スウェーデンの定番グラブラックスのレシピ
生鮭を塩・砂糖・ディルで数日間マリネして作る北欧伝統の発酵鮭料理グラブラックス。加熱不要で自宅で作れる本格レシピと、マスタードディルソースの作り方を歴史とともに紹介します。
材料
- 生鮭(サーモン)フィレ・刺身用・皮付き 600g
- 塩 大さじ3
- 砂糖 大さじ2
- 白胡椒(粗挽き) 小さじ1
- フレッシュディル 1束
- 【マスタードディルソース】
- 粒マスタード 大さじ2
- ディジョンマスタード 大さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 白ワインビネガー 小さじ2
- サラダ油 大さじ3
- フレッシュディル(みじん切り) 大さじ2
- 塩 少々
- 【添え用】
- ライ麦パンまたはクネッケブロート 適量
- ケッパー 適量
- 赤玉ねぎ(薄切り) 適量
- レモン 適量
グラブラックス(Gravlax)はスウェーデン語で「埋めた鮭」を意味する北欧伝統の鮭料理だ。生の鮭に塩・砂糖・ディルを大量にまぶして冷蔵庫で2〜3日間寝かせるだけで、加熱なしに鮭がしっとりと締まり、ディルの清涼感と塩の旨みが深く染み込んだ一品が完成する。スモークサーモンに似ているが、燻製ではなく塩と砂糖による脱水・浸透作用で仕上げるため、より生に近いなめらかな食感と繊細な風味が特徴だ。薄切りにしてマスタードディルソースとともにライ麦パンにのせるのがスカンジナビアの定番スタイルで、クリスマスやイースターの食卓に欠かせない北欧を象徴する料理だ。
グラブラックスの作り方
◎鮭の下準備をする
刺身用または養殖の生鮭(サーモン)フィレ600g(皮付き)を用意する。骨抜きで小骨を丁寧に取り除く。鮭の表面をキッチンペーパーで水気をよく拭き取る。(必ず刺身用または加熱なしで食べられる品質の鮭を使うこと。寄生虫のリスクを避けるため、信頼できる鮮魚店で購入し、不安な場合は一度冷凍したものを解凍して使う。養殖サーモンは天然鮭より寄生虫のリスクが低く、グラブラックスに適している)
◎マリネ液を作って鮭に塗る
塩大さじ3・砂糖大さじ2・白胡椒(粗挽き)小さじ1を混ぜ合わせてキュアリングミックスを作る。フレッシュディル1束(茎ごと)を粗く刻む。鮭フィレの両面にキュアリングミックスをまんべんなくすり込み、刻んだディルを全体に厚く覆うように貼り付ける。(塩と砂糖の比率は3:2が基本。塩を多くするとしっかり締まった食感に、砂糖を多くするとマイルドな仕上がりになる。好みで調整できる。白胡椒の代わりにキャラウェイシードやフェンネルシードを加えるとよりスカンジナビアらしい風味になる)
◎ラップで包んで冷蔵庫で寝かせる
ディルをのせた鮭を2枚合わせて皮が外側になるよう重ね、ラップでしっかりと包む。バットまたはボウルに入れ、上に重しを乗せる(缶詰や水を入れたジッパー袋など)。冷蔵庫に入れて最低24時間、できれば48〜72時間寝かせる。12時間ごとに上下を返し、滲み出た液を捨てる。(重しを乗せることで鮭から水分が出やすくなり、均一に締まる。48〜72時間寝かせると塩気と風味がより深く染み込む。24時間では淡い仕上がり、72時間ではしっかりした食感になる)
◎仕上げてスライスする
寝かせた鮭をラップから取り出し、表面のディルと余分な塩をキッチンペーパーで軽く拭き取る。鋭い長い包丁を使い、皮に対して斜め45度の角度で薄くスライスする。スライスする直前まで冷蔵庫で冷やした状態の方が切りやすい。(薄く均一に切ることがグラブラックスの食感の決め手。刺身包丁または細長い洋包丁を使い、引くように一方向に動かして切ると断面がきれいになる。皮は食べない)
◎マスタードディルソースを作る
粒マスタード大さじ2・ディジョンマスタード大さじ1・砂糖小さじ1・白ワインビネガー小さじ2・サラダ油大さじ3をボウルに合わせてよく混ぜ、乳化させる。仕上げにフレッシュディル(みじん切り)大さじ2と塩少々を加えて混ぜる。(マスタードディルソースはグラブラックスに欠かせない定番ソースで、鮭の塩気と脂をマスタードの酸みが引き立てる。冷蔵庫で3〜4日間保存できる)
◎盛り付ける

盛り付けたグラブラックス
ライ麦パンまたはクネッケブロート(スウェーデンのクリスプブレッド)にバターを薄く塗り、グラブラックスを2〜3枚のせる。マスタードディルソースをかけ、ケッパー・薄切りの赤玉ねぎ・レモン・フレッシュディルを添えれば完成だ。前菜として小皿に盛り付ける場合はクレームフレッシュ(またはサワークリーム)を添えるとよりリッチな仕上がりになる。
料理の歴史と背景
グラブラックスの起源は中世スカンジナビアの漁師たちの保存技術にある。「グラブ(Grav)」は古ノルド語で「穴・埋める」を意味し、かつては塩をまぶした鮭を地中に埋めて発酵させる手法が使われていたことがその名の由来だ。地中の低温と嫌気性環境が発酵を促し、鮭を長期保存可能な状態にした。中世の文献には14世紀頃からスカンジナビアで塩漬け鮭の記録が残っており、当時は発酵が進んで現代のグラブラックスよりも強烈な風味を持つものだったとされている。18〜19世紀にかけて冷蔵技術が普及すると地中に埋める工程が廃止され、塩・砂糖・ディルによる現代のレシピスタイルに洗練されていった。
現代のグラブラックスはスウェーデン・ノルウェー・デンマーク・フィンランドのいずれでも作られる北欧共通の料理として定着しているが、国によって塩と砂糖の比率・添えるソースの種類・スライスの厚みに微妙な違いがある。スウェーデンではマスタードディルソース(ホーヴマスタードソース)を添えるスタイルが定番で、デンマークではレモンとディルのみのシンプルな仕上げが好まれることが多い。ノルウェーではアクアビット(スカンジナビアの蒸留酒)をマリネに加えるバリエーションも知られる。北欧料理が世界的な注目を集めた2000年代以降、グラブラックスはコペンハーゲンのノーマをはじめとする北欧の高級レストランで再解釈され、世界中のシェフが自国の魚介類に応用するようになった。日本でも養殖サーモンの普及とともに家庭で手軽に作れる料理として静かに広まっている。
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