アジア

モンゴルの定番ボーズのレシピ

モンゴルの旧正月(ツァガーン・サル)や大切なおもてなしの席に絶対に欠かせない伝統的な蒸し餃子「ボーズ」。羊肉の野性味あふれる旨味と、噛んだ瞬間に溢れ出す熱々の肉汁を、手作りのモチモチ生地で包み込んだ遊牧民の英知が詰まった本格レシピをご紹介します。

モンゴルの定番ボーズのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
60 調理時間
4人前 分量
約420kcal カロリー

材料

  • 【生地(皮)】
  • 中力粉(または強力粉150gと薄力粉150gを混ぜたもの) 300g
  • 塩 ひとつまみ
  • 常温の水 約150〜170ml
  • 【餡(具材)】
  • 羊肉の粗挽き(マトンまたはラム・なければ牛豚の合い挽き肉) 300g
  • 玉ねぎ 1/2個
  • ニンニク 1片
  • 塩 小さじ1強
  • 黒こしょう(またはキャラウェイシード) 少々
  • 水 大さじ2〜3

ボーズの作り方

◎水と粉だけで生地(皮)をこねる
大きめのボウルに中力粉(または強力粉と薄力粉を半々で混ぜたもの)300gを入れます。塩をひとつまみ加え、常温の水を少しずつ加えながら指先で混ぜ合わせていきます。そぼろ状になったら台の上に取り出し、表面がなめらかになり、耳たぶほどの硬さになるまで手のひらの付け根を使ってしっかりとこね上げます。こね上がった生地は乾燥しないように濡れ布巾やラップで包み、室温で30分ほど休ませてグルテンを落ち着かせます。

◎肉汁たっぷりの餡(具材)を作る
生地を休ませている間に中身を作ります。ボウルに粗挽きの羊肉(マトンまたはラム、手に入らなければ牛豚の合い挽き肉で代用)300gを入れます。そこに、ごく細かいみじん切りにした玉ねぎ1/2個と、すりおろしたニンニク1片を加えます。モンゴル料理の特徴は味付けのシンプルさにあります。塩小さじ1強と、黒こしょう(またはキャラウェイシード)を少々加え、肉に粘り気が出て玉ねぎが完全に馴染むまで手でしっかりとこね合わせます。パサつきを防ぎ肉汁を増やすため、大さじ2〜3杯の水を加えてさらに練り込むのがジューシーに仕上げる最大のコツです。

◎生地を伸ばして肉を包み込む
休ませた生地を棒状に伸ばし、親指の先ほどの大きさ(約10〜15g)に切り分けます。切り口を上にして手のひらで押し潰し、小さな麺棒を使って直径7〜8センチの円形に伸ばします。この時、中央部分は少し厚めに、縁の部分は薄く伸ばすことで、蒸した時に底が破れにくくなります。生地の中央に大さじ1杯分の餡を乗せ、縁を親指と人差し指でつまんでひだを寄せながら、巾着状に包み込みます。上部を完全に閉じるスタイルと、少しだけ穴を開けて肉汁の逃げ道を作るスタイルがあります。

◎蒸し器でじっくりと熱を入れる
蒸し器の底に、クッキングシートを敷くか、薄く油を塗っておきます(現地ではくっつき防止のために蒸し器の底に直接少量の油を塗ります)。包んだボーズを、蒸気で膨らむことを考慮して少し間隔を空けて並べます。蒸し器の湯がしっかりと沸騰していることを確認してからセットし、強火で約15分から20分間、一気に蒸し上げます。

◎熱々の肉汁をすすりながら味わう

モンゴルの定番ボーズの完成品 盛り付け画像

盛り付けたボーズ

蒸し器の蓋を開けると、もうもうと立ち上る湯気の中から、艶やかに光るボーズが現れます。お皿に盛り付け、熱々のうちに手でつまんでいただきます。まずは皮の端を少しだけかじり、中に溜まった濃厚なスープ(肉汁)を「ズズッ」とすすり飲んでから、モチモチの皮と肉を一緒に頬張るのがモンゴル流の最も美味しい食べ方です。


モンゴル 国旗

モンゴルの国旗

見渡す限りに広がる青い空と緑のステップ(大草原)、そして風を切りながら馬を駆る遊牧民たち。ユーラシア大陸の中心に位置するモンゴル国は、厳しい自然環境と共生する独自の遊牧文化を現代に受け継ぐ国です。そんなモンゴルの人々にとって、最高の御馳走であり、来客への最大のおもてなしの心を表現する伝統料理が「ボーズ(Buuz)」です。日本の餃子や中国の小籠包と形は似ていますが、その中身と哲学は全く異なります。たっぷりの野菜や複雑な調味料は一切使わず、主役はあくまで「肉」。荒涼たる大地を生き抜く羊肉や牛肉の野性味あふれる旨味と、熱々の肉汁を、水と小麦粉だけで練り上げた素朴な生地でギュッと包み込みます。極寒の冬を乗り切るための熱量(エネルギー)が詰まった、草原の民のソウルフード。手作りのモチモチとした皮と、肉本来のポテンシャルを極限まで引き出すモンゴル流の本格レシピを、独自の文化背景とともに紐解いていきましょう。

料理の歴史と背景

ボーズの歴史は、モンゴル帝国の時代、あるいはそれ以前から遊牧民の間で受け継がれてきたと言われています。モンゴルの人々は「五畜」と呼ばれる羊、山羊、牛、馬、ラクダの家畜とともに、季節ごとに牧草を求めて移動する生活を送ってきました。彼らの食文化において、夏は家畜の乳から作る「白い食べ物(ツァガーン・イデー)」を主食とし、冬は厳しい寒さを乗り切るために肉類である「赤い食べ物(オラーン・イデー)」を大量に消費します。その赤い食べ物の最高峰に位置するのがこのボーズです。特に、モンゴルの旧正月である「ツァガーン・サル(白い月)」の時期には、各家庭で数千個ものボーズが手作りされます。作られた大量のボーズは、マイナス30度にもなる屋外の板の上に並べられ、天然の冷凍庫でカチカチに凍らせて保存されます。そして、お正月に親戚や友人がゲル(移動式住居)を訪ねてくるたびに、この冷凍ボーズを蒸し器にかけ、温かいおもてなしとして振る舞うのです。ボーズは単なる料理ではなく、厳しい冬の終わりを祝い、人々の無事と絆を確かめ合うための神聖なコミュニケーションツールでもあります。

「スーテイツァイ」と共に味わうゲルの温もり

モンゴルの家庭(ゲル)に招かれ、熱々のボーズが出される時、その傍らには必ず「スーテイツァイ(乳茶)」と呼ばれる飲み物が添えられます。これは、削った黒茶(プーアル茶などに近い発酵茶)を煮出し、たっぷりの牛乳と少量の塩を加えた、モンゴル特有の塩気のあるミルクティーです。ボーズの羊肉の強い脂と旨味を堪能した後、この温かくてほんのり塩っぱいスーテイツァイを飲むと、口の中がさっぱりと洗い流され、不思議なほどにいくらでもボーズを食べ続けることができます。味付けを塩のみで仕上げる引き算の美学と、素材の脂のポテンシャルを丸ごと味わう豪快さ。この料理には、余計な飾りを必要としない遊牧民の力強い生き様がそのまま表れています。少し肌寒い休日の夜に、ご自宅のキッチンで湯気を立たせながら生地をこね、温かいお茶と一緒に、ユーラシア大陸の壮大なロマンに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

関連タグ

このレシピは役に立ちましたか?サイトの継続運営への応援をお待ちしています。

Ko-fiで応援する

レビュー

このレシピを評価する

コメントは管理者の審査を経て掲載されます