「グリーンカレーのレシピにある”ココナッツミルク”は牛乳で代用できる?缶を開けたら余った分はどうすれば?」——東南アジア料理に初めて挑戦するとき、多くの人がこの疑問に当たる。ココナッツミルクは牛乳とは製法も風味もまったく異なる食材で、カレーのコク・スープの甘み・デザートのまろやかさを一手に担う。正しく扱えば、ひとつの食材で料理の世界観が一気に変わる。この記事では、ココナッツミルクの基本から代用品の使い方、開封後の保存方法まで、まとめて解説する。
ココナッツミルクとは

ココナッツミルクはヤシ科の植物であるココナッツの胚乳(白い果肉)をすりおろし、水を加えて絞った液体だ。乳白色でとろりとした質感を持ち、ほのかな甘みとヤシ特有の芳香が特徴。タイ語では「カティ(กะทิ)」、マレー語では「サンタン(Santan)」と呼ばれ、東南アジア全域の料理において欠かせない基本食材として位置づけられている。
市販品はほとんどが缶詰またはパック入りで、スーパーやカルディで手軽に入手できる。脂肪分は製品によって異なるが、一般的なものは脂肪分17〜20%前後。植物性の乳脂肪が多く含まれており、加熱してもたんぱく質が凝固しないため、長時間煮込んでも安定して使えるのが特徴だ。
ココナッツウォーターとの違い
ココナッツウォーターはヤシの実の中に溜まった透明な液体で、果肉から絞るココナッツミルクとはまったくの別物だ。料理での用途も風味も異なるため、混同しないよう注意してほしい。
ココナッツクリームとの違い
スーパーやオンラインショップでは「ココナッツミルク」と「ココナッツクリーム」が並んで販売されていることがある。両者の違いは脂肪分の濃度だ。
ココナッツクリームはココナッツの果肉を少量の水で絞ったもので、脂肪分が高く濃厚。ミルクはそれをさらに水で希釈した状態にあたる。一般的にクリームの脂肪分は25〜35%程度で、ミルクの倍近い濃度になる。開封した缶を冷蔵庫に入れると上部に白く固まった層(クリーム層)が分離することがあるが、これはミルクの中でも脂肪分が自然に分離したもので品質には問題ない。
料理での使い分けとしては、スープやカレーのベースにはミルク、より濃厚なコクを出したい仕上げやデザートにはクリームを選ぶのが基本だ。レシピに指定がない場合はミルクを選んでおけばほぼ問題ない。
代用品と代用方法
ココナッツミルクが手に入らない場合の代用品はいくつかある。ただし、ヤシ特有の芳香と植物性のコクは他の食材では完全には再現できないことを前提として理解した上で使ってほしい。
牛乳で代用する
最も手軽な代用品が牛乳だが、風味の差が最も大きい組み合わせでもある。牛乳はさっぱりしており、ヤシの香りとコクがまったく出ない。カレーやスープに使うと全体的に軽い仕上がりになる。代用する場合は同量で置き換え、仕上げにバターをひとかけ加えるとコクをある程度補える。あくまで緊急時の代替と考えるのがよい。
豆乳で代用する
植物性という点ではココナッツミルクに近く、乳アレルギーがある場合の代替として有効だ。無調整豆乳を同量で置き換えて使う。ただし豆乳は加熱すると分離しやすいため、煮立てすぎず弱火でゆっくり加熱するのがポイントだ。豆独特の風味がヤシの香りとは異なるため、料理の印象は変わる。
生クリームで代用する
脂肪分という点では最もミルクに近い代用品だ。ただし動物性の乳脂肪のため、ヤシの香りが出ない。カレーや煮込みに使う場合は生クリーム1に対して水1の割合で薄めてから使うとよい。そのまま使うと重すぎる仕上がりになりやすい。
ココナッツミルクパウダーを使う
ココナッツミルクを粉末化したもので、水に溶かすと液体のミルクとほぼ同等に使える。最も推奨できる代替手段で、ヤシの香りもコクもしっかり再現できる。カルディやオンラインショップで入手でき、長期保存できるため常備しておくと便利だ。使う分だけ溶かして使えるため、缶詰のように余りが出る心配もない。
日本での入手方法
ココナッツミルクは他の東南アジア食材と比較して、日本での入手が最もしやすい食材のひとつだ。
スーパーマーケットでは、エスニック食材コーナーや輸入食品棚に缶詰のココナッツミルクが置いてあることが多い。タイのメーカー「チャオコー」やマレーシアの「カラ」などが一般的に流通している。
カルディコーヒーファームでは缶詰・パック・パウダーと複数の形態を扱っており、品揃えが充実している。ブランドの選択肢も多いため、好みの製品を探しやすい。
業務スーパーでは大容量の缶詰が安価で手に入る。よく使う場合はまとめ買いするとコストパフォーマンスがよい。
Amazonや楽天などのオンラインショップでは缶詰・パック・パウダーいずれも安定して購入できる。「ココナッツミルク」「coconut milk」で検索するとすぐに見つかる。
料理別の使い方
カレー・煮込みに使う
ココナッツミルクの最も代表的な使い方がカレーや煮込みへの投入だ。カレーペーストを油で炒めてから加えることで、スパイスの香りがミルクに溶け込み、辛みが和らいで全体がまとまる。加える量はレシピによって異なるが、スープ状のカレーには多め、ドライカレーや煮詰めるタイプには少なめが基本だ。

マッサマンカレー・パネーンカレーではスパイスの複雑な香りをミルクのまろやかさが包み込み、料理に独特の奥行きを与える。アヤムレンダンでは大量のミルクを長時間煮詰めて水分を飛ばすことで、濃厚なスパイスペーストを肉にまとわせる。サムローカリーやアモックでも、ミルクがクルーンペーストの辛みを和らげてカンボジア料理らしいまろやかな味わいをつくる。
スープ・麺のスープに使う
ブロスやスープベースにコクを加える目的でも広く使われる。鶏ガラや豚骨のスープだけでは出せない植物性の甘みとまろやかさが、麺のスープ全体を底上げする。

ノムバンチョック
トムカーガイはその名を「ガランガルを入れた鶏のヤシ乳スープ」と訳せるほど、ミルクがスープの核を担う料理だ。ガランガルとレモングラスが香りを作り、ミルクがそれを包んで全体をひとつにまとめる。ラクサ・カリーミー・カオソーイ・カオプン・ノムバンチョックなど、東南アジア各国の麺料理のスープにもミルクが入り、乳白色の濃厚なブロスを作り上げる。
ご飯・蒸し料理に使う
水の代わりにミルクで米を炊いたり、蒸しカレーのペーストに混ぜ込んだりする使い方もある。炊飯に使うと米ひと粒ひと粒がヤシの甘みをまとい、そのままでもご馳走になる。

ナシレマ
ナシレマはマレーシアの国民食で、ミルクと香草で炊いたご飯がすべての出発点だ。ミルクの脂肪分が米に染み込み、ふっくらとリッチな仕上がりになる。ホーモックでは魚のすり身とミルクを混ぜてバナナの葉で蒸すことで、とろりとしたカスタード状のカレー蒸し料理が完成する。バインセオではクレープ生地にミルクを加えることで、サクサクとした独特の食感が生まれる。
スイーツ・デザートに使う
ミルクの甘みとコクはデザートにも欠かせない。シロップや寒天と合わせてかけたり、もち米に染み込ませたりと使い方は幅広い。

カオニャオマムアン
カオニャオマムアン(マンゴーともち米)では、甘く煮詰めたミルクをもち米に吸わせることでリッチな甘みとコクが生まれる。チェンドル・チェー・サテーのピーナッツソースにも、ミルクがなめらかさと甘みを加える役割を担っている。
開封後の保存方法
缶詰のコナッツミルクは開封後、缶のまま冷蔵保存してはいけない。缶の内側が酸化して金属臭が移るためだ。使い切れなかった分は必ず清潔な密閉容器やジッパー袋に移してから冷蔵庫で保存し、2〜3日以内に使い切るのが基本だ。
すぐに使い切れない場合は冷凍保存が向いている。製氷皿に流し込んで凍らせてからジッパー袋に移すと、1回分ずつ小分けにして取り出せて便利だ。冷凍で1ヶ月程度保存できる。解凍後は油分と水分が分離することがあるが、よく混ぜると元に戻る。カレーやスープに加える場合は、凍ったまま鍋に入れてしまっても問題ない。
余りが少量の場合は、翌朝のスープやカレーのベースに加えたり、ご飯を炊く水に混ぜたりと、少量でも活用できる使い方を探すとよい。パウダータイプを選べばそもそも余りが出ないため、使用頻度が低い場合はパウダーを常備しておくのも賢い選択だ。
ココナッツミルクを使ったレシピ一覧
郷土レシピ.comに掲載しているココナッツミルクを使う料理の一覧。タイ・マレーシア・カンボジア・ベトナム・ラオスと、東南アジア全域の主要料理に幅広く登場する。
タイ料理

カオソーイ
- トムカーガイ|料理名に「ココナッツミルク」の意が入るほど、ミルクがスープの核を担う
- マッサマンカレー|ペルシャ由来の複雑なスパイスをミルクが包み込む濃厚カレー
- パネーンカレー|煮詰めて濃厚に仕上げるドライカレー。ミルクをじっくり炒め煮にする
- カオソーイ|北タイのカレーラーメン。ミルク入りの濃厚なカレースープが特徴
- ホーモック|魚とミルクを混ぜて蒸すタイ式カスタードカレー
- カオニャオマムアン|甘く煮たミルクをもち米に吸わせるタイのデザート
マレーシア料理

チェンドル
- ラクサ|ミルクをベースにした乳白色の濃厚なカレースープ麺
- カリーミー|ペナン式カレー麺のスープにミルクのコクが溶け込む
- アヤムレンダン|ミルクを長時間煮詰めて水分を飛ばし、濃厚なペーストを鶏肉にまとわせる
- ナシレマ|ミルクと香草で炊いたご飯がすべての起点。マレーシアの国民食
- チェンドル|ミルクとパームシュガーシロップを合わせたかき氷デザート
- サテー|ピーナッツソースにミルクを加えてなめらかに仕上げる
- ナシカンダー|複数のカレーのベースにミルクが使われるペナン発祥の食堂料理
- プトゥマヤム|添えるシロップにミルクが加わり風味を豊かにする
カンボジア料理

プラホック
- アモック|クルーンペーストとミルクを合わせてバナナの葉で蒸すカンボジアを代表する料理
- サムローカリー|カンボジア式カレーのスープにミルクのまろやかさが加わる
- ノムバンチョック|緑のカレーソースにミルクが溶け込む米麺料理
- プラホック|発酵魚ペーストのディップにミルクを加えてまろやかに仕上げる
ベトナム料理

バインセオ
ラオス料理

カオプン
- カオプン|ラオス式米麺のカレースープにミルクが加わりコクのある一杯になる