「パッタイのレシピの”タマリンドペースト”、レモン汁で代わりになる?」——東南アジア料理に挑戦するとき、多くの人がこの疑問に当たる。タマリンドはマメ科の植物の果実から作られる酸味食材で、レモンやライムとは異なる、深みのある複雑な酸みが特徴だ。代用はできるが、タマリンド固有の果実感とコクは他の酸味料では出しにくい。この記事では、タマリンドの基本から形態別の使い方、代用品、日本での入手方法まで、まとめて解説する。
タマリンドとは

タマリンド
タマリンドはマメ科の植物Tamarindus indicaの果実から作られる酸味食材だ。原産地はアフリカとされるが、インド・東南アジア・中南米に広く伝わり、各地の料理文化に深く根ざしている。タイ語では「マカーム(มะขาม)」、マレー語では「アッサム(Asam)」、ベトナム語では「マイ(Me)」と呼ばれ、地域によって名称は異なるが、酸味料としての役割は共通している。
果実は茶色いさや状で、中に黒褐色のねっとりとした果肉が入っている。この果肉に強い酸みと甘みが凝縮されており、乾燥・加工してペースト・ブロック・パウダーなどの形で流通する。酸み成分の主体は酒石酸・リンゴ酸・クエン酸で、レモンやライムの柑橘系とは異なる、深みとコクのある酸みが特徴だ。甘みも同時に持つため、酸だけでなく「甘酸っぱさ」が料理に複雑な奥行きを生む。
種類と特徴
市販のタマリンドは主に3つの形態で流通している。用途に合わせて選ぶとよい。
ペースト・コンセントレート
最も使いやすい形態で、計量してそのまま料理に加えられるのが最大のメリットだ。瓶詰めや袋入りで販売されており、濃縮タイプと薄めタイプがある。濃縮タイプは少量で強い酸みが出るため、最初は小さじ1/2程度から加えて味を見ながら調整するとよい。郷土レシピ.comのレシピで「タマリンドペースト」と表記しているのは基本的にこの形態を指している。
ブロック(固形・生タマリンド)
タマリンドの果肉を圧縮したブロック状のもので、アジア系食材店で見かけることが多い。使う際はひとかけらをちぎって温水に20〜30分浸け、よく揉んでから種と繊維を除いたペースト液を使う。手間はかかるが、ペーストより風味が鮮明でフルーティな酸みが出やすい。本格的な味を求める場合はブロックから作るとよい。
パウダー
乾燥させて粉末化したもので、長期保存に向く。スープや炒め物に直接加えられる手軽さがある反面、ペーストに比べて風味がやや落ちる。インド料理のチャツネやドレッシングに使うことが多い。
ブロックからペーストを作る方法
ブロック状タマリンド30gを温水100mlに20〜30分浸ける。指でよく揉んで果肉を溶かし出し、茶こしや目の細かいザルでこして種と繊維を取り除く。これで約大さじ2〜3程度のペーストが完成する。作り置きは冷蔵で1週間、冷凍で1ヶ月ほど保存できる。
代用品と代用方法
タマリンドが手に入らない場合の代用品はいくつかある。ただし、タマリンド固有の果実感と甘酸っぱいコクは他の酸味料では完全には再現できないことを前提として理解した上で使ってほしい。
レモン汁・ライム汁で代用する
最も手軽な代用品だが、風味の差が大きい。柑橘の酸みはタマリンドより鋭く、果実感やコクが出ない。代用する場合はタマリンドペースト大さじ1に対してレモン汁またはライム汁大さじ1を目安に、少量の砂糖(小さじ1/4程度)を加えて甘みを補うとタマリンドの甘酸っぱさに近づく。パッタイやソムタムなど、タマリンドが味の骨格を担う料理では差が出やすいが、緊急時の代替としては有効だ。
酢で代用する
米酢やりんご酢は柑橘よりコクのある酸みを持つため、タマリンドの代用としてやや近い方向性が出る。タマリンドペースト大さじ1に対して米酢小さじ2+砂糖小さじ1/2を目安に使う。ただし酢の独特の香りが料理に移るため、使いすぎに注意が必要だ。スープや煮込みより炒め物やソース系の料理での代用に向いている。
梅干し・プルーンで代用する
意外な代用品だが、梅干しやプルーンはタマリンドと同様に果実由来の複雑な酸みと甘みを持つ。梅干しの場合は塩分が高いため、使用量に合わせて他の調味料の塩分を調整する必要がある。スープや煮込みに少量加えてタマリンドの代わりに酸みとコクを補う用途に向く。プルーンはペースト状にして使うと、タマリンドに最も近い質感になる。
日本での入手方法
タマリンドは他の東南アジア食材と比べると流通量がやや少ないが、複数のルートで入手できる。
タイ・マレーシア・インド系の食材専門店が最も確実な入手先だ。東京の新大久保・上野アメ横・池袋のアジア系スーパーにはペーストまたはブロックが置いてあることが多い。インド食材店では瓶詰めのペーストとブロック両方を扱っていることがある。
カルディコーヒーファームではタマリンドペーストを取り扱う店舗がある。在庫は店舗によって異なるため、事前に確認するか公式オンラインショップで購入するのが確実だ。
Amazonや楽天などのオンラインショップでは、ペースト・ブロック・パウダーいずれの形態も安定して購入できる。「タマリンド」「タマリンドペースト」「tamarind paste」などで検索すると見つかる。初めて使う場合はペースト(コンセントレート)の小瓶から試すのがおすすめだ。
料理別の使い方
炒め物・麺料理に使う
タマリンドが最もよく知られる使い方のひとつが、炒め物や麺料理への酸み付けだ。高温の鍋に加えると水分が飛んで酸みが凝縮し、料理全体にタマリンド特有の甘酸っぱいコクがまとわりつく。

サテー
タイ料理のサテーのピーナッツソースではタマリンドが全体の酸みを担い、ピーナッツの濃厚さを引き締める。加熱する炒め物にペーストを加える場合は、他の調味料より先に入れてしっかり火を通すと酸みが料理全体に均一に馴染む。
スープ・煮込みに使う
タマリンドはスープや煮込みの酸み付けとしても重要な役割を果たす。柑橘系の酸みが加熱で飛びやすいのに対し、タマリンドの酸みは煮込んでも安定して残るため、長時間の煮込み料理に特に向く。

カインチュア
アッサムペダスはマレー語で「酸っぱくて辛い」を意味し、タマリンドの酸みが料理のアイデンティティそのものだ。魚の煮込みにタマリンドの甘酸っぱさが絡まり、レモングラスや唐辛子の香りと重なって独特の複雑さが生まれる。カンボジアのサムローマチューやトレイチャアムプルー、ベトナムのカインチュア・ブンリュウでも、タマリンドがスープに落ち着いた酸みとコクを与えている。
ソース・ディップに使う
タマリンドはそのまま、あるいは他の調味料と合わせてソースやディップの酸み・コク付けにも広く使われる。

ロジャック
ガドガドのピーナッツソースではタマリンドがソース全体の酸みを担い、ナッツの重さを和らげる。ロジャックのエビペーストソースにもタマリンドが加わり、甘・辛・酸が一体になった複雑な風味を作り出す。ソースに使う場合は他の調味料と混ぜてから一度加熱して全体を馴染ませると、タマリンドの酸みがソース全体に均一に広がる。
保存方法
ペースト・コンセントレートタイプは開封後、冷蔵庫で保存し3〜6ヶ月以内に使い切るのが目安だ。酸性が強いため腐りにくいが、風味は時間とともに落ちる。取り出すスプーンは必ず清潔で乾いたものを使い、使い終わったらすぐに密閉する。
ブロックタイプは密閉容器または密閉袋に入れて冷暗所で保存する。適切に保存すれば数ヶ月〜1年程度使える。湿気を吸うと表面がべたついてくるため、梅雨時や夏場は冷蔵保存が安心だ。ブロックから作ったペースト液は冷蔵で1週間、冷凍で1ヶ月を目安に使い切る。製氷皿で小分け冷凍しておくと、必要な分だけ取り出して使えて利便性が高い。
パウダータイプは直射日光を避けた冷暗所で保存し、開封後は1年以内に使い切るのが目安だ。
タマリンドを使ったレシピ一覧
マレーシア・インドネシア・カンボジア・ベトナムと、東南アジア各国の料理にまたがって酸味の役割を担っている。
マレーシア・インドネシア料理
アッサムペダス
- アッサムペダス|「酸っぱくて辛い」の名の通り、タマリンドが酸みの核を担う魚の煮込み
- サテー|串焼き肉に添えるピーナッツソースの酸みとコクをタマリンドが担う
- ロジャック|フルーツと野菜のサラダに合わせるエビペーストソースにタマリンドが加わる
- ガドガド|インドネシアの野菜サラダのピーナッツソースにタマリンドで酸みを加える
カンボジア料理

サムローマチュー
- サムローマチュー|タマリンドが主役の酸味を担うカンボジアの酸辣スープ
- トレイチャアムプルー|魚の蒸し料理にタマリンドの甘酸っぱさが絡む
ベトナム料理

ブンリュウ