アフリカ

リビアの定番バジーンのレシピ

北アフリカ・リビアの食卓に欠かせない、金曜日の礼拝後や家族の集まりで振る舞われる国民食「バジーン」。素朴で力強い大麦粉の生地を火山のような美しいドーム型に練り上げ、周囲に羊肉とトマトの濃厚なスパイスシチューをたっぷりと注いだ、遊牧民の知恵と分かち合いの精神が詰まった一皿をご紹介します。

リビアの定番バジーンのレシピ
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上の
郷土レシピ.com代表
90 調理時間
4人前 分量
約550kcal カロリー

材料

  • 大麦粉 300g
  • 水(生地用) 約600ml
  • 塩 小さじ1
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 【シチュー(ハサー)】
  • 骨付き羊肉(またはラムチョップ・牛すね肉) 500g
  • 玉ねぎ 1個
  • ニンニク 2片
  • トマトペースト 大さじ3
  • オリーブオイル 大さじ3
  • ターメリックパウダー 小さじ1
  • チリパウダー(またはカイエンペッパー) 小さじ1/2〜1
  • 黒こしょう 少々
  • 塩 小さじ1.5
  • 水 約1リットル
  • ジャガイモ 2個
  • ゆで卵 4個

北アフリカに位置し、国土の大半をサハラ砂漠が占めながらも、北は美しい地中海に面している国、リビア。この過酷な大自然と交易の歴史が交差する地で、リビア人の魂(ソウルフード)として絶対的な地位を築いているのが「バジーン(Bazeen)」です。精製された小麦粉ではなく、栄養価が高く素朴な風味を持つ「大麦粉(バーレイ)」を熱湯で力強く練り上げ、お皿の中央に火山のような美しいドーム型に盛り付けるのが最大の特徴です。そのドームの周囲のくぼみには、羊肉(またはラクダ肉)の深い旨味が溶け出し、トマトと唐辛子の赤く情熱的な色をしたスパイシーなシチューがたっぷりと注がれます。金曜日の合同礼拝の後に家族全員で一つの大きなお皿を囲み、右手を使って大麦の塊をちぎりながらシチューに浸して食べる時間は、リビアの人々にとって何にも代えがたい至福のひとときです。大地の力強さと家族の絆を象徴する、このダイナミックな北アフリカの伝統料理の奥深き世界へご案内します。

バジーンの作り方

◎シチュー(ハサー)のベースを作る
鍋に多めのオリーブオイルを熱し、みじん切りにした玉ねぎを透き通るまで炒めます。そこに大きめにカットした骨付きの羊肉(手に入りにくい場合はラムチョップや牛すね肉で代用)を加え、表面にこんがりと焼き色がつくまで炒めます。肉の旨味を閉じ込めたら、トマトペースト、すりおろしたニンニク、そしてリビア料理に欠かせないスパイス(ターメリック、チリパウダーまたはパプリカ、黒こしょう)を加え、油とスパイスが馴染んで香りが立つまで弱火でじっくりと炒め合わせます。

◎じっくりと煮込んで旨味を引き出す
スパイスの香りが立ったら、肉が完全に隠れる程度のたっぷりの水を加え、強火で沸騰させます。アクが出たら丁寧に取り除き、蓋をして弱火で約1時間から1時間半、羊肉が骨からホロリと崩れるくらい柔らかくなるまでじっくりと煮込みます。煮込みの後半で、大きく二等分に切ったジャガイモを加え、ジャガイモが柔らかくなるまでさらに煮込んで塩で味をしっかりと調えます。

◎大麦粉のドーム(バジーン)を練り上げる
シチューを煮込んでいる間に、主役となる大麦粉の生地を作ります。別の深い鍋に水と塩を入れて沸騰させ、大麦粉を少しずつ振り入れます。ここからが体力勝負です。「マグラーフ」と呼ばれる専用の太い木の棒(または頑丈な木べら)を使い、火にかけながら生地が滑らかで弾力のあるひとまとめになるまで、鍋肌に押し付けるようにして力強く練り上げます。粉っぽさが消え、つきたてのお餅のような状態になるまで根気よく練り続けるのが最大のポイントです。

◎美しいドーム型に成形する
練り上がった熱々の生地を、油を少し塗った大きなお皿の中央に移します。両手に少量の油(または水)をつけ、火傷に注意しながら、生地の表面を滑らかになでるようにして、底が広く頂上が丸い「火山」や「ピラミッド」のような美しいドーム型に手早く成形します。

◎伝統的な盛り付けで仕上げる

リビアの定番バジーンの完成品 盛り付け画像

盛り付けたバジーン

大麦のドームが完成したら、その周囲のお皿の余白部分に、熱々のトマトシチューをたっぷりと注ぎ入れます。煮込んだ羊肉とジャガイモ、そして別に茹でておいた固ゆで卵をドームの周囲にバランスよく飾り付け、仕上げに少量のオリーブオイルを回しかけて完成です。

料理の歴史と背景

バジーンの歴史は古く、サハラ砂漠を移動しながら生活してきたベドウィン(遊牧民)の食文化に深く根ざしています。雨が少なく乾燥したリビアの過酷な気候において、水分の多い小麦を育てることは極めて困難でしたが、乾燥に強い大麦は力強く根を張り、人々の貴重な栄養源となりました。精白されていない大麦は消化吸収が緩やかで腹持ちが非常に良く、長時間の過酷な移動や労働を支えるには最適な食材だったのです。現代のリビアにおいても、白く柔らかな小麦粉のパンやパスタが日常的に食べられるようになりましたが、「真の力(エナジー)を得るには大麦のバジーンを食べなければならない」と考える人々は多く、特に結婚式やお祝い事、そして家族が揃う金曜日の昼食には、この誇り高き大麦料理が必ずと言っていいほど食卓の中央に鎮座します。

シェア(分かち合い)の精神を体現する大皿

バジーンを語る上で欠かせないのが、「カサア(Gasaa)」と呼ばれる巨大な木製または金属製の共同の大皿の存在です。バジーンは一人一皿で取り分けて食べるものではなく、家族や親戚、時には近所の人々も交えて、一つの大きなお皿を全員で囲んで食べるのが伝統的なスタイルです。スプーンやフォークは使わず、右手の親指、人差し指、中指の三本を使って大麦のドームの裾野から一口大をちぎり取り、それを指先で軽くこねて小さなスプーンのような形にします。そして、周囲のシチューをすくい取るようにして口に運びます。

この食べ方には、遊牧民時代から受け継がれてきた厳格なマナーと深い愛情が込められています。食事の最中は自分の目の前にある部分だけを食べ、他人の領域には手を伸ばしてはいけません。そして最も感動的なのは食事の終盤です。家の長や年長者が、シチューの中にある大きな羊肉の塊を骨から外し、均等にほぐして、一緒に卓を囲んでいる子供たちやゲストの目の前にそっと置いてあげるのです。一つの食事を分け合うことで共同体の絆を深めるという、リビアの人々の温かなホスピタリティが、この一皿の作法の中に凝縮されています。

素朴な大麦と情熱的なスパイスの完璧な調和

日本でバジーンを再現する際、大麦粉(製菓用の大麦粉などで代用可能)を練り上げる作業は少し力が必要ですが、その苦労に見合うだけの感動的な味わいが待っています。大麦生地そのものには塩味しかついておらず、噛み締めるほどに広がる麦本来の素朴な甘みと土の香りが特徴です。だからこそ、周囲のシチューは、トマトの強い酸味、羊肉の野性味溢れるコク、そしてチリパウダーの鋭い辛味を効かせた、非常に濃厚でパンチのある味付けにする必要があります。大麦の「静」と、スパイスシチューの「動」。この全く異なる二つの要素が口の中で混ざり合った瞬間の、エキゾチックで力強い旨味の爆発は、北アフリカ料理の真骨頂と言えるでしょう。添えられた固ゆで卵を崩してシチューに溶かすことで味がまろやかに変化し、最後まで飽きることなく楽しめます。遠くサハラの風を感じながら、休日の食卓で、大切な人たちと一つの大きなお皿を囲む喜びを味わってみてください。

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