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チリの定番クラントのレシピ

南米チリ南部のチロエ島発祥の伝統料理「クラント」。本来は地面に掘った穴に焼け石を敷き詰め、巨大な葉で包んで魚介や肉、芋を豪快に蒸し焼きにする祝祭のご馳走です。日本の家庭の鍋で手軽に再現できる「クラント・エン・オジャ(鍋のクラント)」の本格レシピと、そのダイナミックな歴史をご紹介します。

チリの定番クラントのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
70 調理時間
4人前 分量
約550kcal カロリー

材料

  • アサリ(砂抜き済み) 300g
  • ムール貝(またはホンビノス貝・ハマグリなど) 300g
  • 骨付き鶏もも肉 400g
  • 豚バラブロック肉 300g
  • スモークソーセージ(または太めのウインナー・チョリソー) 4本
  • ニンニク 2片
  • オリーブオイル 大さじ3
  • 白ワイン 200ml
  • キャベツの葉(現地のナルカの葉の代用として) 5〜6枚
  • ジャガイモ(皮付きのまま二等分にする用) 2個
  • 【チャパレレ(芋団子)用】
  • ジャガイモ(男爵などのホクホクした品種) 3個
  • 小麦粉 100g
  • ラード(またはバター) 大さじ1
  • 塩 小さじ1/2

南米大陸の西側を太平洋に沿って細長く伸びる国、チリ。その南部パタゴニア地方の入り口に浮かぶチロエ島は、独自の神話や木造教会群といった世界遺産を持つ、神秘的で風光明媚な島です。この島で古くから受け継がれてきた究極の郷土料理が「クラント(Curanto)」です。本来のクラントは、地面に深く掘った穴(オジョ)の中に真っ赤に焼けた石を敷き詰め、その上に貝類、豚肉、鶏肉、ソーセージ、そして特産のジャガイモで作った団子を地層のように高く積み重ねます。全体を「ナルカ」と呼ばれる巨大な野生の植物の葉ですっぽりと覆い、さらに土を被せて数時間かけて蒸し焼きにするという、非常にダイナミックな野外料理です。島の人々が集まるお祭りや特別な行事の際に、コミュニティ全体で協力して作られるこの料理は、まさにチロエ島の文化の象徴です。今回は、この豪快な料理を日本の家庭のキッチンでも再現できるよう、大きな鍋で作る「クラント・エン・オジャ(鍋のクラント、別名プルマイ)」というスタイルの本格レシピをご紹介します。肉の脂と魚介の濃厚な出汁が白ワインの蒸気で混ざり合う、南米の大地が育んだ奇跡の味わいをご堪能ください。

クラントの作り方

◎魚介と肉の旨味を引き出す準備
ムール貝(またはホンビノス貝)とアサリはしっかりと砂抜きをし、殻の汚れをこすり落としておきます。骨付きの鶏もも肉、豚バラ肉のブロック、そしてスモークソーセージ(またはチョリソー)は大きめの一口大に切り分けます。深い鍋(またはダッチオーブン)にオリーブオイルを熱し、ニンニクのみじん切りを炒めて香りを立たせたら、豚肉と鶏肉の表面に軽く焼き色がつくまで炒め、一度取り出しておきます。

◎チロエ島特有の芋団子(チャパレレ)を作る
クラントに絶対に欠かせないのが、ジャガイモで作るモチモチとした団子です。皮をむいて柔らかく茹でたジャガイモをマッシャーでしっかりと潰し、小麦粉、ラード(またはバター)、塩を加えて耳たぶほどの柔らかさになるまでこね上げます。これを手のひらサイズの手びねりの平らな円盤状に成形しておきます。肉や魚介の旨味をたっぷりと吸い込む、この料理のもう一つの主役です。

◎鍋の中に「地層」を作り上げる
ここからがクラントの醍醐味である「重ね」の工程です。火を止めた大きな鍋の底に、たっぷりのオリーブオイルを塗り、一番下にキャベツの葉(現地のナルカの葉の代用)を数枚敷き詰めます。その上に、アサリとムール貝を平らに敷き、次に炒めておいた豚肉、鶏肉、ソーセージを重ねます。肉の層の上に、先ほど作った芋団子(チャパレレ)と、大きく二等分に切った皮付きのジャガイモを隙間なく並べます。

◎白ワインを注いで豪快に蒸し上げる
具材をすべて積み重ねたら、風味付けの白ワインをたっぷりと注ぎ入れます。そして、一番上の層を隙間ができないようにキャベツの葉で何重にもしっかりと覆い被せます。これが蒸気を逃がさない「蓋」の役割を果たします。鍋の蓋をして強火にかけ、沸騰して鍋肌から湯気が勢いよく吹き出してきたら弱火に落とし、そのまま約40分〜1時間、貝の口が開き、芋が柔らかくなるまでじっくりと蒸し焼きにします。

◎スープとともに大皿で分かち合う

チリの定番クラントの完成品 盛り付け画像

盛り付けたクラント

火を止め、火傷に注意しながら表面のキャベツの葉を取り除きます。立ち上る湯気とともに、魚介と燻製肉の入り混じった信じられないほど豊かな香りが広がります。具材を崩さないように大きな大皿に豪快に盛り付けます。鍋の底に残ったスープ(カルド)は、肉と魚介の極上のエキスが凝縮された黄金の雫です。これをマグカップや小さなボウルに注ぎ、クラントに添えて熱々のうちにいただきます。

料理の歴史と背景

クラントの起源は、スペイン人が南米大陸に到達するはるか以前、チロエ諸島を含むパタゴニア北部の沿岸地帯に住んでいた先住民族(チョノ族やウィジチェ族)の食文化にまで遡ります。彼らは海に潜って貝を獲り、森で狩猟を行い、それらを大地に掘った穴で熱した石とともに蒸し焼きにする「ホットストーン・クッキング」の技術を持っていました。16世紀以降、スペイン人によって豚や鶏、小麦といったヨーロッパの食材が持ち込まれると、先住民の伝統的な調理法と新しい食材が見事に融合し、現在の豪快なクラントの形へと進化を遂げました。チロエ島では、家を建てたり、大きな農作業を行ったりする際、村人全員が協力し合う「ミンガ(Minga)」という美しい相互扶助の風習があります。このミンガの後の盛大な宴において、大人数を一度に労い、お腹を満たすことができるクラントは、共同体の絆を深めるための絶対的なハレの日の食事として機能してきました。

立ち上る湯気を記録する歓び

クラントの最大の魅力は、その調理プロセスのダイナミズムと、完成した瞬間の圧倒的なシズル感にあります。蓋の役割を果たしていた分厚いキャベツの葉をめくった瞬間に、鍋の中から一気に立ち上る真っ白な湯気。その奥から現れる、ピンク色の貝殻、照り輝くソーセージ、そして出汁をたっぷりと吸って黄色く色づいた芋団子。さらに、鍋底でグツグツと音を立てる黄金色のスープ。これほどまでに視覚と嗅覚を強烈に刺激し、食欲を掻き立てる料理はそう多くありません。この沸き立つ鍋の臨場感や、家族や友人が歓声を上げながら大皿を囲む光景は、映像やレンズ越しであってもその熱量が真っ直ぐに伝わります。消えゆくかもしれない現地の味を、ただレシピとして文字で書き残すだけでなく、その土地の食材の息遣いごと切り取って世界へ発信する。クラントの熱々のスープをすすりながら、そんな食文化の記録と伝承のロマンに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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