ウェールズの定番ウェルシュ・レアビットのレシピ
溶かしたチェダーチーズにウェールズのエールビール・マスタード・ウスターソースを合わせたソースをトーストにのせて焼くウェールズの国民的料理。シンプルな素材から生まれる深いコクのウェルシュ・レアビットの本格レシピを歴史とともに紹介します。
材料
- 厚切り白パン(イギリスパンまたはサワードウ) 4枚
- チェダーチーズ(シャープ・熟成タイプ・すりおろし) 200g
- バター 大さじ2
- 薄力粉 大さじ1.5
- エールビール(なければクラフトビールのビター系) 100ml
- ディジョンマスタード 小さじ1
- 粒マスタード 小さじ1
- ウスターソース 小さじ2
- カイエンペッパー 少々
- 白胡椒 少々
- 【仕上げ・添え用】
- ウスターソース 少々
- パプリカパウダー 少々
- チャイブまたはネギ 適量
- ピクルス・グリーンサラダ(任意) 適量
ウェルシュ・レアビットの作り方
◎チーズソースのベースを作る
厚手の小鍋にバター大さじ2を中火で溶かし、薄力粉大さじ1.5を加えてゴムベラで混ぜながら1〜2分炒めてルーを作る。ウェールズのエールビール(なければギネスや日本のビター系クラフトビール)100mlを少しずつ加えながらよく混ぜ、滑らかなベースを作る。(ルーを炒める際は粉の生っぽい臭いが飛ぶまで丁寧に炒めること。ビールは一度に加えると固まりやすいため必ず少量ずつ加えながら混ぜる。アルコールが気になる場合はビールを事前に小鍋で軽く温めてアルコールを飛ばしておくか、麦芽飲料で代用できる)
◎チーズとスパイスを加える
弱火にしてすりおろしたチェダーチーズ(またはグリュイエール・コンテ)200gを数回に分けて加え、その都度よく混ぜて完全に溶かす。ディジョンマスタード小さじ1・粒マスタード小さじ1・ウスターソース小さじ2・カイエンペッパー少々・白胡椒少々を加えてよく混ぜる。全体がなめらかでつやのあるソースになったら火を止める。(チーズは強火で加えると分離するため必ず弱火で。チェダーはシャープ(熟成)タイプを選ぶと風味が格段に豊かになる。マスタードとウスターソースがウェルシュ・レアビットをただのチーズソースと区別する重要な要素で省略しないこと)
◎トーストを焼いてソースを塗る
厚切りの白パン(イギリスパンまたはサワードウ)4枚をトースターで両面を軽くトーストして表面をカリッとさせる。オーブンの天板またはグリル用トレイに並べ、温かいチーズソースをたっぷりと(5mm程度の厚さで)パンの縁まで均一に塗り広げる。(パンを先にトーストしておくことでソースをのせた後も底がべちゃっとしない。ソースは縁まで丁寧に塗ることで焼いたときに端まで均一に仕上がる)
◎グリルで焼き上げる
オーブンのグリルモード(または魚焼きグリル)を最大温度に予熱し、ソースを塗ったトーストを入れて2〜3分、表面がこんがりと焼けて所々に焦げ目がつくまで焼く。目を離すと焦げるため常に様子を見ながら焼く。(表面の焦げ目がウェルシュ・レアビットの醍醐味で、完全に均一な焼き色より所々に小さな焦げ目がある方が本場らしい。グリルの代わりにバーナーで炙っても良い)
◎盛り付ける

盛り付けたウェルシュ・レアビット
焼き上がったウェルシュ・レアビットを皿に盛り、ウスターソースを数滴垂らす。パプリカパウダーまたはカイエンペッパーを軽く振り、チャイブまたはネギの小口切りを散らす。ウェールズではピクルス・マスタード・グリーンサラダを添えるのが定番スタイルだ。ポーチドエッグをのせたものは「バック・レアビット」と呼ばれ、よりボリュームのある一皿になる。

ウェールズの国旗
ウェルシュ・レアビット(Welsh Rarebit)はチーズトーストの親戚のように見えて、それとはまったく別物の料理だ。溶かしたチェダーチーズにウェールズのエールビール・マスタード・ウスターソース・カイエンペッパーを合わせた濃厚なソースをトーストの上に塗り広げ、グリルで焼き上げることで、表面がこんがりとしたグラタンのような食感の中に深いコクと複雑な風味が生まれる。チーズを「ただのせる」のではなく「ソースに仕立てる」という工程の違いがすべてで、ビールと小麦粉が加わることで単なるチーズトーストとは次元の異なる料理になる。パブのランチメニューから家庭の週末の朝食まで、ウェールズ人の生活に深く根付いたこの料理は、ブリテン諸島の食文化の中で最も過小評価されている傑作のひとつだ。
料理の歴史と背景
ウェルシュ・レアビットの名前の起源は18世紀のイギリスにさかのぼる。1725年頃の料理書に「Welsh Rabbit」という名称で記録されており、当初は「ウェルシュ・ラビット(ウェールズのウサギ)」と呼ばれていた。この奇妙な名前の由来については諸説あるが、最も広く受け入れられているのは「ウェールズ人はウサギを買う余裕がないのでチーズで代用した」という皮肉を込めたイングランド人の表現だという説だ。ウェールズは中世から近代にかけてイングランドよりも貧しい地域とみなされており、肉料理の代わりに安価なチーズを使った料理をウェールズの食文化として揶揄するニュアンスがあったとされる。「Rabbit(ウサギ)」が「Rarebit」に変化したのは18世紀後半で、料理の品位を高めようとする試みだったとも、単なる訛りとも言われている。
ウェールズのチーズ文化は中世から根付いており、特にカーマーゼンシャーやグウィネズ地方では牧草地でのチーズ製造が盛んだった。カーフィリーチーズはウェールズ発祥の白いセミハードチーズで、現在も生産が続いているウェールズを代表する乳製品だ。エールビールをソースに加えるスタイルが定着したのは18〜19世紀のパブ文化の発展と並行しており、パブで提供される手軽な食事として確立されていった。20世紀に入り両次大戦の食料統制期に安価で栄養価の高いチーズ料理として再評価され、戦後のイギリス全土で定着した。現在ウェルシュ・レアビットはウェールズの観光資源の一部として積極的に発信されており、カーディフやスノードニア周辺のパブやカフェでは地元産のチェダーやカーフィリーチーズを使った本格版が提供されている。2010年代のブリティッシュ・フード・リバイバル(英国料理復権運動)の中でも再注目された料理のひとつで、シンプルな素材から生まれる深い旨みが改めて評価されている。
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