アジア

カザフスタンの定番バシュバルマクのレシピ

「五本の指」を意味するカザフスタンの国民食。羊肉または馬肉を骨ごと煮込み、幅広の平麺と玉ねぎのソースを重ねて大皿に盛り、スープとともに手で食べる中央アジアの饗宴料理の本格レシピを歴史とともに紹介します。

カザフスタンの定番バシュバルマクのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
150 調理時間
4人前 分量
約650kcal カロリー

材料

  • 骨付き羊肉(ラム肩またはレッグ) 1kg
  • 玉ねぎ 3個(煮込み用1個・ソース用2個)
  • ニンニク 3片
  • 黒胡椒粒 10粒
  • ローリエ 2枚
  • バター 大さじ4
  • 塩 適量
  • 黒胡椒(挽き) 適量
  • パセリ 適量
  • 【ジャイ(平麺)】
  • 強力粉 200g
  • 薄力粉 100g
  • 卵 1個
  • 水 80〜100ml
  • 塩 小さじ1/2

バシュバルマク(Beshbarmak / Бесбармақ)はカザフ語で「五本の指」を意味する料理名を持つカザフスタンの国民食だ。骨付きの羊肉または馬肉を数時間かけてじっくりと煮込み、その煮汁で茹でた幅広の平麺(ジャイ)と玉ねぎを重ねて大皿に盛り付け、別器に注いだ濃厚なスープ(ソルパ)とともに食べる。名前の通り、かつては食卓を囲む全員が大皿から手づかみで食べるスタイルが正式なもてなしの形だった。ゲストに最も栄誉ある部位(頭・腎臓・尾など)を差し出す習慣は今も続いており、バシュバルマクは単なる料理を超えたカザフの歓待文化そのものを体現している。

バシュバルマクの作り方

◎肉を煮込む
骨付き羊肉(ラム肩またはラムレッグ)1kgを大きめの鍋に入れ、水をたっぷりかぶるまで注ぐ。強火で沸騰させてアクを丁寧にすくい取り、玉ねぎ1個(半割り)・ニンニク3片・黒胡椒粒10粒・ローリエ2枚・塩小さじ2を加える。蓋をして弱火で2時間〜2時間30分、肉が骨からほぐれるほど柔らかくなるまでじっくりと煮込む。煮上がったら肉を取り出し、煮汁を細かいざるで漉して取り置く。(アクを丁寧に取り除くことが澄んだ黄金色のスープを作る最重要工程。弱火でじっくり煮ることで肉の旨みが煮汁全体に広がる。馬肉が入手できる場合は羊肉と半々に使うと本場の風味に近づく)

◎平麺(ジャイ)の生地を作る
強力粉200g・薄力粉100gをボウルに混ぜ、塩小さじ1/2・卵1個・水80〜100ml(様子を見ながら加える)を加えてよく捏ねる。生地が滑らかになったらラップに包んで30分休ませる。休ませた生地を打ち粉をした台の上で麺棒で2〜3mm厚に薄く伸ばし、8cm×8cm程度の正方形または菱形に切り分ける。(生地は薄ければ薄いほど本場に近いが、破れない程度の厚さで伸ばすこと。切り分けたジャイは茹でるまで打ち粉をまぶして乾燥させておくと扱いやすい。時間がなければ市販のワンタンの皮またはぎょうざの皮で代用できる)

◎玉ねぎのソース(タブ)を作る
玉ねぎ2個を薄い輪切りにする。フライパンにバター大さじ2を熱し、玉ねぎを中火で5〜6分、しんなりするまで炒める。取り置いた煮汁を100ml加え、2〜3分煮てなじませる。塩・黒胡椒で味を調える。(玉ねぎは炒めすぎず、しんなりして透明になった程度が正式。煮汁を加えることで玉ねぎに肉の旨みが加わる。好みで細かく刻んだパセリを加えると彩りが良くなる)

◎ジャイを煮汁で茹でる
取り置いた煮汁を別鍋で沸騰させ、塩で味を調える。切り分けたジャイを数枚ずつ入れ、3〜5分茹でて火が通ったら取り出す。茹で上がったジャイにバターを軽く絡めてくっつかないようにしておく。(煮汁で茹でることで平麺に肉の旨みが染み込み、水で茹でたものとは全く異なる深みが出る。一度にたくさん入れると麺同士がくっつくため、少量ずつ茹でること)

◎盛り付ける

カザフスタンの定番バシュバルマクの完成品 盛り付け画像

盛り付けたバシュバルマク

大きな平皿にジャイを敷き詰め、その上に食べやすくほぐした羊肉をのせ、玉ねぎのソースをかける。取り置いた煮汁を別の器(ピアラと呼ばれる椀)に注いでスープとして提供する。食べながらスープを交互に飲む。(本場では大皿を食卓の中央に置き全員で取り分けて食べる。家族や友人の多い場では骨付きの大きな肉ごと盛り付けると豪快さが増す。仕上げに黒胡椒を挽きかけ、パセリを散らすと見た目が美しくなる)

料理の歴史と背景

バシュバルマクの起源はユーラシアのステップ(草原)地帯を移動しながら生きたテュルク系・モンゴル系の遊牧民族の食文化にある。広大な草原を牧畜とともに移動する生活においては、羊・馬・ラクダを主要なタンパク源とし、それらを余すところなく使い切る調理法が発達した。茹でるという調理技術はステップ地帯でもっとも普及した方法であり、骨ごと大きな鍋で煮込んで肉と煮汁を両方活用するバシュバルマクの形式はその集大成といえる。平麺のジャイが加わったのは農耕民族との交流が進んだ後のことで、小麦粉の生地を煮汁で茹でるという組み合わせが生まれたのは中世以降とされている。「五本の指で食べる」という名称は遊牧の宴席では食器を持ち歩く必要がなく、手で食べることが自然なスタイルだったことを示している。

カザフスタンが旧ソビエト連邦から独立した1991年以降、バシュバルマクはカザフの民族的アイデンティティを体現する料理として改めて重要視されるようになった。ソビエト時代に一時的に廃れかけた伝統的な饗宴スタイル——ゲストへの部位ごとのもてなしの作法、ソルパを飲みながら語り合う食卓の文化——が復興し、結婚式・葬儀・ナウルズ(春分の祭り)などの重要な行事には必ず大量のバシュバルマクが振る舞われる。カザフスタンに隣接するキルギス・ウズベキスタン・中国新疆ウイグル自治区にも同系統の料理が存在し、それぞれ「ベシュバルマク」「ナリン」などの名称で呼ばれている。2019年にはカザフスタン政府がバシュバルマクのユネスコ無形文化遺産登録を目指す動きを見せており、ステップの食文化を国際的に発信しようとする試みが続いている。

関連タグ

このレシピは役に立ちましたか?サイトの継続運営への応援をお待ちしています。

Ko-fiで応援する