セネガルの定番チェブ・ジェンのレシピ
魚をスパイスのペーストで香りづけして煮込み、その煮汁でご飯を炊き上げるセネガルの国民食チェブ・ジェン。2021年にユネスコ無形文化遺産に登録された西アフリカを代表する料理の本格レシピを歴史とともに紹介します。
材料
- 白身魚の切り身(スズキ・タイ・ブリなど) 600g
- ジャスミンライス(または長粒米) 400g
- 玉ねぎ 2個
- トマト 3個(またはカットトマト缶1缶)
- トマトペースト 大さじ3
- キャベツ 1/4個
- ニンジン 2本
- なす 1本
- カブまたは大根 200g
- オクラ 6本
- ニンニク 4片
- パセリ 1束
- 青唐辛子 1本
- パプリカパウダー 大さじ1
- クミンパウダー 小さじ1
- ガラムマサラ 小さじ1
- ナンプラー(魚ブイヨン代用) 小さじ2
- サラダ油 適量
- 塩 適量
- 水 800ml
- ライム 1個
チェブ・ジェン(Thiéboudienne / Ceebu Jën)はウォロフ語で「魚のご飯」を意味するセネガルの国民食で、2021年にユネスコの無形文化遺産に登録された西アフリカを代表する料理だ。魚に「ネフ・ネフ」と呼ばれるスパイスペーストを詰め込んで揚げ焼きにし、トマトとトマトペーストで作ったソースで野菜とともに煮込み、その煮汁でご飯を炊き上げる——この一連の工程がチェブ・ジェンの真髄だ。炊き上がったご飯の底に自然とできる「ソコ」と呼ばれる焦げ目の香ばしさ、魚の旨みが染み込んだご飯、煮崩れる手前まで柔らかくなった野菜が大皿に豪快に盛り付けられ、家族や友人と囲む食卓のど真ん中に置かれる。
チェブ・ジェンの作り方
◎ネフ・ネフ(スパイスペースト)を作り魚に詰める
パセリ1束・ニンニク4片・青唐辛子1本・塩小さじ1を合わせてすり鉢またはフードプロセッサーで細かくすり潰してペーストを作る。白身魚の切り身(スズキ・タイ・ブリなど)600gに包丁で切り込みを数か所入れ、ネフ・ネフを切り込みに詰め込む。残ったペーストは表面にも塗り込み、10〜15分おいてなじませる。(ネフ・ネフはチェブ・ジェンの香りの核心で、魚の内側からスパイスの風味が溶け出してソースとご飯全体に広がる。本場では「グドゥ」と呼ばれる発酵魚のブイヨンを少量加えるが、ナンプラー小さじ1で代用できる)
◎魚を揚げ焼きにする
厚手の鍋(できれば大きめの深型)にサラダ油を3〜4cm深さまで入れて中火で熱し、ネフ・ネフを塗った魚を入れて両面をこんがりと揚げ焼きにする(各面3〜4分)。魚を取り出して別皿に置いておく。油は大さじ3〜4程度残して余分は取り除く。(魚は完全に火を通す必要はなく、表面に香ばしい焼き色をつけることが目的。後でソースに戻して煮込むため、この時点では中が半生でも問題ない)
◎トマトソースのベースを作る
同じ鍋の残り油でみじん切りにした玉ねぎ2個を中火で15分、飴色になるまで炒める。トマトペースト大さじ3・つぶしたトマト3個(またはカットトマト缶1缶)を加えてよく混ぜ、10分炒め煮にして水分を飛ばす。ガラムマサラ小さじ1・クミン小さじ1・パプリカパウダー大さじ1・魚のブイヨン(またはナンプラー小さじ2)・水800mlを加えてよく混ぜ、沸騰させる。(玉ねぎを十分に飴色になるまで炒めることがソースの深みの源。トマトペーストを加えた後は弱火で丁寧に炒め煮にして油が分離するまで続けると味が安定する)
◎野菜と魚を煮込む
沸騰したソースにキャベツ1/4個(くし切り)・ニンジン2本(斜め切り)・なす1本(半切り)・カブまたは大根200g(大きめに切る)・オクラ6本を加える。揚げ焼きにした魚を戻し入れ、蓋をして中火で20〜25分、野菜が柔らかくなるまで煮込む。魚と野菜を取り出して別皿に置き、煮汁を計量する。(野菜は煮崩れる手前くらいの柔らかさが正式。本場ではタマリンドを加えて酸みをつけることもある。煮汁の量は後でご飯を炊くために正確に計ることが重要)
◎煮汁でご飯を炊く
煮汁の量を計り、足りない場合は水を足して米の1.2倍量になるよう調整する。鍋を強火にかけ沸騰させてから洗ったジャスミンライス(または長粒米)400gを加えて混ぜる。再沸騰したら蓋をして弱火にし、20〜25分炊く。水分が飛んでご飯に穴が開いてきたら火を極弱火にし、さらに10分蒸らして底にソコ(焦げ目)を作る。(ソコはチェブ・ジェンの醍醐味で、鍋底の焦げたご飯が香ばしく最も人気の部分。弱火で時間をかけることが大切で、焦げすぎないよう注意しながらも意図的に底を焦がすことを恐れないこと)
◎盛り付ける

盛り付けたチェブ・ジェン
大きな平皿(またはお盆)を用意し、炊き上がったご飯を山盛りに盛る。取り出しておいた魚と野菜を上に豪快に並べる。鍋底のソコをへらで剥がして端に盛り付ける。ライムを添える。セネガルでは大皿を食卓の中央に置き、家族全員で取り分けながら右手で食べる。ペーストソース(ディジェン)を別に出してかけながら食べるスタイルも一般的だ。
料理の歴史と背景
チェブ・ジェンの発祥地はセネガル北部の古都サン・ルイで、19世紀後半にこの地の女性料理人マタ・マラムが現在の形に完成させたと伝えられている。サン・ルイはセネガル川の河口に位置するフランス植民地時代の首都であり、大西洋の漁場に近くさまざまな魚介類が集まる交易の要衝だった。トマトとトマトペーストはフランス植民地時代にヨーロッパから持ち込まれた食材で、これ以前のチェブ・ジェンの前身料理はトマトを使わないシンプルな魚とご飯の組み合わせだったとされている。トマトの導入によって現代のチェブ・ジェンに近い赤いソースのスタイルが確立され、20世紀にはセネガル全土に広まって国民食としての地位を確立した。
2021年12月、ユネスコはチェブ・ジェンの「食文化と製法の知識と実践」を無形文化遺産リストに登録した。セネガルにとって初のユネスコ無形文化遺産登録であり、登録の理由として「料理の準備と共食を通じた社会的絆の強化」「女性の料理人たちによって世代から世代へと受け継がれてきた知識体系」「地域コミュニティのアイデンティティの核」が挙げられた。現在のセネガルではダカールから農村地帯まで、昼食として最も広く食べられる料理であり続けており、セネガル人が海外に移住した際に最も恋しくなる「母国の味」として語られる。毎年4月には「チェブ・ジェンの日」が設けられ、各地でチェブ・ジェンを囲むイベントが開催されるなど、料理を通じた国民的な誇りの表現として今も生き続けている。
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