アフリカ

タンザニアの定番ムチュジ・ワ・サマキのレシピ

ヤシ乳・トマト・スパイスで白身魚を煮込むタンザニアのスワヒリ海岸料理。インド洋交易が育んだアラブ・インド・アフリカの三文化が溶け合った魚カレーの本格レシピを歴史とともに紹介します。

タンザニアの定番ムチュジ・ワ・サマキのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
50 調理時間
4人前 分量
約380kcal カロリー

材料

  • 白身魚の切り身(スズキ・タイ・サワラ・ティラピアなど) 600g
  • 玉ねぎ 2個
  • トマト 3個(またはカットトマト缶1缶)
  • ニンニク 4片
  • 生姜 20g
  • ヤシ乳 200ml
  • 水 200ml
  • ターメリック 小さじ1と1/2
  • クミンパウダー 小さじ1
  • コリアンダーパウダー 小さじ1
  • パプリカパウダー 大さじ1
  • カイエンペッパー 小さじ1/4
  • 青唐辛子 1本
  • コブミカンの葉(あれば) 2〜3枚
  • ライム 1個
  • パクチー ひとつかみ
  • サラダ油 大さじ4
  • 塩 適量
  • 【添え用】
  • ウガリまたはご飯 適量

ムチュジ・ワ・サマキ(Mchuzi wa Samaki)はスワヒリ語で「魚のカレー・スープ」を意味するタンザニアの代表的な家庭料理だ。インド洋に面したスワヒリ海岸——ダルエスサラーム・ザンジバル・モンバサ(ケニア)を結ぶ沿岸地帯——で長く育まれてきたこの料理は、ヤシ乳のまろやかな甘み・トマトの酸み・ターメリックとクミンのスパイス香が重なり合い、白身魚の旨みを余すところなく引き出す。ウガリ(トウモロコシ粉の練り飯)やご飯と合わせて食べるのが定番のスタイルで、海沿いのダルエスサラームから内陸のドドマまで、タンザニア全土の家庭で毎日のように食卓に上がる。アラブの商人がもたらしたスパイス、インドのダウ船乗りが伝えたヤシ乳の使い方、バンツー系農耕民の野菜文化——この三つがひとつの鍋の中に溶け合っているのがムチュジ・ワ・サマキだ。

ムチュジ・ワ・サマキの作り方

◎魚の下準備をする
白身魚の切り身(スズキ・タイ・サワラ・ティラピアなど)600gに塩小さじ1・ターメリック小さじ1/2をすり込み、10〜15分おいてなじませる。フライパンにサラダ油大さじ2を中火で熱し、魚の両面を2〜3分ずつ焼いて表面に焼き色をつける。取り出して別皿に置いておく。(魚を先に焼き固めることで煮込んでも崩れにくくなる。完全に火を通す必要はなく、表面に香ばしい焼き色をつけることが目的。ターメリックをすり込むことで黄金色の色素が魚全体に入り、仕上がりが美しくなる)

◎スパイスベースを炒める
同じフライパンにサラダ油大さじ2を足し、みじん切りにした玉ねぎ2個を中火で15分、濃い飴色になるまでじっくり炒める。すりおろしたニンニク4片・生姜20gを加えてさらに2分炒める。ターメリック小さじ1・クミンパウダー小さじ1・コリアンダーパウダー小さじ1・パプリカパウダー大さじ1・カイエンペッパー小さじ1/4を加えて弱火で1〜2分、スパイスの香りを引き出す。(玉ねぎを十分に飴色になるまで炒めることがムチュジの深みの基礎。スパイスは焦げやすいため油が少ないと感じたら少量足しながら炒める。ここで丁寧に炒めれば炒めるほど最終的な味の奥行きが変わる)

◎トマトを加えて煮詰める
完熟トマト3個(またはカットトマト缶1缶)を粗く潰して加え、中火で10〜12分、トマトの水分が飛んで全体がペースト状になるまで炒め煮にする。トマトの酸みが飛んで油が分離してきたら次の工程へ進む。(トマトの水分を十分に飛ばすことで料理全体の輪郭がはっきりする。この工程を省略すると水っぽい仕上がりになる。油が分離して表面に浮いてくる状態が「スパイスが十分に炒められた証拠」で、インド料理と共通する技法だ)

◎ヤシ乳を加えて煮込む
水200ml・ヤシ乳200mlを加えてよく混ぜ、沸騰させる。焼き目をつけた魚を戻し入れ、青唐辛子1本(丸ごと)・コブミカンの葉2〜3枚(あれば)を加える。蓋をして弱火で10〜12分、魚に完全に火が通るまで煮込む。仕上げにライム果汁大さじ1・塩で味を調え、パクチーをひとつかみ散らす。(ヤシ乳は沸騰させすぎると分離して油っぽくなるため、弱火を維持すること。青唐辛子は丸ごと入れることで辛みが出すぎず、後で取り除ける。コブミカンの葉があれば加えると東アフリカ沿岸らしい清涼感が増す)

◎盛り付ける

タンザニアの定番ムチュジワサマキの完成品 盛り付け画像

盛り付けたムチュジ・ワ・サマキ

深めの皿にムチュジ・ワ・サマキをたっぷりと盛り、ウガリ(トウモロコシ粉200gを熱湯300mlで硬めに練ったもの)またはご飯を添える。パクチーとライムのくし切りを添えて完成だ。ウガリは手でちぎってスープを吸わせながら食べるのが東アフリカのスタイル。チャパティ(インド式薄焼きパン)と合わせるのもザンジバルらしいスタイルだ。

料理の歴史と背景

ムチュジ・ワ・サマキが生まれたスワヒリ海岸は、紀元前後からアラビア半島・ペルシャ・インドとの季節風を利用した交易ルートの要衝だった。アラブの商人はモンスーンに乗ってインド洋を渡り、象牙・金・奴隷をアラビアへ運ぶ代わりに綿織物・陶磁器・スパイスをアフリカへもたらした。この交流の中で、アラブ・ペルシャ料理のスパイスの使い方と、インドのヤシ乳料理の技法が東アフリカのバンツー系農耕民の食文化に組み込まれていった。ターメリック・クミン・コリアンダーというスパイスの組み合わせはインド起源であり、ヤシ乳を煮込みに使う技法はインド南部・スリランカのカレー文化と共通する。ザンジバルが世界最大のクローブとシナモンの産地として栄えた19世紀には、スパイス貿易の中心地にあるこの島でスパイスを豊富に使った料理がさらに洗練され、現代のムチュジ・ワ・サマキに近い形が確立されたとされている。

タンザニアが1964年にタンガニーカとザンジバルの合邦によって成立したことで、ザンジバル沿岸の海鮮スパイス料理文化は内陸のバンツー系食文化と合流し、「タンザニア料理」としての統一的なスタイルが形成された。現在のダルエスサラームでは、ムチュジ・ワ・サマキはインド系・アラブ系・アフリカ系の住民すべてが共有する料理として街の食堂・家庭・ホテルの食卓に並ぶ。ザンジバル島では観光客向けのレストランでも提供されており、スパイスアイランドの料理として国際的な認知度が高まっている。近年はヤシ乳の代わりにトマトのみで仕上げる内陸版と、ヤシ乳を多用する沿岸版の二つのスタイルが共存しており、それぞれがタンザニアの地理的・文化的多様性を反映している。

関連タグ

このレシピは役に立ちましたか?サイトの継続運営への応援をお待ちしています。

Ko-fiで応援する

レビュー

このレシピを評価する

コメントは管理者の審査を経て掲載されます