レバノン

レバノンの定番クッベのレシピ

細かく砕いたブルグル(小麦)と羊肉のひき肉を練り合わせて揚げるレバノン・シリアを代表するクッベ。中東料理の最も象徴的な一皿の本格レシピを、生食・焼き・揚げの三つのスタイルで歴史とともに紹介します。

レバノンの定番クッベのレシピ
Author
上の
郷土レシピ.com代表
80 調理時間
4人前 分量
約560kcal カロリー

材料

  • 【シェル(外側の生地)】
  • 細粒ブルグル(ファインブルグル) 200g
  • 牛または羊の赤身ひき肉 300g
  • 玉ねぎ(すりおろし) 1/4個
  • オールスパイス 小さじ1
  • シナモン 小さじ1/4
  • 黒胡椒 小さじ1/4
  • 塩 小さじ1
  • 【フィリング(ハシュウ)】
  • 羊または牛ひき肉 250g
  • 玉ねぎ 1個
  • 松の実 大さじ3
  • オールスパイス 小さじ1
  • シナモン 小さじ1/2
  • クミン 小さじ1/2
  • オリーブオイル 大さじ2
  • 塩・黒胡椒 適量
  • 【揚げ・添え用】
  • 揚げ油 適量
  • レモン 1個
  • タヒニソース(ゴマペースト・レモン・ニンニク) 適量

クッベの作り方

【揚げクッベ(クッベ・マクリーエ)— 最も一般的なスタイル】

◎外側の生地(シェル)を作る
細粒ブルグル(ファインブルグル)200gを冷水に15分浸けて戻し、清潔な布巾に包んで強く絞り水気を完全に切る。牛または羊の赤身ひき肉(なるべく脂肪分の少ないもの)300gをフードプロセッサーに入れてなめらかになるまで撹拌する。水気を切ったブルグル・塩小さじ1・オールスパイス小さじ1・シナモン小さじ1/4・黒胡椒小さじ1/4・玉ねぎ1/4個(すりおろし)を加えてさらに撹拌し、ひとつにまとまる生地を作る。必要であれば冷水を少量加えて調整する。ラップをかけて冷蔵庫で30分休ませる。(シェルは滑らかであればあるほど美しい仕上がりになる。フードプロセッサーがない場合はすり鉢で根気強くすり潰す。冷蔵庫で冷やすことで成形しやすくなる。脂肪分の多いひき肉だと成形中に溶けてしまうため赤身を選ぶこと)

◎フィリング(ハシュウ)を作る
フライパンにオリーブオイル大さじ2を熱し、みじん切りにした玉ねぎ1個を中火で10〜12分、透明になるまで炒める。羊または牛のひき肉250gを加えてほぐしながら炒め、肉の色が変わったら松の実大さじ3を加える。オールスパイス小さじ1・シナモン小さじ1/2・クミン小さじ1/2・塩・黒胡椒で味を調える。好みでざく切りにしたドライフルーツ(サルタナレーズンまたはバーベリー)大さじ2を加えても良い。粗熱が取れたら冷蔵庫で完全に冷ます。(フィリングは必ず完全に冷ましてから使うこと。温かいままシェルに詰めるとシェルが溶けて成形できなくなる。松の実はフィリングの香ばしさと食感の核心で省略しないこと)

◎成形する
濡らした手でシェル生地を卵大の球形に丸める。親指を中心に押し込んで空洞を作り、壁の厚さが均一(約5mm)になるよう薄く広げる。冷えたフィリングを大さじ1〜1.5程度詰め込み、口を閉じてラグビーボール型(長楕円形)に整える。濡れた手で表面を滑らかに整える。(成形は最初は難しいが、壁を均一な厚さにすることが揚げたときに均一に火が通るコツ。フィリングを詰めすぎると閉じられなくなるため少なめを心がける。成形したクッベは揚げる前に冷凍庫で15分冷やすと油の中でも形が崩れにくい)

◎揚げる
揚げ油を175℃に熱し、クッベを4〜5個ずつ静かに入れる。触らずに2分おいて表面が固まったら転がしながら全体が深い黄金色になるまで計5〜6分揚げる。キッチンペーパーで油を切る。(油温が低すぎるとシェルが油を吸って重くなり、高すぎると外だけ焦げる。揚げる前に油温を必ず確認すること。一度に多く入れすぎると油温が下がるため少量ずつ揚げる)

【生クッベ(クッベ・ナイエ)— レバノンの特別なスタイル】

◎生で食べるためのシェル生地を作る
上記のシェル生地と同じレシピで生地を作り、冷たい平皿に薄く(1〜1.5cm厚)広げる。表面にオリーブオイルをたっぷりとかけ、薄切りの玉ねぎ・フレッシュミントを散らす。ピタパンとともに前菜として食べる。(生クッベは新鮮な羊肉または牛肉を使い、衛生管理に十分注意すること。必ず当日中に食べる。レバノンではこれが最も格式高いクッベのスタイルとされ、客人への最上のもてなしとして出される)

◎盛り付ける

レバノンの定番クッベの完成品 盛り付け画像

盛り付けたクッべ

揚げクッベを皿に盛り、レモンを添える。ラビ(ヨーグルトとニンニクのディップ)またはタヒニソース(ゴマペースト・レモン・ニンニクを混ぜたもの)を添えるとよく合う。ファトゥーシュ(パンのサラダ)やタブーレ(パセリのサラダ)と一緒にレバノンの定番前菜メゼとして並べると本格的なレバノンの食卓が完成する。


レバノン 国旗

レバノンの国旗

クッベ(Kibbeh / كبة)はアラビア語で「球・丸いもの」を意味する料理で、細かく砕いたブルグル(ひき割り小麦)と羊肉のひき肉・スパイスを練り合わせて作る中東全域の代表的な料理だ。レバノン・シリア・パレスチナ・イラクで広く作られ、各地に無数のバリエーションが存在する。揚げクッベ・焼きクッベ・生クッベ(キッベ・ナイエ)、鍋で煮込むクッベ・ハモス、ディスク状に焼くクッベ・ビルサニーエ——形と調理法の数だけ味わいが異なるが、ブルグルと肉を合わせるという核心は共通している。レバノンでは「クッベを上手に作れる嫁は良い妻になる」という言葉が今も伝わるほど、クッベはレバノン家庭料理の頂点に位置する料理だ。

料理の歴史と背景

クッベの歴史はメソポタミア文明にまでさかのぼるとされ、現在のイラク・シリア・レバノンにあたる地域で数千年前から肉と穀物を合わせて調理する習慣があったとされている。ブルグルという食材自体は中東で最古の加工食品のひとつで、小麦を茹でて乾燥させ砕くという工程は少なくとも4000年前には確立していたとされる。羊の遊牧が主産業だったシリア・レバノンの山岳地帯では羊肉とブルグルを組み合わせることが自然な帰結であり、クッベはこの地域の食文化の核心として根付いていった。オスマン帝国時代(16〜20世紀)には帝国全土の食文化の交流の中でクッベは様々な地域に広まり、トルコ南東部のイチリ・キョフテ、イラクのクッベ・モスリ、エジプトのクッベなど各地に独自のバリエーションが生まれた。

レバノンにおいてクッベは単なる料理を超えた文化的・家族的な意味を持つ。日曜日の家族の昼食に母親が丁寧にクッベを成形する光景はレバノン人の原風景であり、各家庭がスパイスの配合とフィリングの構成に独自のレシピを持つ。1975年から1990年にかけての内戦期も、2006年のイスラエルとの武力衝突も、2019年の経済崩壊も、2020年のベイルート港大爆発も——レバノンが幾度となく危機に直面するたびに、クッベは人々が集まって食べることで絆を確かめる料理であり続けた。世界中のレバノン系移民コミュニティにおいても、クッベを作ることは故郷との結びつきを保つ最も重要な行為のひとつとして語られており、南米・西アフリカ・オーストラリアに渡ったレバノン移民が持ち込んだクッベは現地の食文化とも融合しながら世界に広がっている。

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