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北朝鮮の定番平壌冷麺のレシピ

牛骨・牛すね肉・雉(またはチキン)を長時間煮出した澄んだ冷製スープに、そば粉とでんぷんを合わせた細くしなやかな麺を泳がせ、薄切り牛肉・大根キムチ・ゆで卵・きゅうりをのせる、平壌発祥の朝鮮半島最古の麺料理。雑味のない透明なスープの深みを、歴史とともに紹介します。

北朝鮮の定番平壌冷麺のレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
210 調理時間
4人前 分量
約380kcal カロリー

材料

  • 牛骨(げんこつまたは牛足) 500g
  • 牛すね肉 300g
  • 水 2.5リットル
  • 長ねぎ(青い部分) 1本
  • 生姜 20g
  • ニンニク 4片
  • 黒こしょう粒 10粒
  • 塩 小さじ1と1/2
  • 薄口醤油 小さじ1
  • 砂糖 小さじ1/2
  • 食酢 小さじ1
  • 【麺・具材】
  • 平壌冷麺用乾燥麺(そば粉・でんぷん配合) 320g(4人分)
  • ゆで卵 2個(半分に切る)
  • きゅうり 1本(千切り)
  • 白ごま 適量
  • からし・酢 各適量(添え物)
  • 【カクトゥギ(大根キムチ)】
  • 大根 300g
  • コチュカル(韓国産粉唐辛子) 大さじ1
  • ニンニク 1片
  • 生姜 小さじ1/2
  • 砂糖 小さじ1
  • ナンプラー 小さじ1
  • ごま油 小さじ1
  • 塩 大さじ1(下塩用)

平壌冷麺(ピョンヤンネンミョン)は北朝鮮・平壌を発祥とする朝鮮半島最古の麺料理のひとつで、牛骨・牛すね肉・雉(またはチキン)を数時間かけてゆっくりと煮出した黄金色に澄んだスープを完全に冷やしてから、そば粉とじゃがいもでんぷんまたはさつまいもでんぷんを合わせてこねた細くしなやかな麺を冷製スープに泳がせ、薄切りの茹で牛肉・大根キムチ(カクトゥギ)・ゆで卵の半分・きゅうりの千切りを彩りよくのせて食べる、平壌をはじめ朝鮮半島全域で深く愛されてきた格調ある料理です。平壌冷麺最大の個性は極限まで雑味を取り除いた透き通る澄んだスープにあり、牛骨の出汁とそば粉の麺が生み出す滋味深い旨みはソウルの冷麺(ハムフン冷麺)の辛みとはまったく異なる方向性の美しさとして、朝鮮半島の麺文化の中でも最も格式高い料理として評価されています。平壌冷麺の決め手は牛骨を丁寧に下茹でして血抜きをしてから長時間煮出してアクを丁寧に取り除きながら雑味のない清澄なスープに仕上げることと、そば粉とでんぷんを合わせた麺を茹でた後に冷水でしっかりと締めて独特のしなやかなコシを出すことであり、この二つが揃って初めて平壌の老舗冷麺店で食べる冷麺の透明感と風味に近づきます。朝鮮半島では平壌冷麺は冬の料理として始まりながら今日では四季を通じて食べられており、朝鮮民主主義人民共和国では平壌の「玉流館(オンリュグァン)」が平壌冷麺の総本山として知られ、韓国でも平壌式の冷麺専門店が高い人気を集めており、南北分断という政治的な隔絶を超えて朝鮮半島全体に共有される数少ない食文化のひとつとして特別な位置を占めています。

平壌冷麺の作り方

◎スープの骨と肉を下処理する
牛骨(げんこつまたは牛足)500gを大きめの鍋に入れ、かぶるくらいの水を注いで強火にかける。沸騰したら5〜10分茹でてから湯を捨て、骨についた血と汚れを流水でよく洗い流す。牛すね肉300gも同様に熱湯で5分下茹でして流水で洗う。(下茹でと血抜きは平壌冷麺の澄んだスープを作る最重要工程。この工程を丁寧に行うことで雑味のない美しい黄金色のスープが生まれる。骨はできれば前日から水に浸けて血抜きをしておくとより透明度の高いスープになる。牛骨はスーパーの精肉コーナーまたは韓国・朝鮮系食材店で入手できる。雉(きじ)が入手できる場合は骨付きのまま同様に下茹でして加えると、より本場の香りに近づく)

◎スープを長時間煮出す
洗った牛骨・牛すね肉を大きめの鍋に入れ、水2.5リットル・長ねぎ1本(青い部分)・生姜20g(薄切り)・ニンニク4片・黒こしょう粒10粒を加えて強火にかける。沸騰したらすぐに弱火に落とし、浮いてくるアクをていねいにすくい取りながら2〜3時間静かに煮出す。牛すね肉が箸でほぐれるやわらかさになったら取り出し、骨はさらに1時間煮出す。スープをザルまたはガーゼで漉して清澄な状態にし、完全に冷ましてから冷蔵庫で一晩冷やす。翌日表面に固まった脂をすくい取り、塩小さじ1と1/2・薄口醤油小さじ1・砂糖小さじ1/2で味を調え、食酢小さじ1を加える。(スープは絶対に沸騰させ続けないこと。強火で沸かし続けると脂が乳化してスープが白濁し、平壌冷麺特有の澄んだスープにならない。弱火でじっくりと静かに煮出すことが透明感の鍵。冷やして固まった脂を取り除くことでさらに澄んだ仕上がりになる。スープは前日に作り置きするのが必須。作りたてでは冷やす時間が足りない)

◎大根キムチ(カクトゥギ)を仕込む
大根300gを2cm角のさいの目に切る。塩大さじ1を大根全体にまぶして30分置き、出てきた水気をよく絞る。コチュカル(韓国産粉唐辛子)大さじ1・ニンニク1片(すりおろし)・生姜小さじ1/2(すりおろし)・砂糖小さじ1・ナンプラー小さじ1・ごま油小さじ1を加えてよく混ぜ合わせ、密閉容器に入れて常温で半日〜1日発酵させてから冷蔵庫で保存する。(カクトゥギは平壌冷麺に欠かせない付け合わせ。市販の大根キムチで代用でき、韓国食材店で入手できる。コチュカルの量は好みに合わせて調整してよいが、平壌冷麺のスープは淡白なため、カクトゥギの辛みとの対比が重要。最低でも半日以上発酵させると大根から旨みが引き出されて美味しくなる)

◎麺を茹でて冷やす
平壌冷麺用の乾燥麺(そば粉・でんぷん配合の冷麺麺・韓国食材店で入手可能)を袋の表示より1〜2分長く、4〜5分茹でる。茹で上がった麺をザルに上げ、流水でよくもみ洗いしてでんぷんを落とし、氷水の入ったボウルにしっかりと浸けて完全に締める。水気をよく切って器に丸めて盛る。(平壌冷麺の麺はそば粉とじゃがいもでんぷんまたはさつまいもでんぷんを合わせた独特の麺で、日本のそば麺とも春雨とも異なるしなやかなコシと独特の黒みがかった色が特徴。市販の冷麺麺(乾燥・冷凍)は韓国食材店・ネット通販で入手できる。氷水でしっかりと締めることで麺のコシが出て、スープを吸いすぎずに本来の食感を保てる)

◎仕上げて盛り付ける

北朝鮮の定番平壌冷麺の完成品 盛り付け画像

盛り付けた平壌冷麺
取り出して冷ました牛すね肉を繊維に沿って薄くスライスする。器に麺を盛り、よく冷えたスープを麺がひたひたに浸かる量(200〜250ml)注ぐ。薄切りの牛すね肉・カクトゥギ・ゆで卵の半分・きゅうりの千切りを彩りよくのせ、白ごまを散らして仕上げる。からしと酢を小皿に添えて各自で好みに合わせて加えながら食べる。(スープは器ごと冷凍庫で10〜15分冷やしてから注ぐと最後まで冷たさが保たれる。本場の平壌冷麺は具材を豪勢に盛らずシンプルに仕上げるのが特徴。まずスープだけをひとくち飲んでから麺を食べ始めるのが平壌流の食べ方。からしと酢は最初から加えずにスープ本来の味を楽しんでから少量ずつ加えて味の変化を楽しむこと)

料理の歴史と背景

平壌冷麺の起源は少なくとも朝鮮王朝時代(1392〜1897年)に遡るとされており、19世紀初頭に書かれた朝鮮の食文化書「東国歲時記(トングクセシギ)」(1849年)には平壌の冷麺についての記述が残っています。朝鮮半島北部は冬の寒さが厳しく、冬に屋外の自然の冷気を利用して麺と出汁を冷やして食べる料理として冷麺が生まれたという説が有力で、厳冬期の朝鮮半島北部では冷麺は温かい部屋でオンドル(床暖房)に暖まりながら食べる冬の料理として親しまれていました。平壌がそば粉の産地として知られていたこと、そして平壌周辺で牛の飼育が盛んだったことが、そば粉の麺と牛骨スープを組み合わせた平壌冷麺の成立に大きく寄与したとされています。日本植民地時代(1910〜1945年)には平壌の冷麺は朝鮮半島南部にも広まり、解放後の南北分断(1945年)により朝鮮半島南部に流れた北朝鮮出身の避難民たちが韓国各地で冷麺店を開いたことで、韓国でも平壌式の冷麺文化が根付きました。

現代の北朝鮮においては平壌の「玉流館(オンリュグァン)」が平壌冷麺の総本山として国家的に重要視されており、1960年に創業した玉流館は金日成・金正日・金正恩の三代にわたる指導者が会食に使う国家的な食堂として特別な位置を占めています。2018年4月の南北首脳会談では板門店の会食に玉流館の料理人が派遣されて平壌冷麺を提供したことが世界的に報じられ、平壌冷麺が南北対話の象徴として国際的な注目を集めました。韓国では「을지면옥(ウルチミョノク)」「필동면옥(ピルドンミョノク)」など平壌出身者が創業した老舗冷麺店がソウルで営業を続けており、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている朝鮮半島の冷麺文化の担い手として高い評価を受けています。日本では在日朝鮮・韓国系の料理店を中心に平壌式冷麺が提供されており、近年は韓国料理ブームとともに澄んだスープの上品な美味しさが日本人のあいだでも再評価されています。

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