キューバの定番キューバサンドのレシピ
ロースト豚・ハム・スイスチーズ・ピクルス・マスタードをキューバパンに挟み、プランチャ(鉄板プレス)でバターを塗って押しながら焼き上げる、キューバとフロリダの移民コミュニティが育てたプレスサンドイッチ。パリッと焼けた外皮と溶けたチーズの一体感を、歴史とともに紹介します。
材料
- 【モホロースト豚】
- 豚肩ロースまたは豚もも肉(ブロック) 500g
- オレンジ果汁 100ml
- ライム果汁 50ml
- ニンニク 6片
- クミンパウダー 小さじ1
- 乾燥オレガノ 小さじ1
- 塩 小さじ1と1/2
- 黒こしょう 小さじ1/2
- オリーブオイル 大さじ2
- 【サンドイッチ】
- キューバパン・バゲット・ホットドッグバン 4本(各20〜25cm)
- スモークハム(ロースハムまたはボンレスハム) 150g(薄切り)
- スイスチーズ(またはグリュイエールチーズ) 100g(薄切り)
- ディルピクルス(またはきゅうりのピクルス) 1本(薄切り)
- イエローマスタード(またはディジョンマスタード) 大さじ2
- バター(またはラード) 大さじ2
- 【付け合わせ】
- ポテトフライまたはユカ・フライ(キャッサバのフライ) 適量
キューバサンド(Cuban Sandwich・スペイン語でクビアーノ Cubano)はキューバおよびアメリカ・フロリダ州のキューバ系移民コミュニティを発祥とする伝説的なプレスサンドイッチで、キューバパン(またはフランスパン・バゲット)の内側にマスタードを薄く塗り、薄くスライスしたロースト豚(レチョン)・スモークハム・スイスチーズ・薄切りのディルピクルスをこの順番に正確に重ねて挟み、バターを塗った外側を鉄板プレス(プランチャ)でしっかりと押しつけながら高温で焼き上げることで外皮はパリッとカリカリに焦げ目がつき内側のチーズは完全に溶けてロースト豚とハムとピクルスの旨みを一体化した熱々の一品に仕上がる、ハバナ・タンパ・マイアミをはじめキューバとフロリダ全土のカフェテリア(カフェ)・弁当屋・移民コミュニティの食卓で100年以上にわたって愛され続ける移民の誇りのサンドイッチです。キューバサンドの最大の個性はプランチャ(または重いフライパン)で押しながら焼くことで生まれるサンドイッチ全体の一体化にあり、ロースト豚の旨みとスモークハムの塩気・スイスチーズの溶けたコク・ピクルスの酸みとマスタードのシャープな辛みが熱と圧力によって完全に融合することで、バラバラに食べたときとはまったく異なる新しい味の次元が生まれます。キューバサンドの決め手はロースト豚(レチョン・アサード)にオレンジ汁・ライム汁・ニンニク・クミン・オレガノで作るモホ(Mojo)マリネで充分に漬け込んで旨みを深めてからゆっくりとローストすることで生まれるカリブの柑橘系スパイスの風味と、焼くときにプレスをしっかりと均一に押しつけて外皮全体に均一なカリカリの焼き目をつけることであり、この二つが揃って初めてハバナの食堂やタンパのラ・セプティマ(セブンス・アベニュー)で食べるキューバサンドの力強い旨みと食感の一体感に近づきます。キューバではキューバサンドは「クビアーノ(Cubano)」と呼ばれ朝食・昼食・軽食として日常的に愛されており、アメリカのキューバ系コミュニティでは「本物のキューバサンドはタンパ式かマイアミ式か」という熱狂的な論争が今日も続くほど、このサンドイッチはキューバ人・キューバ系アメリカ人のアイデンティティと誇りを体現する食文化の象徴となっています。
キューバサンドの作り方
◎モホ(Mojo)マリネのロースト豚を作る
豚肩ロースまたは豚もも肉(ブロック)500gを大きめのボウルまたは密閉袋に入れる。オレンジ果汁100ml・ライム果汁50ml・ニンニク6片(すりおろし)・クミンパウダー小さじ1・乾燥オレガノ小さじ1・塩小さじ1と1/2・黒こしょう小さじ1/2・オリーブオイル大さじ2をよく混ぜてモホマリネ液を作り、豚肉全体に揉み込んで冷蔵庫で最低4時間、できれば一晩漬け込む。漬け込んだ豚肉をオーブン220度で20分焼いてから160度に落として40〜50分、中心部まで火が通るまでじっくりとローストする。粗熱が取れたら薄くスライスする。(モホマリネのオレンジとライムの柑橘酸がキューバサンドのロースト豚を特徴づける最重要要素。グレープフルーツ汁をブレンドすると本場のキューバらしい苦みが加わる。時間がない場合は市販のチャーシュー・豚の角煮・薄切り豚ロース肉を使っても作れるが、モホマリネのレチョンの柑橘風味がキューバサンドをキューバサンドたらしめる核心なので可能であれば作ること。ローストした豚肉は冷蔵庫で3日間保存できるため週末にまとめて作り置きしておくと便利)
◎パンを選んで準備する
キューバパン(パン・クバノ)またはフランスパン・バゲット・フォカッチャ型の白いソフトパンをサンドイッチの長さ(20〜25cm)に切る。パンを横に切り込みを入れて開き、内側の断面にイエローマスタード(アメリカンマスタード・ディジョンマスタードでも可)を薄く均一に塗る。(本場のキューバパンはラードを使って焼いた細長い白いパンで、外皮は薄くパリッとしていて内側はやわらかい。日本では専門店での入手が難しいため、コッペパン・ホットドッグバン・フランスパンで代用できる。フランスパンを使う場合は外皮が硬すぎてプレスしにくいため、切り込みを入れてから電子レンジで10秒温めてやわらかくしてからプレスするとよい。マスタードは必ずパンの内側に塗ること。外側に塗ると焼いたときに焦げる)
◎具材を正しい順番に重ねる
マスタードを塗ったパンの下段に薄くスライスしたスモークハム(ロースハムまたはボンレスハム)4〜6枚を均一に並べる。その上にスイスチーズ(またはグリュイエールチーズ)2〜3枚を並べる。薄切りのモホロースト豚4〜6枚を重ねる。ディルピクルス(またはきゅうりのピクルス)の薄切りを全体に広げる。パンの上段で蓋をする。(具材の順番は重要。スモークハムを最初にパンに乗せることでパンがハムの塩気を直接受けてしっとりと仕上がる。スイスチーズは肉類に挟まれることで焼いたときに上下両方から熱を受けて均一に溶ける。ピクルスは上段のパンに近い位置に入れることで焼いたときにパンがピクルスの酸みを吸いすぎるのを防ぐ。タンパ式ではサラミまたはジェノア・サラミを追加するのが特徴で、マイアミ式では具材はハム・豚・チーズ・ピクルス・マスタードのみとしてシンプルに仕上げる)
◎プレスで押しながら焼く
フライパンまたはグリルパンを中火でしっかりと予熱する。サンドイッチの外側両面に室温に戻したバター(またはラード)を薄く塗る。フライパンにサンドイッチを置き、重さのある別のフライパン・鋳鉄のプレス・砂糖の袋を重ねたアルミホイルで覆った板などをサンドイッチの上に乗せてしっかりと押しつける。中火で3〜4分、底面がこんがりきつね色になるまで焼いてから慎重にひっくり返し、再びプレスをして反対面もさらに3〜4分焼く。(プレスで均一に押しつけることがキューバサンドの最大の特徴。押しつけが弱いと外皮がカリカリにならずチーズも完全に溶けない。サンドイッチプレス(パニーニプレス)がある場合は最初から両面同時に焼けて便利。中火を保つこと。強火だと外皮だけが焦げてチーズが溶ける前に焼き上がってしまう。バターの代わりにラードを使うとキューバらしい風味に近づく。焼き上がりの目安は外皮がパリッとしてチーズが端からとろりと溶け出している状態)
◎切り分けて盛り付ける

盛り付けたキューバサンド
プレスで焼き上がったキューバサンドを対角線に斜め半分に切り分けて皿に並べる。マリコン(フライドプランテン)・ユカ・フライ(キャッサバのフライ)またはポテトフライを添えるのがキューバとフロリダの定番スタイル。コンガスタウンドやキューバンブラックビーンズ(黒インゲン豆の煮込み)を添えてもよい。(切り分けるときは熱々のうちに鋭いパン切り包丁で一気に切ると断面が美しく仕上がる。チーズが溶けている熱々の状態が最も美味しいため、焼き上がったらすぐに切り分けて食べること。冷めるとパンが硬くなりチーズが固まるため必ず熱々で食べる。付け合わせのマリコンはバナナプランテンを潰して揚げたキューバの定番スナックで、日本では熟したバナナを平たく潰して揚げると近い食感になる)
料理の歴史と背景
キューバサンドの正確な起源については今日もキューバ・タンパ・マイアミのあいだで熱い論争が続いていますが、最も有力な説は19世紀後半から20世紀初頭にかけてキューバからフロリダ州タンパのイボー・シティ地区に渡ったキューバ系移民・スペイン系移民・イタリア系移民・ユダヤ系移民が葉巻工場の労働者として集住するなかでそれぞれの食文化が融合して生まれたというものです。キューバのロースト豚文化・スペインのハム・イタリアのサラミ(タンパ式に入る理由)・ユダヤ系のピクルス文化が一つのサンドイッチに集約されたキューバサンドはまさに移民の食文化の融合体であり、タンパのイボー・シティが「キューバサンド発祥の地」を主張する根拠はこの多民族的な歴史にあります。一方キューバ側はハバナの食堂で19世紀後半からクビアーノとして食べられていたという記録を根拠に本家を主張しており、マイアミはキューバ革命(1959年)以降に大量に渡ったキューバ系亡命者がマイアミ流のシンプルなスタイル(サラミなし)を確立したとしています。いずれにせよキューバサンドは複数の文化が交差した歴史的な産物として、単一の起源を特定することが難しい料理であることが逆にその豊かな文化的背景を示しています。
現代のアメリカにおいてキューバサンドはタンパのラ・セプティマ(セブンス・アベニュー)・マイアミのリトル・ハバナ・オーランドのキューバ系コミュニティを中心に全国のキューバ料理レストラン・カフェテリア・デリで提供されており、2012年にタンパ市議会がキューバサンドを「タンパの公式サンドイッチ」として公式認定したことで全米的な注目を集めました。2014年にはジョン・ファブロー監督の映画「シェフ ~三ツ星フードトラック始めました~(Chef)」でキューバサンドが重要な役割を担い、主人公がフードトラックでキューバサンドを作るシーンが全米の食文化ファンの間で大きな話題となってキューバサンドの知名度が急上昇しました。現在ではキューバサンドはアメリカのサンドイッチ文化を代表する一品として全国のカフェ・デリ・フードトラックのメニューに定着しており、ニューヨーク・シカゴ・ロサンゼルスなどの都市でも広く親しまれています。日本ではキューバ料理専門店はまだ少ないものの、2014年の映画「シェフ」の公開以降にキューバサンドの認知度が高まり、プレスサンドイッチへの関心とともにパニーニプレスを使った家庭での再現レシピが料理系メディアで紹介される機会が増えています。
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