸っぱくも激辛なチャツネ(ソース)を豪快にぶっかけ、油とカレーソースで手をベタベタにしながら立ち食いするのがトリニダードの流儀。一口かじれば、カリブ海の陽気さとインド由来の複雑なスパイスが口の中で爆発し、一度食べたら忘れられない強烈な中毒性を持ちます。
料理の歴史と背景
ダブルスのルーツは、19世紀中頃にイギリスの植民地政策によって、はるばるインドからトリニダード・トバゴのサトウキビ農園へと連れてこられた「年季奉公人(インデンチャード・レイバー)」たちの過酷な歴史にあります。彼らは祖国からカレーのスパイスやひよこ豆、そして揚げパン(バトゥーラ)の食文化を持ち込みました。当初、この料理は「チャナ・バトゥーラ」として親しまれていましたが、1930年代のある日、屋台でこれを売っていた商人に、労働者の一人が「パン(バラ)をもう1枚追加して(ダブルにして)くれ」と頼んだことから、「ダブルス」という呼び名が定着したと言われています。高価な肉を一切使わず、安価で腹持ちが良く、強烈なスパイスで疲れた体にエネルギーを叩き込んでくれるダブルス。それは、人々にとって、単なる食事を超えた「命の燃料」でした。
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